今回は、映画記事です。
今月GWで小倉に行ってきたという記事をアップしましたが、そこでも書いたように、かの地で銀河鉄道999の劇場版2作を観てきました。そのなかから、劇場版第二作にあたる『さよなら銀河鉄道999 ―アンドロメダ終着駅―』について書こうと思います。
この作品は、999シリーズの総決算にあたる完結編です。
上の画像は映画のパンフレット(を復刻したもの)ですが、このパンフに寄せた文章で松本零士先生はこう語っています。
今回の「999」は、少年の自立編ともいうべき形で進行し、今までナゾになっていたすべての部分を明らかにします。/メインテーマとしては、「999」の物語全体を貫いている「限りある命の讃歌」です。
その言葉のとおり、まさに完結編にふさわしい壮大な物語となっています。
物語は、機械化人の侵攻を受ける地球からはじまります。
街は壊滅し、生き残ったわずかな人類が抵抗を続けている地球……鉄郎は、そこから999に乗って新たな旅に出るのです。
目的地は、不明。
途中ヘビーメルダーの衛星ラーメタルでメーテルと合流しますが、そのメーテルも当初は何を考えているのかよくわからない状態です。
そして、旅の途上では幽霊列車や黒騎士ファウストといった謎めいたキャラクターが登場し、謎が深まっていきます。
最終的にアンドロメダにいたってそれらの謎が解き明かされていくわけですが、前半に張り巡らされた伏線を回収しつつ物語を大団円に導いていく手つきはなかなか見事です。
ここで明かされる真相に深いテーマが込められています。「少年の自立編」としての、そして「限りある命の讃歌」としてのテーマが……
しかし、残念ながらネタバレを避けるためにその詳細は伏せなければなりません。999には、ネタバレを避けるべき展開が用意されているのです。
なにげに重要なのが、黒騎士。
トップ画に掲げたポスターの左端にいる人物です。
声を担当するのは江守徹。江守徹にとって、これがアニメ声優初挑戦ということです。
原作にもそういう名で呼ばれる人物は登場しますが……この映画ではまったく違うキャラクターに。機械化帝国の女帝プロメシュームに仕える重臣ですが、作品のテーマ全体にかかわる重要な役割を担っています。
前作に比して、バトルシーンも多く、そこではキャプテン・ハーロックとクイーン・エメラルダスも登場。
999には基本的に戦闘能力がないので戦いということになったら彼らの力を借りるしかないわけですが……ハーロックは、単に戦闘要員という以上に重要な役割を果たしもします。
ちなみに、本作に登場するアルカディア号は、3番艦。
漫画原作ともTVアニメ版とも違うデザインです。
北九州漫画ミュージアムにあるその壁画を再掲しておきましょう。
乗員は、台羽以外はちゃんと主要メンバーがそろっていて、有紀螢もいます。
ついでなので、有紀螢フィギュアの画像も再掲。
ただし、アルカディア号の乗員たちは999の世界においてはあくまで陪臣的存在であり、この映画で有紀螢のせりふはたった一回しかありません。が、その一回のためにTVアニメ版の声優(川島千代子)をキャスティングしているのがうれしいところ。
ところで、最近、銀河鉄道999とコラボしたビールとハイボールというのが出てるんですが……
999といっておきながら、缶にデザインされているのは、本来ゲスト出演であるハーロックとその友トチロー。いかにハーロックの存在感が大きいかということなのです。
この映画でもう一つ特筆すべきは、椋尾篁美術監督。
昭和の日本アニメを支えた背景画家の一人で、ハーロックのTVアニメ版にも関わっていました。
りん・たろう監督も光の表現には定評があるようですが、椋尾篁ひきいるムクオスタジオの美術もまた、その光の表現を助けているでしょう。冒頭の荒廃した地球や、エンディングでの駅の風景などは、圧巻です。
かように、『さよなら銀河鉄道999』は、日本アニメ史上に残る傑作なのです。
こうして2020年代になってリマスター版が作られているというのは、その証左でしょう。
松本零士作品は海外での人気も高く、かのダフトパンクが松本先生にアルバムジャケットを依頼したというのもその一つの表れです。
こうした名作群がリマスターされて日本アニメを海外にアピールしていこうという考えがあり、今回の『999』はその試金石というような話も仄聞しました。
これは、実に頼もしい話です。
ただ、そうして“過去の名作”をアピールするということは、いまの日本アニメ界はかつてのエネルギーを失ってしまっているのかというふうにも感じられる部分はあるんですが……