ロック探偵のMY GENERATION

ミステリー作家(?)が、作品の内容や活動を紹介。
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『さよなら銀河鉄道999 ―アンドロメダ終着駅―』

2022-05-15 20:11:24 | 映画


今回は、映画記事です。

今月GWで小倉に行ってきたという記事をアップしましたが、そこでも書いたように、かの地で銀河鉄道999の劇場版2作を観てきました。そのなかから、劇場版第二作にあたる『さよなら銀河鉄道999 ―アンドロメダ終着駅―』について書こうと思います。



この作品は、999シリーズの総決算にあたる完結編です。
上の画像は映画のパンフレット(を復刻したもの)ですが、このパンフに寄せた文章で松本零士先生はこう語っています。

 今回の「999」は、少年の自立編ともいうべき形で進行し、今までナゾになっていたすべての部分を明らかにします。/メインテーマとしては、「999」の物語全体を貫いている「限りある命の讃歌」です。

その言葉のとおり、まさに完結編にふさわしい壮大な物語となっています。


物語は、機械化人の侵攻を受ける地球からはじまります。

街は壊滅し、生き残ったわずかな人類が抵抗を続けている地球……鉄郎は、そこから999に乗って新たな旅に出るのです。

目的地は、不明。

途中ヘビーメルダーの衛星ラーメタルでメーテルと合流しますが、そのメーテルも当初は何を考えているのかよくわからない状態です。
そして、旅の途上では幽霊列車や黒騎士ファウストといった謎めいたキャラクターが登場し、謎が深まっていきます。
最終的にアンドロメダにいたってそれらの謎が解き明かされていくわけですが、前半に張り巡らされた伏線を回収しつつ物語を大団円に導いていく手つきはなかなか見事です。

ここで明かされる真相に深いテーマが込められています。「少年の自立編」としての、そして「限りある命の讃歌」としてのテーマが……
しかし、残念ながらネタバレを避けるためにその詳細は伏せなければなりません。999には、ネタバレを避けるべき展開が用意されているのです。

なにげに重要なのが、黒騎士。
トップ画に掲げたポスターの左端にいる人物です。
声を担当するのは江守徹。江守徹にとって、これがアニメ声優初挑戦ということです。
原作にもそういう名で呼ばれる人物は登場しますが……この映画ではまったく違うキャラクターに。機械化帝国の女帝プロメシュームに仕える重臣ですが、作品のテーマ全体にかかわる重要な役割を担っています。

前作に比して、バトルシーンも多く、そこではキャプテン・ハーロックとクイーン・エメラルダスも登場。
999には基本的に戦闘能力がないので戦いということになったら彼らの力を借りるしかないわけですが……ハーロックは、単に戦闘要員という以上に重要な役割を果たしもします。

ちなみに、本作に登場するアルカディア号は、3番艦。
漫画原作ともTVアニメ版とも違うデザインです。
北九州漫画ミュージアムにあるその壁画を再掲しておきましょう。



乗員は、台羽以外はちゃんと主要メンバーがそろっていて、有紀螢もいます。
ついでなので、有紀螢フィギュアの画像も再掲。



ただし、アルカディア号の乗員たちは999の世界においてはあくまで陪臣的存在であり、この映画で有紀螢のせりふはたった一回しかありません。が、その一回のためにTVアニメ版の声優(川島千代子)をキャスティングしているのがうれしいところ。


ところで、最近、銀河鉄道999とコラボしたビールとハイボールというのが出てるんですが……





999といっておきながら、缶にデザインされているのは、本来ゲスト出演であるハーロックとその友トチロー。いかにハーロックの存在感が大きいかということなのです。

この映画でもう一つ特筆すべきは、椋尾篁美術監督。
昭和の日本アニメを支えた背景画家の一人で、ハーロックのTVアニメ版にも関わっていました。
りん・たろう監督も光の表現には定評があるようですが、椋尾篁ひきいるムクオスタジオの美術もまた、その光の表現を助けているでしょう。冒頭の荒廃した地球や、エンディングでの駅の風景などは、圧巻です。


かように、『さよなら銀河鉄道999』は、日本アニメ史上に残る傑作なのです。
こうして2020年代になってリマスター版が作られているというのは、その証左でしょう。
松本零士作品は海外での人気も高く、かのダフトパンクが松本先生にアルバムジャケットを依頼したというのもその一つの表れです。
こうした名作群がリマスターされて日本アニメを海外にアピールしていこうという考えがあり、今回の『999』はその試金石というような話も仄聞しました。
これは、実に頼もしい話です。
ただ、そうして“過去の名作”をアピールするということは、いまの日本アニメ界はかつてのエネルギーを失ってしまっているのかというふうにも感じられる部分はあるんですが……



映画『シン・ウルトラマン』本日より公開

2022-05-13 16:11:14 | 日記


映画『シン・ウルトラマン』が、いよいよ本日から公開ということになりました。
だいぶ時間がかかりましたが……とにかく公開にこぎつけたということで何よりです。

映画『シン・ウルトラマン』予告【2022年5月13日(金)公開】

13日の金曜日というのは、偶然なのか、それとも狙ったものなのか……
私の場合すぐに観に行くのは難しいですが、機会があれば劇場で観ようと思っています。


ウルトラマンといえば、先日NHKで『ふたりのウルトラマン』というドラマが放送されてました。

初期ウルトラシリーズを支えた脚本家である金城哲夫と上原正三に焦点をあて、関係者へのインタビューなども交えた半ドキュメント仕立ての物語です。ドラマパートには円谷親子や実相寺昭雄といった人たちも出てきて、非常に興味深い作品でした。

金城哲夫が沖縄出身で沖縄にちなんだ怪獣名がいくつかあることは知っていましたが、上原正三も沖縄出身だということは恥ずかしながら知りませんでした。
このドラマによれば、ウルトラマンがやってくる“光の国”には、ニライカナイのイメージがあるのだとか……そうなってくると、私が思っていたよりもウルトラマンは沖縄と関係があるのかもしれません。

鬼才として知られ、若くして世を去ったことで伝説的な存在となっている金城哲夫に比べると、あるいは、上原正三の知名度はそれほど高くないかもしれません。
しかし、私にとっては非常になじみの深い脚本家です。
この人は、特撮だけでなくアニメの脚本でもよく知られており……私は最近アマプラで昔のアニメを見たりするんですが、1970年代ぐらいのアニメを観ているとスタッフロールに「脚本 上原正三」とあるのをときおり目にするのです。

それらの中でも忘れてならないのが、キャプテン・ハーロック。



TVアニメ版で脚本を手掛けたのが、上原正三です。ドラマ『ふたりのウルトラマン』でも、ハーロックの脚本がちらっと出てきていました。
先日北九州漫画ミュージアムのことを書きましたが……同ミュージアムにその脚本も展示されていました。



これは第一話だったでしょうか。
上原正三といえば深いテーマ性ということがいわれますが、ここに書かれている内容からもそれはうかがえるでしょう。ハーロックという作品のもつテーマが上原正三の脚本によってこそ描き出されるのです。その最終話において太宰治『右大臣実朝』の一節が引用されていることは以前このブログで書きました。「アカルサハ、ホロビノ姿デアラウカ。人モ家モ、暗イウチハマダ滅亡セヌ。」……まさに、“深いテーマ性”ゆえにこそこういう引用ができるわけでしょう。
米軍占領下の沖縄からパスポートを持って上京してきた上原正三。特撮を「子供だまし」とあざ笑う業界人に「子どもはだませないよ」と言い返す上原正三……彼のスピリッツは、たしかにウルトラマンという作品の土台を支えていたのです。
そのテーマ性が、『シン・ウルトラマン』においてどう扱われるのか、しかと見届けようと思います。

さて、最後に……ウルトラマン記事ということで、これまで何度か登場してきたウルトラマン3DCGフィギュアに登場してもらいましょう。
北九州記事ともからんでいたので、小倉城をバックに。



シン・ウルトラマンは成田亨のオリジナルデザインにしたがってカラータイマーがないということなので、それにあわせてカラータイマーなしバージョンにしてます。




ロシア戦勝記念日

2022-05-10 21:26:18 | 時事



昨日、ロシアの戦勝記念日というのがありました。

この日に合わせてなにか動きがあるんじゃないかと注目されていましたが……特に目立った動きもなかったようです。
これまでの「軍事作戦」という言い方ではなく、はっきりと戦争を宣言するのでは――ともいわれていましたが、それもありませんでした。
これに関しては、報道などを見ていると、以下の二点が理由としてありそうです。
 ・戦争を宣言すれば、西側諸国の本格的な介入を招き、状況はさらに悪化する。
 ・戦争を宣言して国内に総動員体制をとれば、ウクライナでの軍事行動がうまくいっていないと認めることになり、国民の支持を失うことにつながる。また、戦時体制で国民に負担を求めるということも同様。
すなわち、国内的にも対外的にも「戦争宣言」は難しい、ということです。
さりとて、なんの成果もなしに撤退ということになれば、それはそれで国民の支持を失うことになるかもしれません。プーチン大統領としては、進むも地獄、引くも地獄といったところでしょうか。

ともかくも、戦争宣言はありませんでした。
演説において、プーチン大統領が、対ウクライナ戦争の意義について語ったというだけのことで……
呆気にとられたのは、その演説のなかでプーチン大統領が今回の侵攻を「反撃」と表現したところです。
あの一方的な武力侵攻をさえ「反撃」といってはばからないのが、国家主義という怪物のなせるわざということでしょう。“先制的な反撃”なる禅問答めいたフレーズもあいまって、戦争というものがいかに狂気じみているかをあらためて実感させられました。

さて、そのウクライナ戦争の帰趨ですが……これはやはり、ロシア側が手をひくというかたちでしか終わらなさそうに見えます。少なくとも、ロシアが当初の目標を達成するというかたちで終結する可能性はほぼゼロでしょう。ロシア側が引かないかぎり、戦争はいたずらに長期化していくばかりだと思われます。いい加減、このあたりでプーチン大統領も目を覚ましてくれないものでしょうか……








小倉にいってきました(2)

2022-05-08 18:33:02 | 旅行


先日の記事の続きです。

私が小倉を訪れた真の目的とは……これです。





今この映画が、デジタル4Kかつ、ドルビーアトモスでリマスターされていて、全国で上映されているのです。

4Kリマスター版の上映というのがちょっと前にもあったんですが、そちらはタイミングがあわず行くことができませんでした。
しかし今回は、ドルビーアトモスという音響もくわえて上映される……GWというタイミングで行くこともできる、となったわけです。

ただし、ドルビーアトモスという設備を備えた映画館はそれほど多くなく、上映できる場所はかぎられています。そのなかで、自宅からもっとも近いのが、北九州だったのです。

劇場版2作、『銀河鉄道999』と、『さよなら銀河鉄道999』の両方を観てきました。
北九ぐらいなら日帰りでも行けるのにそうしなかったのは、そのため。上映スケジュールとして一日のうちにはどちらか一方しかやっていないために、両方観るためには最低二日が必要でした。なら、宿泊して他にもあれこれ見てくればいいんじゃないか……と考えていたら、二泊三日になったわけです。

まあ、どちらも過去に観たことはあるので、話の筋はわかってるんですが……それでも、こうして観に行く価値は十分にある作品なのです。

一応簡単に説明しておくと、『銀河鉄道999』は、もとのストーリーを編集しなおして一本の映画にしたもの。『さよなら銀河鉄道999』は、その後日談となっています。どちらにも、キャプテン・ハーロックとクイーン・エメラルダスが登場。ハーロックファンとしては燃えるポイントです。

その映画の内容に関しては、映画記事として別に書くことにして……

今回の小倉行きでは、999やハーロックにまつわるものも見てきたので、この記事ではそれらを紹介しようと思います。


小倉駅内には、車掌さんがいます。



なんでそんなものがあるのかというと……北九州は、999の原作者である松本零士先生と深い関りがあるからです。

松本先生は、出身は久留米ですが、漫画家として上京するまでの少年時代を北九州で過ごしています。その縁で、小倉駅周辺には松本零士先生に関するいろんなものがあるのです。

たとえば、駅前にはキャプテン・ハーロックの銅像。
しびれます。


メーテルと鉄郎もいます。



小倉駅はモノレールも乗り入れていますが、このモノレールには999号というラッピング車両があります。







これだけ、小倉と松本零士先生には深いつながりがあるのです。
小倉で松本といったら清張ばかりではありません。いや……むしろ、松本零士先生のほうがより推されているといってもいいでしょう。

その推しっぷりがよくわかるのが……北九州漫画ミュージアム。

ここも松本零士の世界が前面に押し出されています。

入場者を出迎えるのは、ハーロックとアルカディア号三番艦……と、トリさん。



そしてメーテル。



『宇宙戦艦ヤマト』に登場する森雪の大型フィギュアもありましたが、そちらは撮影不可でした。

館内で上映されている999のショートアニメがあったんですが、こちらも豪華です。
北九州の歴史を紹介するという内容なんですが、主要キャラにはちゃんとアニメ版と同じ声優をあてています。つまり、野沢雅子さん、池田昌子さん、肝付兼太さんをこのアニメのためにキャスティングしているわけです。相当な力の入れようじゃないでしょうか。

最後に、ミュージアムの出口に設置されていたパネルの画像を紹介しておきましょう。









小倉にいってきました。

2022-05-07 21:06:46 | 旅行



先日、ゴールデンウィークということで北九州の小倉に行ってきました。
県内なので、旅行というほどのものでもありませんが……三日ほどかけて、あちこち見てきたので、今回はその画像を紹介しようと思います。


まずは、小倉のシンボルともいえる小倉城。
細川氏が小倉を拠点にしていた頃に築いた城です。



ただ、幕末の第二次長州征伐における戦闘で壊滅的なダメージを受けてしまいました(天守はそれよりも前に焼失)。この天守は、昭和になって復元されたもの。
夜は、このようにライトアップされています。




小倉といえば……当地ゆかりの作家として松本清張がいます。

西小倉駅の付近に清張通りという通りがあり、そこに松本清張記念館が建っています。ここも訪問してみました。



ここの展示であらためて清張の事績を眺めてみると、その幅広さに驚かされます。私としてはミステリー作家という部分に目がいきがちなんですが、ミステリーではない作品も多くあり、その一環として時代小説を書くだけでなく、本格的に歴史研究にとりくみ、しかもそれが古代から近現代史にまでわたるという……

そして、その清張もリスペクトしていた森鷗外。
小倉にゆかりがある、もう一人の巨人です。清張が芥川賞を受賞した『ある「小倉日記」伝』の小倉日記というのが鷗外の作品。ほかにも、清張は鷗外作品を作中に引用したり、鷗外の評伝を書いたりもしていて……深い関心を寄せていたようなのです。

鷗外は左遷されて小倉に住んでいた時期があり、小倉駅近辺には関連施設などが点在しています。
最近私のなかでは森鴎外の株が結構上がっていたということもあり、そのいくつかを見てきました。


小倉駅前には、その旧居を示す碑が。



市内には、“鷗外通り”もあります。そして、鷗外橋なる橋も。
下は、その画像です。



橋のたもとには、鷗外の文学碑がありました。



鷗外の旧居を再現したものも。



当時の様子をほぼそのまま復元しているということです。





邸内には、ミニチュアも展示されています。



そして、安国寺。
小倉時代を描いた短編「二人の友」で、ここの住職との交流が描かれていました。



禅宗の寺院ですが、鷗外は住職から唯識を学んでいたといいます。仏教にもさまざまな思想がある中から唯識を学んでいたというのが、いかにも鷗外らしいんじゃないでしょうか。

さて……

以上書いてきたいずれも意義深いものではありましたが……実は、私が今回北九州に行ったのは、これらのためではありません。
本来の目的は、別にありました。
それについては、また別の記事として書こうと思います。
というわけで、今回はこのあたりで。