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キング・クリムゾン「太陽と戦慄」

2023-05-28 16:59:42 | 音楽批評

今回は、音楽記事です。

最近の音楽記事では、プログレ系のバンドが続いてきました。

そして、ちょっと前の記事ではロバート・フリップが登場……ということで、今回のテーマはキング・クリムゾンです。


キング・クリムゾンは、その名のとおり、プログレのキングと呼ぶにふさわしいバンドでしょう。
そのキャリアは長く、メンバーの出入りはかなり激しく、音楽性もさまざまに変化してきました。

名盤といわれる作品はいくつもありますが……

最近の音楽記事では「50周年を迎える名盤」という流れもあったので、その流れに乗って、ここでとりあげるのは1973年リリースの『太陽と戦慄』です。

 

代表作の一つに数えてよいでしょう。
以下に、タイトル曲の動画を貼っておきます。Youtubeに飛ばなければ見れませんが。

King Crimson - Larks' Tongues in Aspic (1972)

そもそもの話として、プログレとは何か。
まあ、音楽のジャンル分けはなんでもそうですが、そんなに明確な基準があるわけでもありません。
クラシックの影響であるとか、実験性、文学的で難解な歌詞、音でいえば不協和な音、リズムでいえば変拍子をよく使うとか……まあ、そんなところでしょう。
そして、キング・クリムゾンはそれらの要素を最高度のレベルで合わせ持っているのです。

その中心人物は、ロバート・フリップ。
フリップの存在によって、キング・クリムゾンはキング・クリムゾンであり続け、プログレの世界に王者として君臨してきたのです。
その王者の近影がこちらになります。

Toyah & Robert’s Sunday Lunch - Can Your Pu$$y Do The the Dog?

以前ちょっと紹介した妻トーヤとの夫婦漫才動画です。
まあ、せっかくキングクリムゾンの話になったので、このシリーズ動画をいくつか紹介しようと思います。
(※ご存知でない方は閲覧注意です。こんなもの知らずにいたほうがよかった……と後悔する可能性は低くありません



まずは、ソフトなほうから……最新の動画として、メタリカのEnter Sandman をアカペラでカバーするというのをやってました。

Toyah & Robert's Rock Party - Enter Sandman A Cappella


前に紹介した際には、笑えるもの、過激なものがあると書きましたが、笑える部門でいうとこれが最優秀賞でしょうか。
KISSの I Was Made for Loving You を、You Were Made for Loving Me としてカバー。

Toyah And Robert's Sunday Lunch - You Were Made for Loving Me

過激部門に推したいのは、こちら。
ドロンジョ様ふうの衣装で歌う、スコーピオンズの Rock You like a Hurricane です。いや、これもおもしろ部門のほうでしょうか……

Toyah & Robert's Sunday Lunch - Rock You Like A Hurricane


前にモーターヘッド関連の記事で出てきたわけですが、このブログで最近紹介してきたバンドも多く取り上げられています。
以下に、それらを挙げてみましょう。

メガデスのHoly Wars ... The Punishment Due。

Toyah & Robert’s Sunday Lunch - Holy Wars


Foo FightersのEverlong。
本物の蛇を使った動画になっています。

Toyah & Robert's Sunday Lunch - Everlong


Rage against the Machine の、Killing in the Name。

Toyah and Robert's Sunday Lunch - Killing in the name.....


ニルヴァーナ、Smells like Teen Spirit。

Toyah & Robert’s Sunday Lunch - Smells Like Teen Spirit


ラモーンズのBlitzkrieg Bop。

Toyah and Robert's Sunday Lunch - Blitzkrieg Bop


デッドケネディーズまでやってます。
これがまた大胆な衣装で、外部のサイトでは見れないレベルに。

Toyah & Robert's Sunday Lunch - TOO DRUNK TO FUNK

オリジナルのタイトルは、FUNKではなくFではじまる別の四文字の単語ですが、自主規制したんでしょうか。しかし、そこを自主規制してもこの衣装では……
夫婦でこれをやるというのがまずなかなかのことですが、その夫のほうがロバート・フリップだという事実には開いた口がふさがりません。まるで、異次元の世界に迷い込んだかのようですらあります。


この企画は、そもそもはコロナ禍のロックダウンを受けてはじまったもので、およそ2年間にわたって数多くの動画がアップされてきました。
とりあげられたアーティストは、私がこのブログで紹介してきたアーティストと相当部分重なっています。つまりは、ロックの王道というか、本流というか、そういうところをおさえているわけです。

発案は、トーヤのほうです。
パンデミック、ロックダウンという事態を受けて、彼女は「パフォーマーはつらいときに人々を元気づける責任がある」といい、ロバート・フリップもその考えに賛同し、企画がスタートしました。
その原点となる「白鳥の湖」がこちら。

Toyah & Fripp: Swan Lake Sunday Lockdown Lunch.

なかなかの衝撃映像です。
それから2年ほど続けてきたところでフリップは、この企画が一部のファンを憤慨させたことを認めつつ、「この2年間私たちのしてきたことが一人でも多くの辛い思いをしている人を助けることができたならば、それだけで十分な価値がある」と語っています。


余談ですが、妻のほうであるトーヤ・ウィルコックスは、Brave New World という曲を過去にやっています。

Toyah - Brave New World

アイアン・メイデンやモーターヘッドが同タイトルの曲をやっていて、そのタイトルはハクスリーの小説からとられているといってきましたが……さらにもとをたどると、これはシェイクスピア『テンペスト』の一節。トーヤは、そちらの側からとっています。すなわち、ハクスリーが描いたディストピアではなく、「すばらしい新世界」という言葉通りの意味でいっているわけです。
この Brave New World の解釈の違いが、次元のねじれの一つの表われじゃないかと思います。
トーヤのいう「人々を元気づける」というのは、音楽の一側面としてたしかにあるでしょう。
しかし、そうでない音楽もあります。で、プログレというジャンルは、そうでないほうだと私は思うのです。
別にどちらが正しいとか間違ってるとかいうことではありませんが……本来「人々を元気づける」ような音楽世界の住人ではないフリップが夫婦漫才をやっているがために、そこに次元のひずみが生じるのではないでしょうか。

ロバート・フリップは、この企画についてこう自問自答しています。
「76歳にもなって、なんでこんなことをしなきゃいけないのか? それが私の人生だから」 
まあ本人が納得しているのなら外野がとやかくいうことでもないんでしょうが……しかし、本当にそれはロバート・フリップがやらなければならないことだったのか、とは思ってしまいます。

一応、ふざけてるだけではないもう一つの側面として、こんな回もありました。

Toyah & Robert - Ukraine We Hear You .............

ロシアによるウクライナ侵攻がはじまった直後。
ウクライナ国旗の色をあしらった衣装で、ウクライナへの連帯を示しています。
曲は、リヴィング・カラーの「カルト・オブ・パーソナリティ」。「個人崇拝」という意味で、独裁政治のようなことをテーマにした歌です。
この次の週ではニール・ヤングの Rockin' in the Free World をやってるんですが、この選曲も思うところがあってのことでしょう。


最後に、キング・クリムゾン「太陽と戦慄」の話に戻りましょう。
「太陽と戦慄」は、その後“続編”がいくつか作られています。
そのパートⅡの動画を。

King Crimson - Larks’ Tongues In Aspic Part II (The Noise - Live At Fréjus 1982)

ここで、ロバート・フリップ以外のメンバーについても書いておこうと思います。
キング・クリムゾンには、その長い歴史の中で多くのミュージシャンたちが出入りしてきました。
クリムゾン・キングの宮殿に集いし騎士たち……下記に名前が出てくる人の多くは、プログレの世界で広く名を知られたつわものたちです。

まず、パートⅠの動画では、ジョン・ウェットンがベース。
ユーライア・ヒープ、UK、エイジアなど、アートロック~プログレ系の大物バンドに参加してきた人物です。
ドラムは、プログレ界のドラム渡り鳥ビル・ブルフォードです。
もとはイエスにいた人ですが、クリムゾンに移籍。ブルフォードの加入は、クリムゾンにとって大きな一歩となりました。一方のイエスがブルフォードの後任に据えたのが、昨年亡くなったアラン・ホワイトということになります。
もう一人ドラムを叩いているのは、ジェイミー・ミューア。この時期ほんの短期間だけクリムゾンに参加していた人ですが、さまざまなパーカッションを駆使し、いかにもエクスペリメンタルという感じを出しています。

クリムゾンはメンバーの出入りが非常に激しく、パートⅡでは、フリップとブルフォード以外のメンバーが入れ替わっています。
ギターは、エイドリアン・ブリュー。奇妙なエフェクトを多用して効果音のような音を奏でる、いかにもブリューらしいギタープレイといえるでしょう。
そしてベースは、トニー・レヴィン。この人も、プログレ界では名うてのベーシストとして知られています。ピーター・ガブリエルやピンクフロイド、イエスの継承バンドといえるABWHなどと共演し、クリムゾンの現ベースでもあります。

これからしばらくこのブログではプログレ系の話が続くと思われますが、上記の人達の名は、そこでも頻繁に出てくるでしょう。それだけ、この荘厳な深紅の王宮はプログレ界に威風をもってそびえたっているのです。




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