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Soundgarden, Black Hole Sun

2023-02-14 21:26:27 | 音楽批評


今回は、音楽記事です。

前回は、ニルヴァーナについて書きました。

ニルヴァーナといえば、グランジの大物ですが、そのいわゆるグランジというジャンルにおけるモンスターバンドといえば……サウンドガーデンです。

というわけで、今回はサウンドガーデンについて書こうと思います。



ニルヴァーナの登場によって、グランジが日の当たる場所に出てきた……ということを前に書きましたが、では、その日の当たる場所に出てくる前はどうだったのかというと、そこで圧倒的な存在だったのが、Soundgarden です。
グランジがまだマイナーな音楽番組でしか取り上げられなかった時代に、その界隈でカリスマとなっていました。
ニルヴァーナのカート・コバーンも、サウンドガーデンのパフォーマンスを見て「こんなやつらにかなうわけがない」と思ったとか。

代表曲は、おそらくこれになるでしょう。
BLack Hole Sunです。

Soundgarden - Black Hole Sun

サウンドガーデンは、ギターのキム・セイル、ベースのヒロ・ヤマモトとともに結成されました。
ヒロ・ヤマモトは、名前からわかるとおり日系の人。キム・セイルは、キムという名前から朝鮮系のようにも思えますが、インド系の人なんだそうです。
思えば、ニルヴァーナでベースを弾いていたクリス・ノヴォセリックもクロアチア系の人であり……グランジを代表するバンドが、こういうマイノリティの人たちによって結成されたということにも、一つ重要な意味があるように思われます。
それはすなわち、周縁的な存在であるということ。
ロックンロールというもの自体が本来そうであったはずなのですが、時代がたつにつれてそれが日のあたる場所に出てくるようになる。そうすると、その日の光を避けるようにして、日の当たらない場所へと漂っていく……それが、グランジであり、シアトル・ムーブメントだったと思われるのです。

シアトルという街には雨季のようなものがあって、一年の半分ぐらいは空が雲に覆われているといいます。
まさに、日のあたらない場所。そういうところから出てきたのがサウンドガーデンであり、ニルヴァーナだったわけです。

そんな日のあたらないところにあるべきものが日のあたる場所に出てゆけばどうなるか、それは先日ニルヴァーナの話で書いたとおりです。

人間の生理としては、日照量が少ないと、セロトニンが欠乏してうつ病になりやすく自殺率が高くなるということがあるんだそうで……
そういった生物学的な問題か、あるいはもっと別の何かが原因してか、クリス・コーネルも、自ら命を絶ったといわれています。
2017年のことです。
死因は正式には公表されていませんが、自殺であったとしても驚くには値しないでしょう。

カート・コバーンの死がそうであったように、クリスの死もロック界に大きな衝撃を与えました。
多くのミュージシャンが哀悼の言葉をよせ、追悼のライブが行われ……ということになります。
例によってそういった動画をいくつか載せようかと思ったんですが、調べてみるとこれがもうものすごい数にのぼり、しかもそのメンツもすごい人ばかりです。あげていくときりがないので、ここではBlack Hole Sun のカバーだけに限定して、以下にいくつか紹介します。


ハートのアン・ウィルソン。

Ann Wilson Performs Black Hole Sun

彼女は、ロックンロール栄誉の殿堂において、アリス・イン・チェインズのジェリー・カントレルとともにこの歌を歌ってもいます。
アリス・イン・チェインズは、サウンドガーデンと立ち位置が近いでしょう。
ジェリー・カントレルはメガデスのデイヴ・ムステインと親しいことで知られますが、そのムステインは、クリスが死去したとき来日していて東京公演で追悼の演奏をささげています。サウンドガーデンは、そういうメタルとの接点をもつ初期グランジというようなところにいたのです。


次に、ランナウェイズのシェリー・カーリーによるカバー。

Black Hole Sun


ドリームシアター。
鍵盤とボーカルのみのスタイルです。

Dream Theater pay tribute to Chris Cornell, play Black Hole Sun cover, Bucharest, 20.05.2017


ノラ・ジョーンズ。
ピアノの弾き語りでカバーしました。

Norah Jones – Black Hole Sun (Detroit Fox Theatre 5.23.17)


ピーター・フランプトン。
ギターのみのインストゥルメンタル・カバーです。(最後のほうに、ちょっとだけトーキング・モジュレーターをかませて歌っています)
これはクリスの死後数年たってテレビ番組で披露したものですが、クリス死去の直後にも、ライブで同趣向の演奏をしています。

Peter Frampton "Blackhole Sun" on Guitar Center Sessions on DIRECTV


ガンズ&ローゼズも、カバーしました。
この動画は、単にカバーしているだけで、追悼ということではないようですが。

[8K UHD] BLACK HOLE SUN (SOUNDGARDEN) (Guns N' Roses) Momentum Live MNL

カート・コバーンはガンズを嫌っていましたが、クリス・コーネルにはそういう部分もないようで、逆にクリスがガンズの曲をカバーしたりもしています。
このあたり、やはりカートのガンズ嫌いには、自分の嗜好というだけでなく環境的な要因もあったのではないかと思えるのです。


……と、Black Hole Sun のカバーだけに限定し、しかもそのなかの一部をピックアップしただけでもこんな感じです。時代もジャンルも超越していて、クリス・コーネルという人がどれだけのリスペクトを受けていたかがわかるでしょう。


ついでに、Black Hole Sun のカバー意外に、最近このブログの音楽記事で名前が出てきた人たちの動きをいくつか。

追悼コンサートにおけるメタリカのパフォーマンスです。

Metallica: Head Injury (Los Angeles, CA - January 16, 2019)


レイジ・アゲンスト・ザ・マシーンのトム・モレロは、クリスに捧げる曲を発表しました。

Tom Morello - Every Step That I Take (ft. Portugal. The Man & Whethan) [Official Lyric Video]

トム・モレロは、オーディオスレイヴでバンドメイトでもあります。

そして、ニルヴァーナ。
追悼コンサートでは、デイヴ・グロールも登場しました。
ここに引用する方法がわからないのでリンクさせられないんですが、デイヴ・グロールがオーディオスレイヴをカバーした動画がインスタやフェイスブックで公開されています。そこでは、先述のトム・モレロがギターを弾き、ドラムにも同じくオーディオスレイブでかつレイジ・アゲンスト・ザ・マシーンのブラッド・ウィルク。そしてベースにはメタリカのロバート・トゥルーヒロという強力な布陣となっていました。

最近このブログでは、90年代最強バンドみたいなことを何度か書いてきましたが、その最強のメンバーたちがこうして集結するあたり、クリス・コーネルという人の存在感がうかがいしれるのです。
それはまさに、ロックンロールという宇宙におけるブラックホールの太陽であるかもしれません。

そんなビッグなアーティストということで、シアトルには、クリス・コーネルの銅像も建てられました。

Chris Cornell - Statue Unveiling in Seattle

まあ、ロックンローラーの銅像を建てちゃうというのは、私としてはなんだか微妙な気もするんですが……



最後に、あと二曲。

追悼コンサートに登場したクリスの娘、トニ・コーネルです。
ボブ・マーリィの名曲「リデンプション・ソング」を、ジギー・マーリィとともに歌っています。この歌に関しては、生前のクリスがトニとともにライブで歌ったりもしていました。

Brad Pitt, Ziggy Marley & Toni Cornell at Chris Cornell Tribute Concert, 'Redemption Song'

歌の前に、ブラッド・ピットが二人を紹介しています。
ブラピは、クリス・コーネルのドキュメンタリー制作に関わったりもしていたそうで、クリス・コーネルの影響力はそんなところにも及んでいるのです。


最後に、クリス・コーネル自身の動画。

ジョン・レノン「イマジン」のカバーです。

Chris Cornell Covers John Lennon’s “Imagine” on the Howard Stern Show (2011)

前に、同じくジョン・レノンの Watching the Wheel のカバーをこのブログで紹介しました。
あの曲には、先日ビートルズの記事でも出てきた I'm Only Sleeping と同じモチーフがあるでしょう。
サウンドガーデンの曲のイメージからは、なかなかジョン・レノンには結びつかないかも知れませんが、実はクリス・コーネルも同じ波長を共有しているのです。
破壊的、破滅的な顔の奥にある、繊細な心……それは、カート・コバーンもまた同じであったでしょう。それがつまりは、ブラックホールであり、太陽ということなのかもしれません。




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