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シリーズ 医療制度改革③ 「決断を迫られる療養病床」

2006-07-23 18:28:28 | シリーズ 医療制度改革
今回の医療制度改革の大きな目玉の一つに、療養病床の再編がある。少し前からメディアでも報道されていたので、ご存知の方も多いだろう。

現在、全国に約38万床ある療養病床のうち、医療保険の適用となっているのが25万床。介護保険の適用となっているのが13万床となっている。
それを医療保険のものを15万床に減らし、本当に医療が必要な人が利用することにし、残りの23万床を老人保健施設やケアハウス、有料老人ホーム、在宅療養支援拠点などにしようという計画になっている。期限は平成24年3月である。
今回の制度改革が、医療費の抑制を第一目的にしていることは前項でも記載したが、医療保険の療養病床を減らし、さらに、介護保険の療養病床もより安価な施設への転換を図る意味では一石二鳥的な考えである。

厚労省の示したデータによると、現在療養病床の平均在院日数は172.6日。全国平均の在院日数36.3日のおよそ4倍となっている。
また、入院患者のうち医療の必要がない患者は全体の5割に及び、医師が直接治療をするのが週1回程度の人を含めると8割になる。
これらの数字をみると、療養病床の必要性は限られてくるのがわかる。

療養病床は、今決断の時期を迎えている。

これまで療養病床の多くは、施設に入ることができない高齢者の受け皿になってきた経緯がある。現在のように、特別養護老人ホーム、老人保健施設、ケアハウスなどが整備される前は、病院がその役割を担ってきたのは、まぎれもない事実である。
しかし、その中で充分なケアが提供されてきたのかを振り返る必要があるだろう。医療という名のもとに、高齢者を縛ったり、安易にバルーンを挿入したり、訴えが多い高齢者を“うるさい患者”と片付けたりはしていなかっただろうか。
患者のプライバシーを保護していただろうか、自分たちの言うことを聞かない患者は“問題”というレッテルを貼ってはいなかったか。医療の場という言い訳とともに。

すべての療養病床がそうではなかっただろうが、環境面ひとつとってみても、多くの療養病床がまだ無機質の病院であることは間違いない。
在院日数が半年程度であれば、そこで過ごす時間は治療だけではなく生活である。
これまで患者のケアや生活、アメニティなどに注意を払わずに、ここにきて金銭の問題だけで療養病床の再編に反対と唱えるのは筋が通らない。

しかし、厚労省も言っているように、今後高齢者施設に転換していくにしても地域差を考慮に入れる必要は充分ある。
高齢者が今後も増加する都市圏はよいが、高齢者数の横ばいが予想される地方においては、療養病床の数も適切に判断する必要がある。また、団塊の世代が利用することも考慮に入れ、快適な空間を整備する視点も必要かもしれない。

ここにきて、国は再編に関する補助金を整備したり、中医協が有料老人ホームやケアハウスへの計画的な訪問診療を認めるなど金銭的にも再編を後押しするようになっている。
療養病床を再編する環境は整いつつある。あとは、経営者がいかに利用する人の立場を考えた転換ができるかに大きな期待がかかっている。

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