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土器を焼き上げる火は、夏中何度も焚き上げられた。シクルはいい仕事をした。出来上がった土器は、一旦宝蔵に集められ、順繰りに、必要なものに分け与えられる。みんなで協力して作ったものだから、みんなのものだということになっている。だから村人はそれぞれに、必要なだけの土器をもらうことができた。
蝉の声が変わり、夏の日差しが幾分弱くなる頃、アシメックはコルをソミナに会わせた。その頃にはもう、コルにも十分に納得がいっていた。ユカダに会えなくなるわけではない。兄弟とも、いつでも一緒に遊べるのだ。
ソミナは驚いて、コルを見た。驚きのあまり、持っていた土器の皿を落とし、割ってしまった。
「ああ、どうしよう」
ソミナはおろおろとしつつ、土器のかけらをひろい、そしてもう一度、コルを見た。かわいい。なんて丸い大きな目だろう。じっとこっちを見ている。
「ユカダのところでは、子供が多くて大変なんだ。ひとり、おれが育ててやると言ったんだ。おれんとこは子供がいないからな。ソミナ、手伝ってくれないか」
アシメックは言った。ソミナは声を飲みながら、じっとコルを見つめていた。そのときにはもうすでに、ソミナの心は母親になっていた。何してやろう。何してやろう。何かしてやりたい。
「わかったよ。あにやのいうことはいつもいいことだから。ああ、かわいいな。おいで、糠だんごつくってやる」
ソミナが手を伸ばすと、コルはおずおずと近づいてきた。子供ももうわかっているのだ。この人の子供にならなければいけないことを。そして、自分でそれを、何とか乗り越えようとしているのだ。ソミナにもそれがわかった。愛おしさがあふれてきた。
「おれ、なんでもしてやるから。いいこと何でもしてやるから。泣くな、な」
ソミナは泣きそうなコルの目を見ながら、言った。
コルは黙ってうなずいた。