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世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

クプダ④

2018-06-18 04:12:57 | 風紋


稲は半身を沼に浸し、枯れていたが、美しかった。まるで神のようだ。これはカシワナ族の宝なのだ。カシワナカがくれた、極上のおいしい食べ物だ。これがあるからこそ、カシワナ族は豊かに太ることができる。みんないい暮らしをすることができる。だが、ここにある稲からとれる米だけでは、カシワナ族が食べるだけで精いっぱいなのだ。ヤルスベ族に分けられる分は少ない。だが、ヤルスベの要求はどんどん大きくなってくる。

どうすればいいのか。アシメックは顔をしかめて稲を見つめた。もっと、米がたくさん採れれば、このオロソ沼が、もっと広ければ。……広さ?

「クプダ(広さ)というんだ、場所が大きいことを、クプド(広い)というじゃないか」

その時、エルヅの言葉が頭にひらめいた。クプダ、広さ。

広くなれば、オロソ沼を広くすれば、なんとかなるのではないか?

イタカの野に細い川を描き
稲を歩かせ
豊の実りを太らせよ

夢で聴いた神の声がありありとよみがえった。たちまちのうちに、アシメックの頭の中にある情景が浮かんだ。川だ。川を掘ればいい。ここに川を掘って、沼をイタカに広げるんだ。そしてその沼に、稲を植えれば、沼が広がる、米がとれる量が増える!!

これか!!

アシメックは振り向き、イタカの野を眺め渡した。野も、オロソ沼に近い一帯には草が少なく、水たまりがあちこちにあった。野はオロソ沼に向かってわずかに傾斜しているのだ。地面も低く、ぬかるんでいるから、鹿もここまでは来ない。そうだ、この湿った辺りを、みんな沼にしてしまえばいい。川を掘って、水を流してしまえば、低いところはみんな沼になる。




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