
ブリトン・リヴィエール
イエスはガダラというところで、悪霊につかれた人にあった。悪霊につかれた者はとても凶暴で人々は困り果てていた。とりついた悪霊はイエスを見るなり、自分たちを苦しめないでくれと叫んだ。イエスが名は何と言うのかとたずねると、悪霊は「レギオン。大勢だから」と言った。そこより遠いところに豚の群れがいた。悪霊は自分たちをあの豚の群れにやってくれと言った。そこでイエスはそうしてやった。すると豚の群れはみんな湖の中に流れ込み、水に溺れて死んだ。
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大勢、という怪物の代名詞にもなっている、レギオンの神話です。実際はこのようなことはありませんでした。他であった何らかの出来事がイエスに結びついたものでしょう。だがそれには意味がないことではない。イエスは後に、大勢の暴力によって殺されているからです。大勢、というものがどういうものかということを考える時、この闇のように黒い豚の群れのイメージは、人間をよく助けるでしょう。