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世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

オラブの変③

2018-02-13 04:12:39 | 風紋


だがあのオラブは、その神に逆らったまま、境界の向こうで、もう何年も生きているのだ。たびたび村人から物を盗み、何度も追いかけられているのにかかわらず、一度も捕まったことがない。

正しいものが常に勝つなら、すぐにでも捕まるはずなのに。

そのことに、アシメックは不安を感じていた。もしや、神カシワナカを脅かすような魔が、オラブを助けているのだろうか。

そんなはずはあるまい。すばらしい神カシワナカを脅かす魔など、いるはずはないのだ。

米の収穫が終わって数日後、例年のようにまたヤルスベ族が米を買い付けに来た。ゴリンゴと何人かのヤルスベ族の人間が来たが、その中にはアロンダの姿はなかった。

有名なヤルスベ族の美女を見られることを、内心期待していたやつは、少々がっかりしたらしい。今年の交渉が終わった後、ヤルスベ族の人間にアロンダのことを尋ねるやつがいた。それによると、アロンダは最近病気になって寝付いているらしい。だから来れなかったというのだ。

「ほう、病気か」
「胸が悪くなったんだとさ」
「そりゃいかんね。胸の病気は、心に重いものがあるっていうぞ」
「隠し事でもあるのかな」

アロンダが病気になったという話は、多少の尾ひれをつけながら、村に伝わっていった。アシメックもそれを耳にしたが、たいして気にはしていなかった。




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