「手首をきかせて一気にあげるんだ。大きいぞ」
言われたとおりにしてみた。するとほどなく、銀色の魚が水面に見えてきた。ネオは目を見開いた。
絶対、おれ、これやる! ネオは心の中で叫んだ。絶対絶対、うまくなって、すごい釣りができるようになる!!
銀色の魚を手にとりながら、ネオの心は明るい喜びに満ちていた。
その日、ネオは五匹の魚を釣った。サリクにお礼を言うと、ネオは魚を持って、走ってモラの家に向かった。自分の釣った魚を、一番にモラに見せたかったのだ。
モラはまだ十五だから、母親の家に一緒に住んでいる。ネオが一目散でその家を目指して走っていくと、モラは外で土器の壺の中を覗いていた。ネオはその姿を見るなり叫ぶように言った。
「モラ、おれ魚釣ったよ!」
その声を聞いて、モラは驚いて振り向いた。息を切らせて走ってきたネオが、飛び込むように近くに寄ってきた。手には銀色の魚を持っている。
「ああネオ、きれいな魚ね」
「うん、サリクに釣り教えてもらったんだ。五匹も釣れてさ、みんな食えないから、二匹君にやるよ」
「くれるの?」
「うん!!」
ネオは持っていた茅袋の中を覗き、その中から一番大きな魚を取り出して、モラに差し出した。
「ほら、これ食べると、腹の子がよく育つんだって!」
「うん、知ってるわ、ありがとネオ」
言いながら、モラは笑って魚を受け取った。子供を孕むと、その父親が何かをくれるということは、よくあることだったからだ。