世界はキラキラおもちゃ箱・2

わたしはてんこ。少々自閉傾向のある詩人です。わたしの仕事は、神様が世界中に隠した、キラキラおもちゃを探すこと。

予兆⑤

2018-07-26 04:10:47 | 風紋


明日は収穫祭だ。みなの前で踊らなければならない。アシメックはそれに、少し不安を感じていた。目眩を感じることが、最近頻繁になってきているのだ。無事にやれればいいが。

稲蔵にいっぱいに並んだ米の壺を見渡しながら、アシメックは隣のシュコックにぼそりと言った。

「シュコック」
「なんだ?」
「おれが死んだら、次の族長をたのむ」

シュコックははっとして、アシメックの顔を見た。

髪に差したフウロ鳥の羽が少し傾いていた。頬の化粧も少し剥げている。気づかなかった。アシメックは疲れている。

シュコックは、しばし答えられなかった。だが、何かを言わなければならないと思った。アシメックの目が真剣だったからだ。

「……わかった」

シュコックは静かに言った。

収穫祭はいつもよりずっと盛大に行われた。酒造りの女が喜んで、いつもよりずっと多い酒の壺をだしてくれたのだ。みなが自分が蓄えていた栗や干しグミなどを出しあい、みなで大いに喜んだ。




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