かつてないほどのたくさんの米がとれたことに、みなは有頂天になっていた。あんな喜びはない。これで、どんなにヤルスベが無茶な要求をしてきても、対応できる。みんなの食べる分も増える。
アシメックはすごい。みんなのためにやってくれたのだ。
楽師は新しい歌を何度も歌った。それに合わせて、自分も歌い出し、踊り出すものもいた。酒に酔って、隣の村人と抱き合って泣きだすものもいた。
アシメックはその様子を見ながら、踊りの準備をした。化粧を塗りなおしてくれるソミナの手を少し煩わしく感じるのは、腕の先が少ししびれているからだ。だが、そんな様子は微塵も出してはならない。
「ようし、いくぞ!」
いつもより大きな声を張り上げ、アシメックはみんなの前に躍り出た。一瞬ふらついたが、片足をすぐに前に出してごまかした。
フウロ鳥の羽をふんだんにつけ、美しく装った男が、広場の真ん中に出て、神のように飛び上がり、舞った。それが一瞬みんなの目に、本当に彼が鳥のように飛んでいくかに見えた。
アシメック!
誰かが叫んだ。サリクの声だ。それはわかった。あいつはいつも、あんな声でおれを呼ぶ。まぶしそうな目でおれを見る。信じているのだ。おれを。裏切るわけにはいかない。