次の日の朝早く、アシメックが広場に来てみると、もうトカムがそこに来ていた。まだ他のものは集まっていない。
「やあトカム、早いな」
アシメックが声をかけると、トカムは恥ずかしそうに、「うん」と言った。
「仕事が楽しいのか」とアシメックが言うと、トカムはくちびるをかみしめた。トカムは今、穴を掘りたいのだ。そんなことは、土器を作っている時も、ヤルスベで色塗りの仕事を習っている時も、感じたことはなかった。
だがトカムは、自分の気持ちを言うのが下手だった。だから何も言わずに、小さくうなずいただけだった。だがそれでも、アシメックは嬉しかった。トカムはいい目をしていた。エルヅに数を数える力があるのを発見した時と、同じ予感がした。
やがてみんなが広場に集まってきた。アシメックは昨日と同じように、みなをイタカの野に導いていった。
汗を流して、鍬を振り、土を打つ。そのとき、鍬が土に食い込んで、穴が空く。トカムはそれが面白かった。自分の思うように、穴が空くのがおもしろかった。鍬の重さもここちよい。腕を振り上げる時、鍬が一瞬後ろに飛びそうになるのを、自分の手で押さえる感覚が、ここちよい。
おれ、できる。
トカムは土を掘りながら思った。それが、涙が出るほどうれしかった。土器を作る時も、帯を編む時も、みんなのように器用に作れなかった。それが恥ずかしくて、家に閉じこもりがちだった。このまま、何もできずに、何もせずに、人生終わるのか。そう思ってたまらなくなる時もあった。