過去の傑作集、一応今日が最後です。これは、時々散歩がてらにゆく、近くの山のある場所で見られる木漏れ日です。見上げると、翼を広げた天使の形に見えるので、天使の木漏れ日と呼んでいます。
同じ写真は何枚も撮っているんですけど、最初に撮ったこれが、いちばんきれいです。季節的に、夏が一番きれいですね。秋や冬は、葉が落ちて、少しさみしい感じになります。
やさしい何かが、ほほえんでいるような気がするでしょう。見えないなにか、大切なものが、こもっているんですよ。ほんとです。美しいのはそのせいです。
この世界には、見えない美しいものに、あふれています。それを感じることのできる人間は、なかなか、この世界で育つことができません。その感性を育てようとすると、荒々しい苦しみの吹雪があらゆる仕打ちをして、つぶしてしまうからです。だから人は、大人になると、美しいものはほとんど信じなくなる。それを信じて生きていくことが、ほんとうに難しいからです。
けれども、人間は、その美しい見えないものがなければ、生きていくことはできません。だから、美しいものは、いつも、静かに人間を見つめている。見えないところで、そっと、痛い傷に触れてささやいている。
もうやめなさい。苦しいことは。もういいんだよ。
なんとかしていこうね。みんな、愛しているんだよ。
凍り付いて、閉じ込めたつぼみの、ひとひらを、かじかんだ耳のように、ほんの少しひらいてみましょう。聞えなかった声が聞えるようになる。
ほんとうの世界は、いつもすぐそばで、歌っていた。あいしてるよ。
あいしてるよ。