なか絶ゆるこほりのひまやいかならむ岩波河の春の初風(夫木抄)
春来ればとくる氷のうすらひに音(おと)たてそむる谷川の水(夫木抄)
春霞立つや遅きと山川の岩まをくぐるおと聞こゆなり(後拾遺和歌集)
谷風にとくるこほりのひまごとにうちいづ る浪や春のはつ花(古今和歌集)
みよし野のたぎつがうちの春のかぜ神代もきかぬ花ぞみなぎる(建長二年仙洞二十首)
さはだ川瀬々の埋れ木あらはれて花咲きにけり春の白浪(夫木抄)
なか絶ゆるこほりのひまやいかならむ岩波河の春の初風(夫木抄)
春来ればとくる氷のうすらひに音(おと)たてそむる谷川の水(夫木抄)
春霞立つや遅きと山川の岩まをくぐるおと聞こゆなり(後拾遺和歌集)
谷風にとくるこほりのひまごとにうちいづ る浪や春のはつ花(古今和歌集)
みよし野のたぎつがうちの春のかぜ神代もきかぬ花ぞみなぎる(建長二年仙洞二十首)
さはだ川瀬々の埋れ木あらはれて花咲きにけり春の白浪(夫木抄)
今日もなほ松の嵐のおとさえてまだとけやらぬ雪のした水(宝治百首)
岩間もるこほりのくさびうちとけて今朝より春の水ぞもりくる(久安百首)
春風にこほりのとぢめゆるされて岩まの水のこころゆくなり(夫木抄)
岩まより春をもらしてゆく水の浪にただよふうすごほりかな(正治二年初度百首)
消えはてぬ雪かとぞ見る谷川の岩まを分くる水の白波(玉葉和歌集)
山川に冬のしがらみかけとめてなほ風さむくこほる春かな(新後撰和歌集)
晴れやらぬ雪げの雲にきりあひて曙さむき二月(きさらぎ)の空(夫木抄)
朝日かげさすがに春の色ながら雲は雪げにさゆる空かな(宝治百首)
きさらぎやさえつる風のよのまにもまたうすごこほる池のおもかな(壬二集)
日かげ待つかけひの氷とけやらでなほ風さむし春のやまざと(宝治百首)
春べとはおもふものから風まぜにみ雪ちる日はいとも寒けし(風雅和歌集)
風さむみまだきさらぎの山のはにかすむとみえて雪の降りつつ(新撰和歌六帖)
風さむみ春としもなき世の色に山の霞も立ちやかぬらむ(伏見天皇詠百首和歌)
春来ても雪降る空をながむれば霞もさゆるここちこそすれ(六百番歌合)
ぬきをうすみ春の衣(ころも)の白たへに雪なほ寒しきさらぎの空(宝治百首)
梅が枝のにほひばかりや春ならむなほ雪ふかし窓のあけぼの(六百番歌合)
空はなほふりにし年にかはらねどつもらぬ雪に春ぞ知らるる(藤葉和歌集)
春きては日かずへぬれど岩がくれ残れる雪は消えがたきかな(堀河百首)
初草はしたにもゆれど片岡のおどろがうへの雪は消(け)なくに(風雅和歌集)
ながめやるすゑ野の原の若草につもると見れば消ゆるあは雪(安嘉門院四条百首)
かつ消えてつもりもあへず早蕨(さわらび)のもゆる春日の野べのあは雪(宝治百首)
はつはつの若菜を摘むとあさるまに野原の雪はむらぎえにけり(夫木抄)
消えなくにまたや都をうづ むらむ若菜つむ野もあは雪ぞ降る(千五百番歌合)
おのづ から残るがうへに降りそへてよそにつもらぬ春のあは雪(延文百首)
降りつみし去年(こぞ)の白雪むら消えてあらはれそむる野べの通ひぢ(新続古今和歌集)
立ちかへる春のしるしはかすみしくを初瀬山の雪のむらぎえ(堀河百首)
春風に谷のこほりはとくれども消えのこりたる嶺のしら雪(堀河百首)
空にのみ降るとは見えて吹く風に散りておとなき春の淡雪(草庵集百首和歌)
かきくらし降るとはすれどかつ消えぬかすめる空の春のあは雪(宝治百首)
山の端(は)にうぐひす鳴きてうちなびき春とおもへど雪は降りつつ(古今和歌六帖)
梅が枝に鳴きてうつろふ鶯のはね白たへにあは雪ぞ降る(万葉集)
まづ 咲ける花とやいはむうちわたす遠(をち)かた野べの春のあは雪(新後撰和歌集)
冬枯れのこずゑに残る去年(こぞ)の雪は今年の花のはじめなりけり(秋篠月清集)
霞立ち木(こ)の芽もはるの雪ふれば花なき里も花ぞ散りける(古今和歌集)
春たちてなほ降る雪は梅のはな咲くほどもなく散るかとぞ見る(拾遺和歌集)
まだ咲かぬ花のおもかげさきだてて風にちりくる春のあは雪(嘉元百首)
咲かぬまは花と見よとやみ吉野の山のしらゆき消えがてにする(新勅撰和歌集)
春の雪の梢ににほふ吉野山花よりさきに花を見るかな(夫木抄)
まがへつつながめぞくらす花をのみまつの梢の雪のむらぎえ(千五百番歌合)
花ならで折らまほしきは難波江の葦の若葉にふれる白雪(後拾遺和歌集)