山川に冬のしがらみかけとめてなほ風さむくこほる春かな(新後撰和歌集)
晴れやらぬ雪げの雲にきりあひて曙さむき二月(きさらぎ)の空(夫木抄)
朝日かげさすがに春の色ながら雲は雪げにさゆる空かな(宝治百首)
きさらぎやさえつる風のよのまにもまたうすごこほる池のおもかな(壬二集)
日かげ待つかけひの氷とけやらでなほ風さむし春のやまざと(宝治百首)
春べとはおもふものから風まぜにみ雪ちる日はいとも寒けし(風雅和歌集)
風さむみまだきさらぎの山のはにかすむとみえて雪の降りつつ(新撰和歌六帖)
風さむみ春としもなき世の色に山の霞も立ちやかぬらむ(伏見天皇詠百首和歌)
春来ても雪降る空をながむれば霞もさゆるここちこそすれ(六百番歌合)
ぬきをうすみ春の衣(ころも)の白たへに雪なほ寒しきさらぎの空(宝治百首)
梅が枝のにほひばかりや春ならむなほ雪ふかし窓のあけぼの(六百番歌合)