空はなほふりにし年にかはらねどつもらぬ雪に春ぞ知らるる(藤葉和歌集)
春きては日かずへぬれど岩がくれ残れる雪は消えがたきかな(堀河百首)
初草はしたにもゆれど片岡のおどろがうへの雪は消(け)なくに(風雅和歌集)
ながめやるすゑ野の原の若草につもると見れば消ゆるあは雪(安嘉門院四条百首)
かつ消えてつもりもあへず早蕨(さわらび)のもゆる春日の野べのあは雪(宝治百首)
はつはつの若菜を摘むとあさるまに野原の雪はむらぎえにけり(夫木抄)
消えなくにまたや都をうづ むらむ若菜つむ野もあは雪ぞ降る(千五百番歌合)
おのづ から残るがうへに降りそへてよそにつもらぬ春のあは雪(延文百首)
降りつみし去年(こぞ)の白雪むら消えてあらはれそむる野べの通ひぢ(新続古今和歌集)
立ちかへる春のしるしはかすみしくを初瀬山の雪のむらぎえ(堀河百首)
春風に谷のこほりはとくれども消えのこりたる嶺のしら雪(堀河百首)
空にのみ降るとは見えて吹く風に散りておとなき春の淡雪(草庵集百首和歌)
かきくらし降るとはすれどかつ消えぬかすめる空の春のあは雪(宝治百首)
山の端(は)にうぐひす鳴きてうちなびき春とおもへど雪は降りつつ(古今和歌六帖)
梅が枝に鳴きてうつろふ鶯のはね白たへにあは雪ぞ降る(万葉集)
まづ 咲ける花とやいはむうちわたす遠(をち)かた野べの春のあは雪(新後撰和歌集)
冬枯れのこずゑに残る去年(こぞ)の雪は今年の花のはじめなりけり(秋篠月清集)
霞立ち木(こ)の芽もはるの雪ふれば花なき里も花ぞ散りける(古今和歌集)
春たちてなほ降る雪は梅のはな咲くほどもなく散るかとぞ見る(拾遺和歌集)
まだ咲かぬ花のおもかげさきだてて風にちりくる春のあは雪(嘉元百首)
咲かぬまは花と見よとやみ吉野の山のしらゆき消えがてにする(新勅撰和歌集)
春の雪の梢ににほふ吉野山花よりさきに花を見るかな(夫木抄)
まがへつつながめぞくらす花をのみまつの梢の雪のむらぎえ(千五百番歌合)
花ならで折らまほしきは難波江の葦の若葉にふれる白雪(後拾遺和歌集)
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