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薄田泣菫「忘れぬまみ」

2017年06月09日 | 読書日記

忘れぬまみ 薄田淳介(薄田泣菫)


夏野の媛(ひめ)の手にとらす
 しろがね籠(がたみ)、ももくさの
香(か)には染(し)むとも、追懷(おもひで)は
人のまみには似ざらまし。


伏目(ふしめ)にたたすあえかさに、
ひと日(ひ)は、白き難波薔薇(なにはばら)、
夕日がくれに息(いき)づきし
津の國の野を思ひいで。


ひと日(ひ)は、うるむ月の夜(よ)に、
水漬(みづ)く磯根の葦の葉を、
卯波(うなみ)たゆたにくちづけし
深日(ふけひ)の浦をおもひいでぬ。

(青空文庫の「白羊宮」より)


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