タイトル：さまよう刃 2009年製作、日本・東映／112分
ジャンル：ベストセラー小説を映画化した社会派ドラマ。
映画館：福知山シネマ１ 2人／146席
鑑賞日時：2009年12月9日(水) 18:55～
私の満足度：65%
オススメ度：65%
【序】
定時退社の水曜日、映画館へ直行。レディーズデイにレディがひとり
最終の１０列目そして私が３列目。計２人。いつもながら映画館の
存続が心配だが、ゆったりとみれるのは贅沢な気分だ。
【ストーリー：福知山シネマHPから要約】
最愛の娘が、少年達に、凌辱され殺された。ある日、謎の密告電話により、
失意のどん底にいた父・長峰重樹(寺尾聰)は、犯人を知ることになる。
自ら犯人を追う父…。そして、長峰を追う2人の刑事。被害者の絶望は、
永遠に消えない。そして、少年達が死刑を受けることはない。
建前の正義を優先する警察組織に、不条理さを感じる刑事たち。
それぞれが苦悩しながら、事件は衝撃の結末に向けて、加速していく…。
[2009年10月10日公開] 福知山は12・5公開
【注意】
今回のメールは、結末部分を中心に、完全ネタバレです。
また、詳細なストーリー記述をせずに感想を書いていますので
映画を見られた方向きになっています。ご容赦ください。
また、この映画の特徴として、わざとどうとでもとれるように
している節があり、私の誤解に基づく想像になっているかも
しれません。ちなみに原作は未読です。
【冒頭】
何かで読んだ気がするのですが、この映画の紹介で”犯人を許す”
というようなことが書いてあったっけ？それぐらいの前知識で見始め
たのだが、頭からただならぬ雰囲気。夜道を歩くセーラー服に、黒の
車が音もなく近づき二人組みの少年が拉致。遠目の望遠映像が逆にリアル。
あっという間に少女は死体になってしまいました。（この役者さんは
AV女優：伊東遥と後から知ってちょっとびっくり）
『エマさんはスガノカイジとトモザキアツヤに殺されました』
パシリの中井からの、密告の電話で犯人のアパートへ踏み入れた父、
電話の内容どおりビデオを見つけて再生すると、二人組みに愛娘が
陵辱されており腰を抜かす。吐く。うろたえる。
えっ。これで許しちゃうの？？こりゃ許せへんで・・・と思って見て
いると、スガノが帰宅。父は背後から包丁でブスリ。前知識からすると
意外な展開ながら、しかたがない展開とも言える。最愛の人を殺され、
殺されたところを見さされ、その犯人が目の前にいるとなれば、誰でも
ありうる行動ではないだろうか。ここは少年法とは関係なく"復讐"の
意味合いが強いように思った。大人でも死刑になるとは限らないだろう。
映画では、父・長峰が手紙で殺害を告白している。だが、次のシーンは
別の可能性を暗示している。
パシリの中井が、スガノの部屋に入ってくる。散らかった部屋の床に
倒れているスガノ。私の目には、ここでスガノが動いたように見えた。
つまり、まだ息はあったと。中井は『なんだ、もってるんじゃないか』
とつぶやきながら、死体越しのDVD？ゲームソフト？に手を伸ばす。
このとき一緒に折りたたみナイフを手にしたような、もとから持って
いたような・・記憶は、はっきりしない。だが、この場におよんで、
死体より物の方に目いくという感覚に驚かされる。さらに死体を足蹴に
するような感じで次のシーンへと移る。
検死官がでてくるかと予想したが、それはなく。警察は指紋から
殺害者を長峰と裏付ける。はたして、そうか？いままで二人の陵辱の
手伝いをさされてきた中井が相当に病んでることを示すためのシーン
ともとれるが、とどめを刺したのは中井という可能性を残したのだと
考えました。これだと長峰は人を殺していないことになります。
【中盤】
長峰は、警察にトモザキを殺したことを手紙で知らせるとともに
もうひとりの少年スガノを追って雪のなかを歩いてゆく。
このあたり、突っ込みどころ満載。かなり無理のある展開のように
思えるのだが・・・。それに輪をかけるように、私、実は聞き間違えを
しておりました。長峰はトモザキを刺すときにスガノの居場所を
「長野のペンション」と聞き出していたのですが、私はこれを「中野の
ペンション」と聞き違えたために、最初は東京の中野にペンションって
あるのかなあ？そのあとは、看板とか電話帳とかインターネットで
まず「中野」で調べたほうがよくないのかなあ・・・と思いながら見て
おりました。そしたら、どうも一軒一軒歩いて捜しているようで、
そりゃないでしょう。しかも、警察がペンションを見つけたときに
近くにいるわけですから、ありえねーっ、と思います。
でも、まあこの監督結構大事なところを省略するようですから、
携帯電話はヤミで手に入れて、パシリ中井と織部刑事(竹之内豊)から
映画では見えないところでも情報仕入れたりやりとりをしていた
ということにしておきましょう。
【終盤のクライマックス】
なぜか川崎駅前。歩道橋の上の中井。警察は時間が十分あったにも
かかわらずマイクも持たせず。おまけに信号の変わり際にダッシュされ
中井に振り切られてしまう失態。場所は、川崎シネチッタヘ。あ～、
そこで見てたら盛り上がっただろうなあ。そしてトモザキと遭遇するも
約束した１０万円ではなく、ナイフを取り出す。あのスガノにとどめを
さしたかもしれない折りたたみ式。しかし、トモザキは振り払って逃走、
追ってくる刑事たち・・・。と、ここで真打長峰登場。長野でペンション
のオヤジさんからもらった猟銃を構えてトモザキの前に立ちはだかる。
おびえるトモザキの襟首をつまんで、『私は、最愛の娘を－』と迫力の
演説。三島由紀夫の最期を思い出しました。
一方追いついた１０人ぐらいの刑事達。上司に発砲の許可をとって
全員カメラにおさまるように固まってピストルを長峰に向ける。まわりの
野次馬は騒然と言いたい所であるが、実際には映画のロケをみている感じ。
そこへ『待って下さ～い』と走りこんでくる織部。えっ！撃たれるの？と
一瞬思ったが両手を広げて銃口を向ける他の刑事達を制止。
演説が終わり、極みに達した長峰がうなり声を上げたところで
「バーン！」後ろ向けに倒れる長峰。ゆっくりと銃をおろす真野刑事
(伊東四朗)。アスファイルに倒れ、トモザキの襟首をつかんだままの長峰。
だが目は焦点がさだまらず、表情はもぬけのから、ほんの数秒だったの
だろうがとてもながく感じられる間、長峰のアップ。暗転。
真野刑事は、長峰の銃には弾丸がはいってないかもしれないと考えて
いたかもしれない、だが警察としては万一公衆の目前で何もせず市民が
市民を殺すのを見過ごすことはできない。撃ち損じるリスクはあるが、
それを避けるには長峰のど真ん中を狙い、少なくともその場で殺され
ようと見える側を守らなくてはならない。と考えたか？
それとももっと別の理由からか？真野刑事は既に、長峰の動きから警察
内に密告者がいて、それは自分の部下綾部であるとも把握している。
長峰が生きている限り、それはいつ明るみになるとも限らない。それは、
警察としても、自分としてもどうしても避けたいことだ。だから長峰は、
闇に葬らねばならない。織部と長峰の関係と共に。長峰の銃に玉が
なかったことも一緒に。警察が、警察を守るために。
【ラスト】
二人の裁判官が、ゆっくりと階段を上ってゆく。法廷の傍聴席には、
織部刑事。長峰の変わりに、少年の裁判を見届けようとしているのか。
そこに真野刑事がモノローグのように織部に語りかける声がかぶさる。
『長峰の銃には玉は、はいってなかったそうだ。裁判の判決は
どうなるか知らんがね。』まるで、人ごとのような口ぶり。
私は、警察が裁かるシーンになればいいのにと思っていました。
銃の使用が適切だったかどうか？発砲前に語りかけられなかったのか？
今回の場合は、川崎にトモザキがくるまでに十分時間があったはず。
鉄砲以外の手はなかったのか？
実用化されているのかどうかわからないですが、あるハリウッド
映画(※タイトルはネタバレになるので後述)では、ゴム？の玉を使って
撃たれた人は吹っ飛ぶけれど、命は落とすことはないという手法が
使われていました。こういうことできないのでしょうかねえ。
【教訓】
はっきりしない描写が多いと書いてきましたが、はっきりとしている
こともありました。長峰の二人の少年に対して行ったことの違いです。
最初の少年とあったときは、ビデオを見た後にどれくらいの時間が
あったかは、わかりませんが、包丁で刺しました。このことを警察への
手紙のなかで「トモザキアツヤを殺し、恨みが晴れたのかと問われ
ますと、もし何もしなければ悔いが残ることになったことだけは
確かだと思います」と書いています。ここで既に"殺さなければ"とは
かかずに、"何もしなければ"と書いているところに、殺したことが
良かったのか、別の方法があったのではないかと考えていることを
示しています。そして、最後の川崎では銃に玉はなし。妻を亡くし、
ただひとりの肉親を、最悪の方法で失った長峰が、死刑判決を受ける
ことがない少年に対して、或る程度の時間をかけて考えたの後に
たどり着いた結論が、殺さないことであったということは、
重く受け止めたいと感じました。
ネタバレの映画タイトル
※フォーン・ブース コリン・ファレル主演
さまよう刃
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ジャンル：ベストセラー小説を映画化した社会派ドラマ。
映画館：福知山シネマ１ 2人／146席
鑑賞日時：2009年12月9日(水) 18:55～
私の満足度：65%
オススメ度：65%
【序】
定時退社の水曜日、映画館へ直行。レディーズデイにレディがひとり
最終の１０列目そして私が３列目。計２人。いつもながら映画館の
存続が心配だが、ゆったりとみれるのは贅沢な気分だ。
【ストーリー：福知山シネマHPから要約】
最愛の娘が、少年達に、凌辱され殺された。ある日、謎の密告電話により、
失意のどん底にいた父・長峰重樹(寺尾聰)は、犯人を知ることになる。
自ら犯人を追う父…。そして、長峰を追う2人の刑事。被害者の絶望は、
永遠に消えない。そして、少年達が死刑を受けることはない。
建前の正義を優先する警察組織に、不条理さを感じる刑事たち。
それぞれが苦悩しながら、事件は衝撃の結末に向けて、加速していく…。
[2009年10月10日公開] 福知山は12・5公開
【注意】
今回のメールは、結末部分を中心に、完全ネタバレです。
また、詳細なストーリー記述をせずに感想を書いていますので
映画を見られた方向きになっています。ご容赦ください。
また、この映画の特徴として、わざとどうとでもとれるように
している節があり、私の誤解に基づく想像になっているかも
しれません。ちなみに原作は未読です。
【冒頭】
何かで読んだ気がするのですが、この映画の紹介で”犯人を許す”
というようなことが書いてあったっけ？それぐらいの前知識で見始め
たのだが、頭からただならぬ雰囲気。夜道を歩くセーラー服に、黒の
車が音もなく近づき二人組みの少年が拉致。遠目の望遠映像が逆にリアル。
あっという間に少女は死体になってしまいました。（この役者さんは
AV女優：伊東遥と後から知ってちょっとびっくり）
『エマさんはスガノカイジとトモザキアツヤに殺されました』
パシリの中井からの、密告の電話で犯人のアパートへ踏み入れた父、
電話の内容どおりビデオを見つけて再生すると、二人組みに愛娘が
陵辱されており腰を抜かす。吐く。うろたえる。
えっ。これで許しちゃうの？？こりゃ許せへんで・・・と思って見て
いると、スガノが帰宅。父は背後から包丁でブスリ。前知識からすると
意外な展開ながら、しかたがない展開とも言える。最愛の人を殺され、
殺されたところを見さされ、その犯人が目の前にいるとなれば、誰でも
ありうる行動ではないだろうか。ここは少年法とは関係なく"復讐"の
意味合いが強いように思った。大人でも死刑になるとは限らないだろう。
映画では、父・長峰が手紙で殺害を告白している。だが、次のシーンは
別の可能性を暗示している。
パシリの中井が、スガノの部屋に入ってくる。散らかった部屋の床に
倒れているスガノ。私の目には、ここでスガノが動いたように見えた。
つまり、まだ息はあったと。中井は『なんだ、もってるんじゃないか』
とつぶやきながら、死体越しのDVD？ゲームソフト？に手を伸ばす。
このとき一緒に折りたたみナイフを手にしたような、もとから持って
いたような・・記憶は、はっきりしない。だが、この場におよんで、
死体より物の方に目いくという感覚に驚かされる。さらに死体を足蹴に
するような感じで次のシーンへと移る。
検死官がでてくるかと予想したが、それはなく。警察は指紋から
殺害者を長峰と裏付ける。はたして、そうか？いままで二人の陵辱の
手伝いをさされてきた中井が相当に病んでることを示すためのシーン
ともとれるが、とどめを刺したのは中井という可能性を残したのだと
考えました。これだと長峰は人を殺していないことになります。
【中盤】
長峰は、警察にトモザキを殺したことを手紙で知らせるとともに
もうひとりの少年スガノを追って雪のなかを歩いてゆく。
このあたり、突っ込みどころ満載。かなり無理のある展開のように
思えるのだが・・・。それに輪をかけるように、私、実は聞き間違えを
しておりました。長峰はトモザキを刺すときにスガノの居場所を
「長野のペンション」と聞き出していたのですが、私はこれを「中野の
ペンション」と聞き違えたために、最初は東京の中野にペンションって
あるのかなあ？そのあとは、看板とか電話帳とかインターネットで
まず「中野」で調べたほうがよくないのかなあ・・・と思いながら見て
おりました。そしたら、どうも一軒一軒歩いて捜しているようで、
そりゃないでしょう。しかも、警察がペンションを見つけたときに
近くにいるわけですから、ありえねーっ、と思います。
でも、まあこの監督結構大事なところを省略するようですから、
携帯電話はヤミで手に入れて、パシリ中井と織部刑事(竹之内豊)から
映画では見えないところでも情報仕入れたりやりとりをしていた
ということにしておきましょう。
【終盤のクライマックス】
なぜか川崎駅前。歩道橋の上の中井。警察は時間が十分あったにも
かかわらずマイクも持たせず。おまけに信号の変わり際にダッシュされ
中井に振り切られてしまう失態。場所は、川崎シネチッタヘ。あ～、
そこで見てたら盛り上がっただろうなあ。そしてトモザキと遭遇するも
約束した１０万円ではなく、ナイフを取り出す。あのスガノにとどめを
さしたかもしれない折りたたみ式。しかし、トモザキは振り払って逃走、
追ってくる刑事たち・・・。と、ここで真打長峰登場。長野でペンション
のオヤジさんからもらった猟銃を構えてトモザキの前に立ちはだかる。
おびえるトモザキの襟首をつまんで、『私は、最愛の娘を－』と迫力の
演説。三島由紀夫の最期を思い出しました。
一方追いついた１０人ぐらいの刑事達。上司に発砲の許可をとって
全員カメラにおさまるように固まってピストルを長峰に向ける。まわりの
野次馬は騒然と言いたい所であるが、実際には映画のロケをみている感じ。
そこへ『待って下さ～い』と走りこんでくる織部。えっ！撃たれるの？と
一瞬思ったが両手を広げて銃口を向ける他の刑事達を制止。
演説が終わり、極みに達した長峰がうなり声を上げたところで
「バーン！」後ろ向けに倒れる長峰。ゆっくりと銃をおろす真野刑事
(伊東四朗)。アスファイルに倒れ、トモザキの襟首をつかんだままの長峰。
だが目は焦点がさだまらず、表情はもぬけのから、ほんの数秒だったの
だろうがとてもながく感じられる間、長峰のアップ。暗転。
真野刑事は、長峰の銃には弾丸がはいってないかもしれないと考えて
いたかもしれない、だが警察としては万一公衆の目前で何もせず市民が
市民を殺すのを見過ごすことはできない。撃ち損じるリスクはあるが、
それを避けるには長峰のど真ん中を狙い、少なくともその場で殺され
ようと見える側を守らなくてはならない。と考えたか？
それとももっと別の理由からか？真野刑事は既に、長峰の動きから警察
内に密告者がいて、それは自分の部下綾部であるとも把握している。
長峰が生きている限り、それはいつ明るみになるとも限らない。それは、
警察としても、自分としてもどうしても避けたいことだ。だから長峰は、
闇に葬らねばならない。織部と長峰の関係と共に。長峰の銃に玉が
なかったことも一緒に。警察が、警察を守るために。
【ラスト】
二人の裁判官が、ゆっくりと階段を上ってゆく。法廷の傍聴席には、
織部刑事。長峰の変わりに、少年の裁判を見届けようとしているのか。
そこに真野刑事がモノローグのように織部に語りかける声がかぶさる。
『長峰の銃には玉は、はいってなかったそうだ。裁判の判決は
どうなるか知らんがね。』まるで、人ごとのような口ぶり。
私は、警察が裁かるシーンになればいいのにと思っていました。
銃の使用が適切だったかどうか？発砲前に語りかけられなかったのか？
今回の場合は、川崎にトモザキがくるまでに十分時間があったはず。
鉄砲以外の手はなかったのか？
実用化されているのかどうかわからないですが、あるハリウッド
映画(※タイトルはネタバレになるので後述)では、ゴム？の玉を使って
撃たれた人は吹っ飛ぶけれど、命は落とすことはないという手法が
使われていました。こういうことできないのでしょうかねえ。
【教訓】
はっきりしない描写が多いと書いてきましたが、はっきりとしている
こともありました。長峰の二人の少年に対して行ったことの違いです。
最初の少年とあったときは、ビデオを見た後にどれくらいの時間が
あったかは、わかりませんが、包丁で刺しました。このことを警察への
手紙のなかで「トモザキアツヤを殺し、恨みが晴れたのかと問われ
ますと、もし何もしなければ悔いが残ることになったことだけは
確かだと思います」と書いています。ここで既に"殺さなければ"とは
かかずに、"何もしなければ"と書いているところに、殺したことが
良かったのか、別の方法があったのではないかと考えていることを
示しています。そして、最後の川崎では銃に玉はなし。妻を亡くし、
ただひとりの肉親を、最悪の方法で失った長峰が、死刑判決を受ける
ことがない少年に対して、或る程度の時間をかけて考えたの後に
たどり着いた結論が、殺さないことであったということは、
重く受け止めたいと感じました。
ネタバレの映画タイトル
※フォーン・ブース コリン・ファレル主演
さまよう刃
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