凡凡「趣味の玉手箱」

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中国の一妻多夫制

2006-02-05 20:33:50 | 読書備忘録
三年前に雲南省のツアーに参加したとき、ガイドさんから中国に通い婚の風習が残っているという話を聞いた事を思い出した。なぜ、一妻多夫制を取り上げたかと言えば「中国文化故事物語」という本の中にこのテーマを見いだしたからである。

雲南省と四川省の境にある瀘沽(ろこ)湖の畔に住む魔梭(まひ)族が母系制社会を保って生活しているという。女性は母親と住み、男性が夜ともなると、女性の家に通い、翌朝、男性は急いで母の家に戻るのである。戻った男は母の家で是まで通りに労働に精を出す。このような形で結ばれた男女を互いに「阿注(あちゅう)」と呼ぶ。魔梭族のコトバで阿注とは友人という意味。阿注式の婚姻のことを人々は「走婚制」といい、日本の昔の「通い婚」に似ている。

男性は夜、言っても良いかという合図に砂利を女性の寝室に投げるのだという(砂利だなんてロマンチックじゃないね、花とか投げないのかね)OKの合図が何であるかについてこの本では触れていないが、女性の阿注の許可を得て、男性は阿注と一夜をともにする。

阿注関係は長くて何10年、短い場合は1~2年かそれよりも短いという具合に安定性も低い。同じ人物が同時に臨時的な阿注を作っても差し支えなく、一生の内に一人の阿注しか持たない人はごく一部でしかない。魔梭族の阿注の平均数は約6~7人で、多い人は何十人、何百人に及ぶと言うから大変なものである。

魔梭族の緩やかな婚姻関係には、自由が十分に認められていて、男女間の別離も気楽に片付けられる。離婚についても現代人が示すようなうるさい反応は絶対に見せない。要するに自由恋愛の制度が残っていると言うことだ。女性天国と言うが、男性にとっても結婚に拘束されないことから天国に近いのではないだろうか。

中国人の著者二人は、最後に次のように結んでいる。

「チャンスを失ってはならない。もう、待つ時間はあまりないのである。もし、あなたも原始人類の足跡を辿ってみたいのなら、さあ一刻も早く、出発しよう。心ある瀘沽湖が世界中の人々を誘っている・・・“女性天国をまわってみないか”と」

この本が書かれたのが、1990年。さてさて、はたして「阿注」は残っているだろうか?

書名:中国文化故事物語
著者:王矛、王敏
発行所:原書房
発行:1990年9月22日


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