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明眸皓歯

2007-06-01 21:21:32 | 中国のことわざ
中国のことわざ-284 明眸皓歯(めいぼうこうし)


難しい四字熟語ですが、ワープロで打てば一発で出るのですね。


広辞苑では「澄んだ瞳と白い歯。美人の形容に言う」とあります。
杜甫が楊貴妃を形容した詩句から出てきたものです。
杜甫は中国を代表する詩人ですが、科挙に合格できなくて、そのために高位高官に登ることができませんでした。しかしそれが幸いしたのでしょう、安禄山の乱で捕らえられたときも、小物だと言うことですぐに釈放されました。詩聖といわれた人ですから、相当の能力はあったのでしょう。もしも杜甫が科挙に合格していれば、“国破れて山河あり”で始まる「春望」などの名句は生まれなかったかも知れません。


杜甫は玄宗の離宮があった曲江に足を向けました。そこで読んだのが七言古詩「哀江頭」です。まずは冒頭四句。

少陵の野老 声を呑んで哭す
春日潜行す 曲江の曲
江頭の宮殿 千門を鎖し
細柳新蒲 誰が為に緑なる

春の一日、玄宗の栄華をしのぶために曲江を訪れたが、そのあまりの変わり様に涙が出た。賊中にあっては、その目や耳がはばかられるので、身をひそめてゆき、泣くにも声を呑まなければならない。今はなんと離宮の宮殿のあまたの門も閉ざされている。春たけなわ、柳も蒲も新緑をつけているが、もうそれを愛でるべき人もいない、

少陵の野老とは杜甫のことで、誰が為は玄宗と楊貴妃です。


第13句から4句は詠います。
明眸皓歯 今何にか在る
血汚の游魂 帰るを得ず
清渭東流して剣閣深し
去住彼此 消息無し

あの明眸皓歯の楊貴妃は今どこにいるというのか。
血に汚された御魂はあてもなくさまようて、ここに帰ることもできないのだ。
渭水は相変わらず長安の北を流れているが、玄宗皇帝は、けわしい剣閣のかなた遠い蜀の国におられる。
二人は今や互いに遠く離れ消息もつかないでいるのだ。

時に757年、楊貴妃は既に、一命を果てていました。
全編、憂愁に閉ざされた詩ですね。
それだけに明眸皓歯がひときわ輝いていると田川さんは書かれています。


出典:広辞苑、田川純三著、中国名言・故事(歴史篇)、日本放送出版協会、1990年6月20日発行



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