Dying Message

僕が最期に伝えたかったこと……

道のり=速度×時間

2015-08-31 21:43:34 | Weblog
 きっと何年も前から覚悟を決めていたはずなのに。去りゆく夏の背中を追うように僕の青春が幕を下ろす。

 子供の頃、思い描いた大人にはなれなかった。年相応の地位や名誉、知性に品性。そんな一切のアクセサリーを身に付けることのできぬまま、気付けばついに30才になってしまった。無垢な夢は夜に咲く花と消え、僕はほんの些細な希望を抱くことすら許されぬお年頃なのか。それでいて突き付けられた現実からも目を背け、三十路を迎えたこの今にさえも本当の自分を見つけられずにいる。

 バルコニーで暮らす君に今もあの日の姿を探してる。自分のことだけで汲々だった10代、人の温もりを知った20代。こうして僕はまたひとつ大人になって、ふたつ大人になって、それが本当にいいことなのかなんて悩みつつ、まだまだ若くありたいはずなのに、ひまわりの枯れた数だけ年を取って、時に後ろを振り返りながら、迷って惑って、この物語はいつになったら終わるのか。

 今日がこんなにも切ないのはなぜなのか。今昔問わず川はせせらぎ草木は萌ゆるから、あたかも自分だけが変わり果ててしまったようで。足繁く通った駄菓子屋がファミマに建て替わるから、あたかも自分だけが取り残されてしまったようで。零れくる涙をワイングラスに浮かべ、都会のネオンに身を寄せる頃、いくつもの奇跡が重なって、いつしか僕は鬼籍に入るのだろう。

 時は流れ、月日はどれだけ巡れども、男は誰も不条理をぶら下げ、女は誰もそんな男を受け容れる抜け穴を持っている。こうしてまたひとつ新しい生命は芽吹き、代わりにまたひとり誰かが死んでゆく。終わりなき無限のサイクルに巻き込まれながら、人は誰もやがて無に帰す今日と熱き接吻を交わすのだろう。


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