雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

身分社会

2014-09-15 11:00:48 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
     枕草子 ちょっと一息

身分社会

清少納言が生きた平安時代は、厳しい身分社会でした。

清少納言が宮仕えをした頃は、京都に都が築かれてすでに二百年が経ち、平安朝文化の真っただ中にあり、藤原氏の権力が盤石のものになっていました。まだ、武士権力は登場しておらず、摂関家を頂点とした公家権力の絶頂期でもありました。
清少納言が敬愛してやまない中宮定子は、関白道隆を父に持ち平安王朝の頂点に位置しておりました。

一方、清少納言は清原氏の出生です。
血統を遠く辿れば、天武天皇にもつながる名門とはいえ、藤原氏の天下にあっては、影の薄い一族であったことは否定できません。父の元輔は歌人としては著名であったとしても、八十三歳で亡くなっ時の官位は、従五位上で肥後守でした。
清少納言はこの時二十五歳の頃とされています。肥後守の娘ですから、れっきとした貴族の一員とはいえ、宮仕えの中で接する若い殿上人や上達部とは、とても比較にもならない身分差があったといえます。また、最初の結婚相手とされる橘則光も最高地位が従四位下で陸奥守ですから、父より若干上とはいえ、ともに受領クラスといえます。

清少納言は、中下級貴族の出身という身分にあり、殿上人・君達・上達部や、さらには天皇・中宮や皇族につながる人たち、同時に自分より身分が低い女官たちや、一般庶民たちをどのように見つめ、どのように私たちに伝えてくれているのか、これも、枕草子を読むうえで興味深い視点といえます。
但し、身分の低いものに対して厳しい差別を感じさせる表現も少なくありませんが、それは決して清少納言という女性の本質ではなく、身分社会という文化にあっては正常な感性とされている点は考慮すべきだと思います。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« みんな仲良く ・ 心の花園 ... | トップ | 苦しげなるもの »

コメントを投稿

『枕草子』 清少納言さまからの贈り物」カテゴリの最新記事