雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

女ひとり住むところは、

2014-08-23 11:00:34 | 『枕草子』 清少納言さまからの贈り物
          枕草子 第百七十一段  女ひとり住むところは

女ひとり住むところは、いたくあばれて、築土(ツイヒヂ)などもまたからず、池などあるところも、水草ゐ、庭なども、蓬に茂りなどこそせねども、ところどころ、砂子の中より青き草うち見え、淋しげなるこそ、あはれなれ。
ものかしこげに、なだらかに修理(スリ)して、門(カド)いたく固め、きはぎはしきは、いとうたてこそおぼゆれ。


女が一人で住んでいる所は、ひどく荒れ果てていて、土塀なども完全でなく、池などがある所も、水草が生え、庭なども、蓬がぼうぼうと生えているいうほどではなくても、所々、砂の中から青い草が見えて、淋しげな様子なのが、風情があるのです。
いかにもしっかり者のように、体裁よく手入れがされ、戸締りもいかめしく、几帳面に整えられているのは、とても不愉快な感じがするものですよ。



女が一人住むといっても、少納言さまと同等クラスの女性をイメージしていると思われますので、若干の下女や下男は雇っていると考えられます。
その上でなお、一人暮らしの女は、少し油断があり、同情されるような部分のある方が良い、ということなのでしょうね。
これは、少納言さまの処世術なのか、若い人へのアドバイスなのか、きっと、その両方なのでしょうね。

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