夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『陽だまりの彼女』

2013年11月01日 | 映画(は行)
『陽だまりの彼女』
監督:三木孝浩
出演:松本潤,上野樹里,玉山鉄二,大倉孝二,谷村美月,菅田将暉,小籔千豊,
   西田尚美,とよた真帆,木内みどり,塩見三省,夏木マリ他

TOHOシネマズ梅田にて。
たぶん、いまから勢いで全部しゃべってしまうことになると思うので、
観に行くご予定のある方はネタバレ全開にご注意ください。

越谷オサムは『階段途中のビッグ・ノイズ』を読んで以来、お気に入りの作家です。
デビュー作の『ボーナス・トラック』はまぁまぁ、『金曜日のバカ』はかなり好き。
で、本作も公開前に読んでおこうと、今月に入ってから読みました。そうしたら……。

映画も本も、ストライクゾーンは相当広いと自負しています。
読書メモとして愛用している“ソーシャルライブラリー”では、
個人的な目安として、5点満点で3点が普通、3.5点はわりと面白い、4点はかなり面白い、
4.5点になるとめちゃくちゃ面白い、5点は面白い+誰が何と言おうと好き。
私の場合、5点を付けるほど好きなものは非常に少ないですが、4点はやたらと多い。
しかし、この原作には腹立たしさすらおぼえて2.5点。
過去に2.5点を付けたのは若竹七海の『クール・キャンディ』ぐらいです。

そんな状況だったので、映画を観るのはやめておくつもりでした。
んが、ちまたで見かけるレビューの評価がやたら高い。
原作とはかなり趣がちがっているという書き込みも見て、
ホンマやろなと訝りながら期待を込めて観に行きました。

……ムリッ!(T_T)

天下の松潤ですから、あらすじは要らんかと思いますが、一応書いておくと。

交通広告代理店の新人営業マン、奥田浩介は、
新規のクライアントであるランジェリーメーカーとの初打ち合わせへ。
その席で中学時代の同級生、渡会真緒とまさかの再会。

当時、転校生だった真緒は勉強が大の苦手、そのうえ天然だったものだから、
ボス的存在の女子からいじめの標的にされる。
いじめられていることすらわかっていない真緒を浩介はかばい、
と同時に浩介も同級生らから遠ざけられるようになる。
それゆえ、浩介と真緒はいつも一緒にいた。

しかし、今度は浩介が転校することに。
泣きじゃくる真緒に素っ気なくかわして別れ、それっきり。
10年ぶりに会う真緒は美しく成長し、仕事もできる女性に。
再び恋に落ちたふたりは駆け落ち同然で結婚、幸せな日々を送るのだが……。

実は真緒は「猫」でした。というオチ。
浩介が少年時代に助けた子猫が、浩介に会いたい一心で人間に生まれ変わることを切望。
で、浩介を探し当てて会いに来たのが中学時代だったわけですね。
人間じゃなかったから、それまでの人間としての記憶はもちろんない。
記憶喪失児童として扱われた真緒は、ある警察官夫婦の養女となります。

世間の評価が高く、中には「これで感動できない人は人間として歪んでいる」との書き込みまで。
そ、そこまで言われなきゃなりませんかと、ちょっと凹む。(^^;
これだけ落涙レベルの低い私が、どうして本作では一滴の涙も出ないのかと考えてみました。

原作は、浩介が真緒との生活を義父に赤裸々に語るシーンなどもあり、
ちょっとキショいなぁと思ったりもしました。
これまでの越谷オサム作品の主人公と似たキャラが、なぜか本作では受け入れがたく。

けれど、映画版の松潤はもちろんカッコよくかわいらしく、キャラに問題はありません。
「実は何々でした」というオチも嫌いではありません。
実際、道尾秀介の『向日葵の咲かない夏』などは「マジで?」と苦笑いはしたものの、嫌ではなく。

猫だったけど、助けてくれた男の子を好きになり、
会いたい一心で人間に生まれ変わった。
そうして、人間としての苦しさ切なさも感じて猫の寿命を全うする。
いつかまた彼に会うために人間になるよ。

猫好きですもの、こうして書けば嫌いな話じゃないはず。
なのにどうしてこうも受け入れられなかったのかと考えれば、
彼女が他界した瞬間、彼女が関わったすべての人が彼女のことを忘れてしまう点なのかも。
全部なかったことになるならば、彼女の人生もそうだけど、
彼女と過ごしたあの日々はなんだったの。
彼女がいなかったことになるあの日々を、周囲の人はどんなふうに思い出すの。

なかったことにしても、無意識のうちに残っている。
映画のラストはそういう表現だったかと思いますが、
私としてはすべてなかったことにというのは受け入れられません。

すべて起こったことだから、人はそれを受け入れて生きてゆく。
と思うんですけど。ちゃうか!?

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 日本語が正しくない。〈『グ... | トップ | 『オゾンビ』 »

映画(は行)」カテゴリの最新記事