『ファースト・カウ』(原題:First Cow)
監督:ケリー・ライカート
出演:ジョン・マガロ,オライオン・リー,トビー・ジョーンズ,ユエン・ブレムナー,
スコット・シェパード,ゲイリー・ファーマー,リリー・グラッドストーン他
シネ・リーブル梅田にて5本ハシゴの4本目。
ケリー・ライカート監督のことはコロナ禍で劇場も時短営業中だった頃に知りました。
シネ・ヌーヴォまで足を運ぶことはほぼないから、そのときが懐かしい。
ライカート監督はインディーズ作品の映像作家として高い評価を受けている人のうちのひとりで、
本作は長編7作目にして、日本では初のロードショー公開作となるそうです。
19世紀後半、西部開拓時代のオレゴン。
食材を見つけられないものだから、仲間から「使えない奴」扱いを受けている。
ある日、食材を求めて森の中をうろついていた折、茂みに隠れていた男と遭遇。
男は中国人移民のキング・ルーと名乗り、誤ってロシア人を殺してしまったせいで追われていると言う。
クッキーは全裸のルーに着るものをあてがい、仲間の目をそらして眠る場所も提供。
夢を語り意気投合するふたりだったが、ずっと匿えるはずもなく、隙を見てルーは逃げる。
その後、先住民が暮らす町へたどり着くとチームは解散。
次の仕事にはありつけずに弱り果てていたクッキーはルーと再会する。
森の奥の小屋でひとり暮らしていたルーのところに転がり込むクッキー。
いずれは旨い料理を出すホテルかベーカリーを持ちたいと思っているクッキー。
実は腕の良い料理人の彼が「材料さえあれば」とつぶやいたところ、
最近この地に初めて乳牛が運ばれてきたことをルーが思い出す。
仲買人の屋敷の表に夜は繋がれている牛。クッキーには搾乳はお手の物。
ふたりは夜中にその場へ出向くと、ルーが見張り、クッキーは牛に優しく話しかけながら搾乳。
そのミルクを用いてドーナツを作って売りはじめたところ、たちまち評判になる。
噂を聞きつけた仲買人もやってきて賞味し、その美味しさに目を見張り、
ぜひ屋敷に来て客人にクラフティを作ってほしいと言うのだが……。
アメリカンドリームを願いましたが、そうはならない。
欲をかいてここぞというときを見誤り、ミルク泥棒がバレてしまいます。
でも、何もかも違うふたりが出会って、最後まで裏切らないところが切なくて好きです。
再会後にルーがクッキーを家に誘うときの台詞も好き。
遠慮がちなクッキーに対して、ストレートに泊まるところを提供するとは言わず、
「家に酒がある。飲むのを手伝ってくれないか」と言うんですよね。
バレた後も、貯めた金を持って逃げることがどちらも可能だったはずなのにそうしない。
逃げて、戻ってきて、相手を待つ。夢を持ったままふたり一緒に。
って書いていたら泣きそうになってきた。(^^;
「何これ」と思う人もいるかもしれませんけれど、私はかなり好き。