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『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

2023年10月30日 | 映画(か行)
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』(原題:Killers of the Flower Moon)
監督:永江二朗
出演:レオナルド・ディカプリオ,ロバート・デ・ニーロ,リリー・グラッドストーン,ジェシー・プレモンス,
   タントゥー・カーディナル,ルイス・キャンセルミ,ジェイソン・イズベル,ブレンダン・フレイザー他
 
イオンシネマ茨木にて、前述の『北極百貨店のコンシェルジュさん』の次に。
 
上映時間なんと206分。長尺当たり前のボリウッド作品よりさらに長い。ずっと長い。
数日前に風邪をひいて寝込んでいた病み上がりの私が、はたして睡魔に襲われずにいられるのか。
眠くなったらなったでいいやと思っていましたが、ただの1秒も眠くならず。
 
原作は2017年に出版されたデイヴィッド・グランの『花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』。
1920年代初頭、オクラホマ州のオセージ族の居留地石油資源が発見された後、
オセージ族が次々と殺された連続殺人事件を調査したノンフィクションなのだそうです。
 
帰還兵のアーネスト・バークハートは、叔父のウィリアム・ヘイルを頼ってオクラホマへと移り住む。
ウィリアムは地元の有力者で、周囲の人々に自ら“キング”と呼ばせている。
オセージ族のために学校や病院を建設するなどして、多大な貢献が認められているのだ。
 
オセージ族はもともと住んでいた土地から政府によって何度も追い出された先住民だが、
最終的にたどり着いたオクラホマに居を構えたところ、そこから石油が出て一躍資産家に。
屋敷に住み、高級車を買い、メイドや運転手を雇うようになったオセージ族の町へ、
仕事を求めて多くの白人が押し寄せるようになった経緯がある。
 
アーネストもウィリアムの口利きで流しの運転手を始めたところ、
常連客となったのがオセージ族の女性モリー・カイル。
それを聞いてウィリアムは目を輝かせ、アーネストに結婚までこぎつけるようにけしかける。
オセージ族は寿命が50歳と言われており、モリーが死ねば彼女の受益権はアーネストと子どもたちに移る。
そうすればウィリアムたち一族も生涯繁栄することになるからだ。
 
話に納得はしたものの、モリーのことは心から愛しているアーネスト。
しかし、ウィリアムに命じられると、殺しを適切な者に指示しなければならない。
やがて、モリーの姉妹も死に、ついにはFBIの捜査が町に及ぶのだが……。
 
中年になって、ぽっちゃりと太って、美しいとは言いがたいディカプリオを見ると、
『タイタニック』(1997)の美形ぶりが思い出されはしますが、とにかく上手い。
どう見ても阿呆で、ウィリアムに良いように使われていることは明らかなのに、
そのことに気づきもせず、自分が妻に薬を盛らされていてもわからない。
こんなにも浅はかで憐れな彼の姿を見られるとは思いませんでした。凄い。
 
本当に自分のしていることに気づいていなかったのに、妻に見放された瞬間はちょっと気の毒。
でも妻の姉妹が死んでしまったのは彼のせいでもあるのですから仕方ないか。
 
『ザ・ホエール』で役作りのために太りに太ったブレンダン・フレイザーが
少しは痩せたかなという姿でウィリアムの弁護士として出演。これがまた悪い。
 
カネを見ると悪いことを考える奴が多いものですね。
町に溶け込み、善人を装い続けたウィリアムがいちばん恐ろしいですが、
彼から恩恵を受けていた人々には良心の呵責がないのか。
 
あまりに長尺なので人に鑑賞を勧めづらい作品ではありますが、
このディカプリオの快演は観ておきたい。笑顔は野卑ていて、声までも下品だから。
だけどなんだか可哀想になってくるのもディカプリオゆえか。
 
ところで本作ではFBI初代長官ジョン・エドガー・フーヴァーが事件解決へと導いたわけですが、
『J・エドガー』(2011)ではまさにその人役をディカプリオが演じているって、粋だわ。

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