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映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『銀の匙 Silver Spoon』

2014年03月11日 | 映画(か行)
『銀の匙 Silver Spoon』
監督:吉田恵輔
出演:中島健人,広瀬アリス,市川知宏,黒木華,上島竜兵,吹石一恵,
   西田尚美,吹越満,哀川翔,竹内力,石橋蓮司,中村獅童他

封切り日、ダンナが新入社員の歓迎会に出席のため、
私は晩ごはんの支度から放免されて、仕事帰りに109シネマズ箕面へ。
急な飲み会とちがって前もってわかっていたので、同劇場で前売り券を購入済み。
特典の牛乳パック型消しゴムがカワイイ。

監督デビュー作の『机のなかみ』(2006)がとてもよかった吉田恵輔監督。
昨年公開された監督作2本は劇場で観られず、DVD待ちですが、
『純喫茶磯辺』(2008)といい、『さんかく』(2010)といい、なんともいえない間(ま)が好きです。

有名進学校に中学受験して入ったものの、成績は悲惨。
このまま高校に上がるのは無理だとわかった八軒(はちけん)勇吾。
よりによって担任から勇吾に合っていると勧められたのは農業高校。
父親は「何のために中学受験させたのかわからない」と憤り、
「今後おまえにはいっさい期待しない」と冷たく言い放つ。

勇吾が入学したのは大蝦夷農業高校、通称エゾノー。
生徒の大半は実家が農家で、家を継ぐという明確な目標を掲げているなか、
夢は何かと問われても、勇吾には答えることができない。
この高校を選んだ理由は、単に全寮制で親と離れられるから。

酪農学科の生徒たちは、そんな勇吾に「酪農をナメんなよ」と言いつつも、
同級生としてなんだかんだと親しげにかまってくる。
御影アキもそのひとりで、可愛い彼女に声をかけられると悪い気はしない。
彼女から馬術部に誘われて、なんとなく入部してしまう。
ただでさえ牛の世話で早起きの酪農学科だったが、
馬術部に入ると馬の世話が加わって、毎朝4時起きの生活に。

生まれたばかりの子豚を愛おしげに眺め、名付けようとする勇吾に、
先生も同級生も「数カ月後には食肉として売られて豚丼になる身、愛着は持つな」と言う。
そう簡単に割り切れない勇吾は、子豚を“豚丼”と呼ぶことにするのだが……。

過去の作品では間が好きだった吉田監督作品ですが、
本作はちょっと間延びしている感じで、笑いもすべり気味。
そんななか、アキの父親役の竹内力はさすがです(笑)。

すべり気味とはいうものの、農家を取り巻く実情が提示され、
酪農に関わる生徒たちの懸命さはスポ根的で、熱くなります。

豚を解体するシーンは、もしも『ある精肉店のはなし』を観ていなかったら、
もっとグロテスクなものに映ったかもしれません。
勇吾が豚肉を食べることに躊躇したとき、
同級生が言う「いつもは何も考えずに食べているくせに、
気が向いたときだけ感傷的になってるんじゃねぇよ」てな感じの台詞には、
『ある精肉店のはなし』の北出さんの言葉を思い出しました。

わかったふりをして済ませたくない。
そう話す勇吾が豚丼との別れを納得したうえでの行動には拍手。
まさに、命、いただきます。

夢がないことは何にでもなれるということ。そう悪いことではない。
逃げたと言っても、逃げた先で出会ったものは悪いものばかりじゃなかっただろ。
中村獅童演じる中島先生のその台詞もGOOD。

世界で唯一の曵き馬競争“ばんえい競馬”がめちゃ面白いのでご覧ください。
「ただの馬鹿」呼ばわりされた黒木華ちゃんにもご注目。結局彼女に泣かされたがな。

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