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『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』

2022年03月20日 | 映画(は行)
『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』(原題:The Half of It)
監督:アリス・ウー
出演:リーア・ルイス,ダニエル・ディーマー,アレクシス・ルミール,エンリケ・ムルシアーノ,
   ウォルフガング・ノヴォグラッツ,ベッキー・アン・ベイカー,コリン・チョウ他
 
仕事帰りにシュッと行けるシネコンでは“仮面ライダー”しか観るものがない。
このさい観に行ってもいいのですけれど、いつ行っても割引なしなのは何故だ!?
1,600円出す気にはなれなくてまっすぐ帰宅。Netflix頼みの日々。
 
2020年のアメリカ作品。同年5月に配信が開始されました。
中国系アメリカ人であるアリス・ウー監督が15年ぶりに撮った本作は、
私の好きな作品とのマッチ度が95%を超えているらしい。
だけど、あらすじを読めばありきたりのストーリーで、
モテなくて賢そうな女子の画像にも惹かれるものなくスルーしてきました。
それでもあまりに目につくから観てみたら、なんだよモロ好みじゃあないか(笑)。
 
もとはトライベッカ映画祭で上映される予定だったそうです。
ロバート・デ・ニーロやプロデューサーのジェーン・ローゼンタールが始めた映画祭。
コロナのせいで映画祭自体が無期延期となっています。残念ですねぇ。
 
「ハーフ・オブ・イット(The Half of It)」の意味は冒頭でわかります。
かつて人類はシャム双生児のごとく2人がくっついて生まれたが、
幸せすぎる2人を心配した神が1人ずつに分けた。
人は半身を探し続けている、そんな話だったと思います。
 
スクアハミッシュという小さな町に父親と二人暮らしの高校生エリー・チュウ。
頭脳明晰で、特に文章を書く力が飛び抜けている彼女は、
同級生たちから数十ドルで課題の代筆等を請け負っているが、友人はいない。
地味で冴えない彼女に心ない言葉を投げかける者もいる。
 
ある日、弱小アメフト部の万年補欠部員ポール・マンスキーから呼び止められ、
学校のマドンナであるアスター・フローレスへの手紙を代筆してほしいと言われる。
実はアスターこそエリーの想い人。
彼女に宛てるラブレターの代筆なんてまっぴらごめんだとエリーは思うが、
ポールに懇願されて割増料金で引き受けることになるのだが……。
 
エリーは中国人で、父親の仕事の都合でアメリカにやってきました。
優秀なエンジニアの父親は博士号も持ち、鉄道のシステム設計に関わるはずでした。
しかし英語がどうにも苦手だったことから何もかも上手く行かなくなり、
今は列車の分岐器近くに居を構え、日に2回の切り換えだけが仕事。
母親が亡くなってからはすっかり隠居して、切り換えもエリーが担当。
父親はもっぱらソファに座ってテレビを観ています。
 
そんなエリーのことを意地悪な同級生男子たちは鉄道オタクと馬鹿にし、
女子たちも彼女に近づこうとはしません。宿題の代筆は頼むくせに。
 
でも、少なからず彼女の資質を見抜いている人もいます。
女性教諭のヘゼルスハップは、生徒たちが提出した課題の回答を見て、
エリーが誰の代筆をしたかをきっちり当てる。
「これを読んで5つもの解釈ができるなんて素晴らしいわ」なんて調子。
町を出て一流の大学へ行くことを勧めますが、エリーは父親を残してなんて出て行けない。
「先生だって、結局この町に戻ってきたじゃないですか」と言われて、先生苦笑い。
 
アスターに恋い焦がれるポールも、アスターの恋人で人気者のトリッグも、
どちらもエリーが自分に気があるのではと思うところが阿呆です(笑)。
まさか彼女の片想いの相手がアスターのほうだとは夢にも思わないんですねぇ。
 
自分の想いを抑えて好きな相手にラブレターを書くところは『シラノ』と同じ。
でも現代版シラノともいえる本作は瑞々しくて本当によかった。
エリーのことを純粋に応援したくなります。「山場」は今から来る。

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