夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』

2018年05月21日 | 映画(は行)
『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(原題:The Florida Project)
監督:ショーン・ベイカー
出演:ウィレム・デフォー,ブルックリン・キンバリー・プリンス,ブリア・ヴィネイト,
   ヴァレリア・コット,クリストファー・リヴェラ,ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ他

TOHOシネマズくずはモールで4本ハシゴした翌日。

午前中に映画を1本観てから谷町六丁目のギャラリーへ、
素敵なクラフト作家さんの素敵な個展を見に行く予定。
全行程電車のつもりが、朝から強めの雨が降っている。
駅まで歩くのが億劫になり、いろいろ算段して車で谷六へ。
ギャラリーのすぐ近くのタイムズに駐めて、地下鉄谷町線で東梅田へ。
ほぼ10時に梅田に着いたので、30分ほど阪急百貨店をうろうろと。
その後、梅田ブルク7でムビチケ購入済みだった本作を鑑賞。
ちなみに、映画終了後は地下鉄で谷六へ戻り、
雨の似合うギャラリーで個展を楽しませていただいてから、
車で箕面へ帰りました。完璧なスケジュール(笑)。

太陽が照りつけるフロリダ、夢の国“ウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート”のすぐ隣。
まぶしい色彩の中に描かれるのは、過酷な現実に生きる子どもたち。
明るいけれど明るくない、鑑賞後にものすごく凹む1本でした。

ディズニー・ワールド脇の安モーテルに暮らすシングルマザーのヘイリー。
その娘で6歳のムーニーは、同じモーテルの階上に滞在するスクーティや、
近隣のモーテル住まいの子どもたちと、毎日いたずら三昧。
その日も到着したばかりの新入り家族の車をめがけてツバの飛ばしっこ。
不覚にも見つかって大目玉を喰らうが、その家族の娘ジャンシーと友だちになる。

お人好しの管理人ボビーは、モーテルに居住することは絶対に認めないとしながらも、
ほとんど住人と化した客たちのために奔走している。
しかし取りっぱぐれは勘弁と、客たちから宿泊費を徴収して回る日々。

無職のヘイリーは、バッタものの香水を手に入れると、
ムーニーを連れてリゾートホテルの玄関先をうろつき、カモを見つけては販売。
そんなふうになんとか滞在費の工面をしていたのだが……。

子どもたちの目線で描かれる世界が斬新。
子どもの背の位置でカメラが回るから、子どもの目に映る世界がわかります。

ムーニーやスクーティのいたずらは、時に無邪気を通り越して悪辣。
車にツバを吐きかけるなんてまだ可愛いほうで、
サブプライム住宅ローン危機で手放されたとおぼしき空き家に侵入して放火まで。
大きな火事になったのを見てスクーティは元気をなくすけれど、
ムーニーはそんなこと屁とも思っていない態度です。
顔はめちゃくちゃ可愛いから、天使の顔をした悪魔的な雰囲気も。(^^;

そんなふうにどんなときも明るすぎるほどのムーニーが
初めて自分の感情を見せるとき。これはもう本当につらい。
ムーニー役のブルックリン・キンバリー・プリンスは末恐ろしいほどの演技力。

遠田潤子の『蓮の方程式』という本を読んだばかりだったため、
母親と子どもはどうあるのが幸せなのかを考えさせられました。
だらしない母親であっても、ネグレクト(育児放棄)ではない。
歪な環境で、とても子どもが真っ当に育つとは思えない暮らしぶりだけれど、
わが子に対して確かな愛情を持っていることははたから見てもわかる。

「真夏の魔法」なんてサブタイトルを付けられると、
明るいエンディングが待っているかと期待してしまう。
ディズニーワールドで夢の世界が繰り広げられる隣でこんな現実。
その対比が激烈でなかなか受け入れられそうにありません。
呆然としてしまう後味のなか、思い出すのはウィレム・デフォー演じるボビーの人間臭い温かみ。

記憶に残る凄い作品です。

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