夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『犯罪都市』

2018年05月04日 | 映画(は行)
『犯罪都市』(英題:The Outlaws)
監督:カン・ユンソン
出演:マ・ドンソク,ユン・ゲサン,チョ・ジェユン,チェ・グィファ,
   パク・ジファン,チン・ソンギュ,ホ・ソンテ他

シネマート心斎橋にて3本ハシゴの2本目。
ドイツ作品『女は二度決断する』の次に観た韓国作品。

この日は、本作の次にも韓国作品を観たのですが、
どちらも韓国で実際に起きた事件がモチーフ。2本ともめちゃめちゃよかった。

2004年。
ソウルの衿川(クムチョン)警察、強力班の副班長を務めるマ・ソクトは、
どんな相手であろうと拳ひとつで叩きつぶす最強の刑事。
ヤクザの親分もソクトを見れば逃げ出す始末で、
縄張り争いする毒蛇組とイス組も、ソクトの前では仲良くやらざるを得ない。

そんななか、どこからともなくやってきた三人組が、
毒蛇組の組員のひとりに高利で金を貸し、返済の滞りを理由に組長を呼び出す。
他の組員を引き連れて組長が訪れたところ、
三人組のリーダーとおぼしき男があっさり組長をぶった斬る。

その三人組は、朝鮮系中国マフィアの黒竜組のメンバー。
リーダーのチャン・チェンは毒蛇組を壊滅状態に追い込むと、
次はイス組へとターゲットを変え、両組の収入源を乗っ取り始める。
店を営む住人たちは、今までヤクザに所場代を取られてはいても、
無理を言われたり暴力をふるわれたりすることはなかったのに、
黒竜組が街にやってきてからというもの、恐ろしい目に遭わされる。

そこらじゅうでヤクザとマフィアの殺し合いが勃発し、
事態は日々緊迫の度合いを増してゆく。
危機感を募らせたソクトは、黒竜組の掃討作戦を開始するのだが……。

作品中には「朝鮮族」という言葉が頻繁に出るのですが、
映画のチラシはもちろんのこと、ネットの紹介記事にも「朝鮮族」とはありません。
朝鮮族一大掃討作戦と大きく書くと非難の声があがるのか。

朝鮮族とは、中国に籍を置く朝鮮民族。
映画で描かれた彼らの状況を見ると、ひどく貧しい。
『哀しき獣』(2010)ではその様子に打ちのめされました。

本作に登場するチェンは、金のためなら何でもする冷血漢。
朝鮮族のイメージをそんなふうに植え付けられるのは、
当該の人々にすればたまったものじゃないでしょう。
というわけで、無知な私は作品中で頻発する言葉に戸惑い、
映画開始直後しばらくは、朝鮮族ってどの人たちよと混乱しながら観ました。
混乱しながらも、誰が何族でも関係ないぐらいの面白さ。

実際に朝鮮族掃討作戦は存在したわけですが、
本作はそれをモチーフにしたフィクションだと、最初に明言されています。
チェン役のユン・ゲサンが凄すぎて、まさか彼=朝鮮族だなんて誰も思わない。
この人がアイドルグループに所属していたなんてビックリ。
アイドルをナメちゃいけませんね。

ソクト役のマ・ドンソクも凄かった。
なんて凄い、そして面白い役者なんだ。

こういう作品を観ると、私たちって同じアジア圏の人間なんだなぁと改めて思います。
ハリウッド映画を観ると、向こうの人にはウケるシーンだとしても、
こっちはまったく面白さがわからないシーンがよくありますが、
韓国映画ではスベらない。日本人が観ても大笑いできる。

シリアスな内容なのに、ユーモアにも溢れていて、ふいた箇所がいくつか。
もちろん泣けるシーンもあって、非常に面白い犯罪アクション作品でした。
マ・ドンソクのこんな役、これからも観たいです。

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