minaの官能世界

今までのことは、なかったことにして。これから考えていきます。

NANA2

2007年01月13日 | 映画鑑賞
NANA2の劇場公開が12日までだと聞いて、慌てて観に行くことにした。
観に行った友人からの前評判が今ひとつだったのは、宮あおいちゃんの降板が、微妙に影響しているのかもしれない。原作を読んだ限りでは、あおいちゃんの演じていたハチは、三角関係とかその挙句に妊娠までしてしまってドロドロになる設定だったから、イメージダウンを心配してのことなのだろうか。こういう余計な情報が、ここまで観に行くことを遅らせた原因である。
今回は、いつも観に行く衣山シネマサンシャインじゃなくて、商店街の中にある大街道シネマサンシャインに観に行った。この映画館は衣山シネマサンシャインと比較すると、箱が小さい。80名くらいで一杯になってしまう。その箱に観客は、わたしも含め4名だった。一杯だと落ち着いて鑑賞できないから、わたしとしては悪いことではない。
肝心の内容であるが、原作とはかなり違うように思えた。このストーリーなら、イメージダウンを心配する必要はなかった。同じキャストで製作されていたら、違和感もなかったのにと残念ではある。
しかし、そういうマイナスイメージよりも、市川由衣ちゃんが思いのほか良かったということを云っておきたい。彼女は、見事なくらい一般人を演じていた。

ちょっと野暮ったく見えるようにするのは、もともとそうでない人が演じる場合は相当難しいのではないかと思うのだ。彼女の抜群の演技力のおかげで、わたしは一般人の視点からNANAの世界に自然に感情移入できた。これは、第一作目では感じなかったことだ。わたしにとって、NANA2は、華麗な芸能界に対して一般人が抱いている憧憬を描いた作品のようにも見えたのだ。

☆憧れのスターとの交際って・・・・・・
普通の女の子が、憧れのスターと知り合いになって、ホテルに誘われたらどうするかという設定は、あまりに剥き出しの設定で衝撃的ではあった。演じている彼らは当事者でもある。そういう意味でも、観ていて痛かった。
ハチのことを心配して携帯に電話をしてきたナナに、ホテルに巧と一緒にいることを隠し、女友達の家にいると嘘をつくシーンが一番印象に残っている。
「いまさら、逃げられないし。わたし、期待なんてしていない。ちょっとだけ夢を見させてもらうだけだから」
このセリフに、ハチの不安でたまらない気持ちと乙女心が凝縮されていて、胸が締め付けられた。
ハチは、結婚なんて考えてもいなかったようだ。巧とそうなることを「夢を見させてもらうだけ」と言っている。わたしなんかと巧がつきあってくれるはずがない。巧のたくさんいる女の1人でいい。多分、現実はそうなのだろうけれど、それって夢がない。

☆見所
トラネスの打ち上げパーティの夜。
ナナから、ハチのために巧のサインを頼まれていたレンが、巧にハチ宛のサインを頼むと、巧は冷たく言い放つ。
「彼女には、サインは必要ないさ。もうヤったし」
これに、レンをはじめ、ノブやシンがキレる。
彼らが如何にハチを大切に思っているのかが判って、目頭が熱くなった。
でも、その夜、巧はハチの部屋を訪れる。遊びだと思って、半分諦めていたハチは、涙を流して喜ぶ。
感動的なような、そうでないような中途半端な気持ちになった。
石原真理子さんの書いた暴露本の内容が芸能界の日常風景なら、ファンの女の子をつまみ食いするなんてことはごく当り前のことだと思わざるを得ない。だから、ハチが女たらしの巧にいいように弄ばれているとしか見えなかったからだ。
そのせいか、その後の巧とハチの会話・・・「仕事が忙しいから、なかなか会えない」とか「彼女はいない。いても、俺から連絡できなくて、会えなくて長続きした試しがない」・・・などというのは、彼の言い訳、逃げ口上としか聞こえなかった。それでも、ハチは健気にも「お仕事が一番大切だから、会えなくても平気です。お仕事、頑張ってください」と言う。そんなハチに巧は「君って、本当に可愛いね。俺だけの女でいてくれ」と言うのだが、この言葉は本心なのだろうか。この言葉だけを信じて、ハチは巧を待ち続けることができるのだろうか。

一方、ハチと巧の関係を見せ付けられたナナは、「どうして、わたしの大切なものはみんなトラネスに盗られてしまうの。よりによって、どうして巧なの」と嘆く。ナナは巧の女癖が悪いのを知っていたから、ノブがハチのことを好きなことも知っていたから。
そして、なによりも、ナナは、ハチのこともノブのことも、よく理解していて、この2人が愛し合うのならば、性格も考え方、価値観も一緒だから、とてもうまくいくはずなのに、どうしてそうならないのだろう。その想いがナナを苦しめる。
このへんの葛藤とか心理描写は、実に見応えがあって、わたしはNANAの世界に完璧に嵌まり込んでしまったのであった。

☆流されるハチ
隠しておきたかった巧との関係は、ブラストの仲間全員に知られることとなる。
それでハチに対する気持ちに気がついたノブが、意を決してハチに告白する。
よくあるパターンと言えば身も蓋もないが、こういう時の対処はどうするべきか、ひとつの回答にはなっている。

ハチは連絡をくれない巧のことを諦めて、ノブに乗り換えたのだ。
この決断をどう評価するべきだろうか。
普通は、この決断で正しいと思う。なぜなら、そもそもハチは「ちょっとだけ夢を見させてもらうだけ」と言っている。巧と別れることができたら、俺と付き合ってくれと言ったノブのことを好きになったとしても、少しも非難されることではない。巧と続けていても、どうせたくさんいる女の1人でしかない。それよりは、たった1人の女になりたい。打算というのなら、そうかもしれないけれど、この選択は、みんなに祝福される選択であった。第一、ハチ自身が、ノブと付き合い始めたとたん、自然に生きていけて楽になったと感じているのだ。
それなのに、妊娠が発覚してしまう。子供はもちろん巧の子供だ。
信じられない展開である。
そんなことありえないでしょう。遊ぶつもりだったのなら、いくらなんでも避妊くらいはするはずだ。

それに、巧は、ナナに、パパラッチに気をつけろとアドバイスするくらい繊細な神経をしているのだ。やっぱり変だ。
つまりは、案外、巧も最初から本気だったのか?
仕事で忙しかったのは本当で、女はいなかったのか。
女癖が悪いと思い込んでいたのは、偏見だったのか。
泣き崩れるハチに、巧は、父親を選べと迫る。
正直、わたしには、巧のことが理解できなくなった。
何も言えなくなってしまうノブの方がよほど正常だ。
「他人の女に手を出したのはどちらだ」という巧の言葉は、言われてみればそのとおりで、巧の女であったハチを奪い取った形になったのはノブの方だ。
考えてみれば、ハチがこれほどふらふらしているからいけないのだ。
「20歳にもなって、こんなにふらふらじゃあ、親が泣くよ」という巧の言葉は、きついけれど正しい。

巧は、それが判っていながら、一度は自分の許を去り、ノブのものになったハチを、自分の子供を妊娠したからといって、簡単に許したのだ。
これも、俄かには信じられない展開だ。
イギリスにPVを撮影しにいく時、レイラが巧の現地妻のことを示唆するが、彼はガラスに書かれたその名前を消し去り、代わりにハチへ婚約指輪をお土産に買ってくることを約束する。
かくて、この物語の設定では、巧は、かなり純粋かつ繊細な心を持った「女たらし」ではない大人の男で、かつて付き合ってきた女たちは、本当に彼女たちの方から愛想をつかして去って行ったことにしなければ辻褄が合わなくなってしまう。ひょっとしたら、ハチと同じように、勝手に「女癖が悪い」と思い込んで去ったのかも知れない。そして、ハチの場合は、妊娠としいうサプライズが引き金となって結婚まで進んだという安易なストーリー展開となってしまうのだが、これ自体は「できちゃった婚」を助長するようでいただけない。
それでも、一般人とスターの結婚を成就させるストーリーは、一種のシンデレラ願望を満足させてくれたので満足できた。とにかく、映画はハッピーエンドで終わった。

☆それでも残る不完全燃焼感
結婚したカップルの出生率が上昇し始めたという。反面、結婚に躊躇する若い女性が増加しているともいう。
そして、できちゃった婚に対する反省と離婚の増加。離婚なんて、ほとんど日常茶飯事で見られるようになった。幼子を抱えた若い母親が起した悲惨な事件の新聞記事は、もはや他人事ではない。
責任の全部を男に押し付けるつもりはない。しかし、女にしてみれば、わたしを抱くために、あんなに甘い言葉を囁いたじゃない、幸せにするって言ったじゃないと思ってしまう。ものにしたらしたで、俺の女っていう感じでわたしの身体を自由にして、何でも自分の思い通りにしてきたじゃない。それなのに、ほんのささやかなわたしの願い・・・わたしだけのものでいて・・・たったそれだけのことが、男たちは守れないのだ。わたしは、あなただけのものでいるつもりなのに。
男は浮気するもの、そういう前提は、なくしてほしい。そういう前提を理解して許容する女がいい女という考え方もなくなってほしい。
もっと別の問題・・・それは、わたしが世の中の男に対して、深い不信感を抱いているということである。この作品が、物語として成立しているのも、結局は、巧が「女たらし」であるという前提があって、それを誰もが疑わないところにある。
それで、彼はどんな男だったのか、今でももやもやしている。
わたしの不完全燃焼感は、そのへんに原因があるような気がする。


それでも、おもしろかった。
評価は、ハート2つ
巧が善い人でハチは救われた。


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
TB&コメントありがとうございます! (睦月)
2007-01-15 16:44:00
いつもお世話になっております。
カリスマ映画論の睦月です。

私、原作ファンなので、この作品自体についてはかなり酷評しましたが・・・(苦)。
でも、物語そのものが描きたいことってのはよく分かります。こういう女の子っていますよね。っていうか、女ってこういう生き物だと私は思っています。
私はハチが大嫌いでああいう女とは絶対に友達にもなりたくないと思いますが(笑)、でも彼女の弱さや彼女の気持ちに共感できる女性ってたくさんいるんじゃないかなあ?実際、私自身もハチの気持ち、痛烈に分かりますもの。だからこそ、嫌悪感を感じるんですよね・・・(苦笑)。

そういう女の子を軽く包み込んであげれてしまう巧の抱擁力にはノックアウトされました(笑)。
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睦月さんへ (mina)
2007-01-21 21:08:33
睦月さんの言われるとおりです。
ハチみたいな女の子はたくさんいる。
共感できるけれど、何故かそんな生き方は厭だし、嫌いなんですねー。
それは、わたしの場合は、わたし自身のことだからだと思います。
観終わって、自己嫌悪に陥って悩んだし、心が寂しいような悲しいような空しいような、複雑な気分になりました。
ハチはいいよなー。巧に拾ってもらえたんだもの。現実世界に、あんないい男はいないよー。
このやるせなさは、2046を観た時以来。
しばらく、何もしたくなくなりました。
毎日、お酒を浴びるように飲んでいます。
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こんばんわ~ (さくさく)
2007-07-08 22:11:58
市川由衣ちゃんって不評だったみたいだケド
あたしもとてもよかったと思いました
みてからもぅ一ヶ月もたっちゃって、細かいトコは
あんまし憶えてないケド、まぁまぁよかったカナ
タクミがいい人かは、これからによるかなって思いマス
返信する
さくちゃんへ (mina)
2007-07-15 10:14:40
劇場上映時の評判は今ひとつみたいだったけれど、DVDでの評判は良いみたいですね。
レンタルでも今だに常に貸出中の状態だし、映画館まで出向いて観るほどじゃないけれど・・・の典型かな。
市川由衣ちゃんの方が「女」の匂いが強いかな。
この「女」という概念が曲者でね、難しい。
わたしはそう思う。
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