
モノはなくなるのではなく厳密に言えば、自分でなくす…ということになるのでしょうが、私の場合は、どうしても‘なくなる’のだとしか考えられない状況で突然、モノが消えてしまうことが多いのです。北海道に旅行した時に購入した、北野ガラスの綺麗なピンク色のグラデーションのガラスの携帯ストラップも、100円ショップで手に入れたモカモカの濃いピンク色の混じった真っ赤なハートの小物入れごと、ある日突然、忽然と消えてしまったのです。鶯谷から新宿に向かう途中の出来事でした。鶯谷駅のホームでバッグに入れようとした隙にするりと抜け落ちたのだと思って、新宿駅から直ぐに引き返して、自分の歩いた足跡を辿ってみたのですが、どこにも影も形も残っていませんでした。鶯谷駅と上野駅と新宿駅の遺失物取扱所にも問い合わせてみました。が、それらしい落し物は見つかりません。どんなにチャーミングなモノでも、人のモノを拾って使おうと思う人などいるわけはありませんので、やはりあの小物入れとストラップはどこかの世界に入り込んでしまったのだろうと思っています。もし自分の数分前の行動を映像で見られるとしたら、どこでどんな風に、そのモノをなくしたのか、その瞬間を捉えることが出来るのに…とよく考えることがあります。トリノでゴールドメダルに輝いた荒川静香選手も、トレードマークのダイヤのピアスを帰国後のアイスショーでの演技中に紛失しています。その瞬間を映像が見事に捉えていました。耳からピアスが外れて宙を舞う瞬間をキャッチしていたのです。ショーの終了後の会見で、インタビューに答える荒川選手の左耳にはピアスはついていませんでした。氷を整える作業員が氷の上に落ちていたピアスを見つけ出して拾っておいてくれたそうです。金メダルを胸に掲げた時に、耳元で輝いていたお母さまから贈られた思い出のピアスがなくなってしまわなくて本当に良かったと胸をなでおろしました。その後の演技の映像で、荒川選手が耳につけていたのは、あの思い出の詰まったダイアのピアスではありませんでした。私が過去に失くした‘耳飾り’の数も数え切れません。形あるものはいつかは我が身から離れていく運命にあるのでしょうか!どんなに愛着を持って慈しんだ品でも、そうなってしまった時には、お別れの時が来たのだと思い定めてさようならを言うことにしています。