『この物質世界は、より深いレベルの叡知の鏡像にすぎないことを理解しよう。すべてのものやエネルギーを指揮している叡知が自分の中にもあり、宇宙を指揮する力が分け与えられている。すべてのものとつながり、分かつことの出来ない自分がこの惑星の空気や水を汚染するわけにはいかない。さらに深い意識のレベルでは、考えの一つひとつが叡知の全フィールドに刻まれていくことを感じ取り、悪意に動かされたりしないこと。常にバランスを保ち、清浄に生きること。これが自分にとっても地球にとっても最高に良いことなのだ。』 今年度最初の神田橋先生の研究会で、先生が最近になって、さらなる新境地を開かれた体験を語られました。それは、相手と自分(患者さんと治療者)との間に、自他の区別のない状態を知覚するというもので、人間離れした、ある一つの類まれなる実体験(境地)を示すものでした。それは、先生も言われるとおり、統合失調症の方の感覚や経験に類似するものでもありました。ユングもこのような危機的な状況を経験しています。精神的に深いレベルに下降していって、再び上昇出来なかった場合には、固定的な病状を形成して、病名を与えられてしまうということなのかもしれませんが、歴史に名を残すような、古今東西の多くの芸術家や学者などは、往々にして、創造的な病の体験を持っています。神田橋先生は、いろいろな精神状態の間を往来することの出来る‘精神の多重性’をお持ちの方なのでしょうから、やはりちょっと見には、すごく変な人に見えます。やはり、普通の人ではないと思えます。円熟して丸みを帯びた、いわゆる出来た大人という成長モデルとは様相が異なっています。でもまさに、10の鍵の中の最後の10個目を手中に収めている方なのだろうと想像しています。