もがく 2006年03月11日 | 日々の泡 今週のNHKの「課外授業」、講師は作家の石田衣良さんでした。テーマは、「そしてこれから…どう生きる?」というものです。石田さんは、最近ではニュース番組や報道番組にコメンテーターとして登場することもしばしばですし、確か、歌手の藤井ふみやさんの曲の作詞もされたりして、多彩な才能を発揮しながら多方面で活躍されています。私は、衣良さんについては、結構、辛口な人だなぁ…と感じたことがあったくらいで、彼の生活歴などの情報に触れたことはこれまでにはまったくありませんでした。番組を通して、衣良さんが20歳を過ぎた頃から、将来に対する漠然とした不安を抱きながら生活をしていたこと、定職には就かず、フリーターとしての地位で自分の居場所を探し続けていたことなどを知り、大変に驚きました。一番感動したのは、17年間もの長期に渡って日記を書き続けてこられたことです。日記を綴ったノートを今も大切に持ち続けていて、そこに書かれてある昔のご自分の思いを生徒たちに読み聞かせてくれます。若者に絶大な人気を博してテレビドラマにもなった、「池袋ウエストゲートパーク」などの書物の作家とは思えないほど、その日記の中の若者は、一切の技巧を排した文章で、目の前の自分の現実に怯え震えているだけなのです。そうした状態から、よく、作家への道のりを、脱落することなく歩めたものだと感心するよりも先に、驚愕の思いに捉えられてしまいました。この頃では、あちらこちらで、能書きばかりではない、具体的なニート対策が動き出しています。こうした社会の後押しも確かに心強い応援となりますが、フリーターやニートとしての隠れ蓑を脱いでも、この社会の中に確かな居場所を確保できる人も存在するということを知って、衣良さんの生き方が一つのモデルとして、誰かの心の支えになるといいなぁ…と思いました。衣良さんは類いまれなる強靭な精神の持ち主なのだとは思いますが、彼は例外だ!とは言ってしまいたくない思いにも駆られます。さなぎが美しい蝶に成長するように、もがき苦しみながらも、醜いさなぎの時期を何とか持ちこたえて、いつか蝶々として、美しく自分の人生の主人公に、誰もがなれますように…。フリーターのままでも、ニートのままでも、蝶々として輝けますように… ★番組ホームページ -課外授業~ようこそ先輩~-