箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

大阪府の高校事情

2021年06月27日 10時17分00秒 | 教育・子育てあれこれ


大阪府の公立高校には、「大阪府立学校条例」があり、入試で3年連続して定員割れを起こした高校は統廃合の対象になるというものです。

現状では、2021年度入試では5年前と比べ、2倍にあたる40校が定員割れを起こしました。

これは大阪府立高校全体の約3割にあたります。

これだけみれば、府立高校は生徒から人気がないように思われますが、けっしてそうではありません。

もともと大阪は、関東とちがって、私立高校も人気はありますが、公立高校志向が強い地域で、現在でも北野高校、茨木高校、天王寺高校など、公立のトップ校は健在で、いわゆる「一流大学」への高い進学率を誇っています。

それらの高校の倍率は、1.35倍ほどの平均倍率で推移しています。なかには1.7倍を超える進学校もあります。

つまり、高倍率になる府立高校と定員に満たない府立高校という「二極化現象」が顕著になっているのです。

府内では、もともと公立私立間協議で、公立:私立が7:3という比率を維持してきました。
これは、少子化による生徒数急減での私学経営への影響を考慮したもので、それに応じて各中学校は進路指導を進めてきたのでした。

私が、進路指導をしていた頃は、私立は公立の約8倍の学費がかかると言われていました。

ところが、大阪府は、2010年度から、大阪府独自の私立高校授業料の実質無償化を一定所得以下の世帯を対象として導入したのでした。

この私学無償化とあわせて2011年度から7:3の比率が弾力的に運用されるようになり、私学選択・公立選択の志願傾向が一気に流動化したのでした。

それから約10年がたち、条例に基づき、いままでに府立高校5校が新入生募集を停止し、4校が廃校になりました。

これらの学校は1970年代の生徒急増期に開校した、交通の便がよくない地域に建てられた学校です。

しかしながら、定員割れを起こしている高校の中には、基礎基本からの学習に力を入れ、特色ある学科を編成している学校もあります。

そこでは、ひたむきに学習に励む生徒もいます。高い意欲の教職員がいます。

また、交通の便が悪く定員には満たないが、その地域にはほかに通う学校がないような地域1校の高校もあります。

学習が遅れている生徒や家庭環境等により学力を十分につけることができなかった生徒たちを受け入れ学びを保障している学校の価値は、定員を満たしたかどうかではかれるものではありません。

学ぶ意欲をもった子たちの学びを保障する公立高校の存続を視野に入れ、府立高校のあり方について抜本的に見直す必要があります。


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