箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

教え込み授業に戻らない

2020年06月01日 07時28分00秒 | 教育・子育てあれこれ


小中学生の保護者の方なら、参観授業のときにお気づきでしょうが、最近の学校の授業では、グループ学習が多くなっています。

この学習は、児童生徒が「協同的な学習」を通して、授業で自分の考えを友だちに伝えて、それを聴いた仲間も自分の考えを深め、全体で学びを深めていくために行っています。

これは、多くの親御さんが児童生徒の頃から慣れ親しんできた教師主導の「教えこみ授業」とは、一線を画するものです。

もちろん、すべてがグループ学習ではなく、教師が新しい知識や技能を教える場面もあります。

でも、教師が講義をするように、一方的に説明して、児童生徒はそれを暗記して知識や技能を身につける授業とはちがってきています。

教師からの一方的な説明を聞くのではなく、クラスの仲間とのやりとりがある授業では、自分の考えは仲間の役に立つために、仲間に向かって発表します。

その際、児童生徒は教師一人に対して、クラスの児童全員が向き合う「対面一斉授業」ではなく、二人一組とか四人一組になるグループ学習の形態になることが多いのです。

この「協同的な学習」が、どの都道府県の小中学校でも、やっとふつうに行われるようになってきたのが、昨今の状況でした。

ところが、今回の新型コロナウイルスの感染拡大による休校措置で、「協同的な学習」が影響を受けるのではないかと懸念されます。

一つ目に、全国の多くの授業が教師主導の「教えこみ授業」に戻ってしまうのではないかという心配です。

休校の間に学習し残した内容が多く、対面式一斉講義で教師が教える方が、効率的に学習できると思う教師は少なくないのでないかと予想します。

二つ目に、授業を進めなければならないという意識が、強く教師にはたらき、子どもの学びよりも、進度を優先した駆け足の授業になり、児童生徒の間に個人差が広がるという心配もあります。

三つ目に、今から新学期が始まるという学校の状況で、児童生徒同士が仲間関係ができていないので、学びあいが難しいという点です。

協同的な学習は、クラスの仲間の高めあう人間関係を土台としており、その高めあいから学習意欲が湧いてくるという事実です。

座席は離していても、児童生徒が認めあい、励ましあって共に学習に向かうという仲間づくりを、学校は進めていかなければなりません。

もちろん、感染を防ぐために、授業の中での児童生徒の近づき過ぎ、集まり過ぎは避けなければなりません。

でも、学習の形態は変えても、学習の目的を変えてはダメです。

いわゆる「主体的で対話的で深い学びの学習」で得る意欲や態度は、いまの子どもたちに将来、ぜったい必要となる学力であり、これが学習の目的です。

「こんな事態だから、しばらくの間は、児童生徒が受け身になる授業でもしかたないよね」と言いだすと、授業は1年間ずっとそうなります。

なお、「協同的な学習」は、グループ学習だと、曲解している人は教師の中にもけっこういます。

ではなく、「協同的な学習」とは、クラスのすべての学習者が高まることをめざすものです。

そのためのカタチや形態は問いません。

かりに一斉学習のカタチでも、教師が問うたこと(質問)に児童生徒が答え、「正解!」とか「よろしい」、「あってます」と言ってもらうために、教師に向かって発表するのではないのです。

授業生徒は、自分の考えや発表を仲間に聴いてもらうために言うのです。

教師は授業で話しすぎてはいけない。子どもの学びのために問いかける(発問)のです。

これが、プロとして、専門職としての教師が行う授業です。

そこで、以下はすこし専門的な話になりますが、密集や密接を避けて、具体的にどう「協同的な学習」ができるのでしょうか。

たとえば、対面式の一斉授業の国語で、「トロッコ」を学習するとき、良平が土工から「われはもう帰んな」と言われたときの気持ちはどんなものだったかを、教師が問います。

「突き離されたような気持ちだと思います。なぜなら、このように描写している部分があるからです」

「どうやって、一人で家にまで帰ればいいのかを、真っ先に思ったのでないでしょうか。あまりにも遠くへ来すぎたと書いているからです」

多くの生徒が、この発言をもとに考え、自分の考えを深めたり、練り直したりします。

このように、教科書の本文を読解する場面を、「学習のめあて」(何についてよみとるのか)を明確に生徒に示して、読みとりをしながら、授業を進めます。

実習や実技の活動のときも、授業者は気をつかいます。

たとえば、理科の実験のときは、手順を教師が全部説明すりのではなく、手順書を読み解かせる工夫をします。

「なぜ、タマネギの切片に酢酸カーミンを一滴落とすと書いているのだろうか」

このようにすれば、教師の話すぎを減らすことができます。生徒に考えさせることが増えます。

未履修の部分は、学習する内容の意義や順序や課題をわかりやすく伝え、自学させる。
わからないところだけ、教師が児童生徒にかかわるという方法もあります。
それだけでも教えすぎを減らすことができます。

そもそも、教師は何でも思いついたことを話すクセがあります。それで時間が間延びします。

休校解除後の今だからこそ、子どもの学びを促進する、意図をもった問いだけをするべきなのです。

教室の座席も一人ひとりを離した教師-生徒の対面式一斉形態ありきではありません。

この座席配置は、ずっと継続すると、児童生徒のストレスを高めると思います。

児童生徒間の距離をあけながら、サークル型、U字型など工夫をすれば、クラス全員が向き合って授業を受けることができます。

とにかく、学校再開後の授業が、「教えこみ」授業に戻らないよう、学校は努力すべきです。












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