箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

同調圧力から抜け出す

2020年10月18日 07時08分00秒 | 教育・子育てあれこれ


今の中学生の集団(グループ)は、生徒と生徒を仲間関係と信頼関係でつなげる取り組みをしないと、グループ内での同調圧力が強く出る傾向にあります。

グループの意向に「いや」と言えない。トイレに自分一人で行けばいいのに「いっしょに行って」と言われると断れない。

自分だけが異論を言いにくく、賛成に回ってしまう。
「空気を読めない子」とグループから言われたくない。

グループ内ではたらく「同調圧力」はかなりのものです。

そして、そんな同調圧力を内側にためたグループがクラスの中にいくつか乱立している。これが4月当初の学級開きの状態です。

もっとも、学校で、仲間づくりや集団づくりをすすめていくと、グループ間の交流が進みます。

またグループ内でも同じようにしなければならないという力は弱まってきて、いわゆるクラスの団結や絆が生まれてきます。

しかし、よく考えてみると中学生の集団にはたらく同調圧力は、なにも子どもだけの問題ではありません。

おとな社会も同じです。むしろおとなの姿が中学生に投影されていると、私は考えています。

おとなに働く同調圧力や「世間のまなざし」を、今回の新型コロナウイルスはみごとにあぶりだしました。

マスクをしていない人をにらみつける。
夜間遅くまで店を開けていれば、悪口の落書きをする。
感染した人を中傷非難する。

いわゆる「自粛警察」は、「世間」という概念がもつ同調圧力が働くことで生まれます。

この世間とは「人に迷惑をかけない」という力学的な価値観です。

この人は「人に迷惑をかけている。なんでみんながやるようにしないのだ!」という勢いで、非難をする人になるのです。

日本政府が、人びとに求めた「自粛」要請は、「ルールは守るものよ」「こんな非常時なんだから自粛しないさいよ」という人々の同調圧力を起動させることになったのです。

ただ、今回はコロナ禍で極端に出ましたが、「世間」というものはずっと昔から日本社会にでは、幅をきかせてきました。

親がわが子に「世間さまに顔向けができない」とか、犯罪加害者や刑務所から出所した人の家族が非難されるというように、以前からありました。

ただ、考えようによっては、日本社会では「人と違うことをしない」とか集団から逸脱する行動は慎むという価値観があるので、治安が保たれているという、同調圧力のプラス面はあると思われます。

マスクをしなければならないと聞いたら、ほぼ100%、みんながマスクをします。これが感染防止に役立っているという側面はあるのでしょう。

しかし、行き過ぎた同調圧力は、人びとをかえって生きづらくさせます。
生きづらさは、間接的にでも、自殺者の増加につながることもあります。

中学生友だち関係の課題、「同調圧力」を言う前に、まず私たちがそれぞれの人を認めていくように態度を変えていくべきでないかと考えます。


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