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経団連会長、日中関係の改善を民主に求める

2012-10-26 | 日記
YOMIURI ONLINE」の「経団連会長、日中関係の改善を民主に求める」( 2012年10月26日13時52分 )

 民主党の輿石幹事長ら執行部は26日午前、経団連の米倉弘昌会長ら幹部と都内のホテルで懇談した。

 米倉氏は「日中関係は急速に緊張が高まっており、経済や企業活動に大きな影響を与えている」と述べ、沖縄県の尖閣諸島を巡る問題で悪化している日中関係の改善を求めた。赤字国債発行を可能にする特例公債法案については、臨時国会で早期成立を図る方針で一致した。米倉氏は懇談後、「早く成立させる方向でやってもらいたい」と記者団に語った。

 経団連と民主党執行部の懇談は、9月の同党代表選後初めて。


 経団連の会長が、日中関係の改善を民主党に要望した、と報じられています。



 日本企業の中国駐在員のあいだでは、「OKY」(=お前が来てやってみろ)、「TKY」(=テメエが来てやってみろ) という言葉が流行っているようで、次々に指示を出してくる本社に対し不満が高まっているようです。

 おそらく、そのような事情も今回の発言の背景にはあるのでしょう。

 一見すると、当然の要望であるかにも思われます。



 しかしこれ、どうなんでしょうか?



 現在の日中関係は、基本的には「中国側が対日関係の改善を拒んでいる」状況だと思います。

 とすると、民主党(日本側)に対中関係の改善を要望したところで、何にもならないわけです。日本側が対中関係の改善を拒んでいるならともかく、その逆、中国側が拒んでいる状況であることを前提に考えると、

 経団連会長が「日本側に」要求することは「筋が通らない」うえに、「困った状況」を日本国および企業にもたらすのではないかと思います。

 なぜなら、経団連会長の要望はすなわち、経済や企業活動のために、すなわち金儲けのために、政治的に中国に譲歩しろ、と民主党に要求していることにほかならないからです。企業の利益のために国家の利益を犠牲にしろ、と経団連会長が要求することは、かりに日本が中国に対し政治的に譲歩しないとしても、中国に足元をみられることになり、日中関係を日本不利・中国有利に動かす方向に作用すると思います。

 また、これは企業自身にも、不利益をもたらすと思います。

 経団連会長の発言が示しているのは、「我々には中国から撤退する意志はない」です。欧米企業が中国から撤退(または事業縮小)しつつある、とも報じられているなか、我々日本企業は中国から撤退しない、中国事業・中国市場を重視し続ける、と述べたわけです。

 中国事業・中国市場を重視し続けること、それ自体は企業の経営判断としてあり得ると思います。しかし、民主党に「政治的に譲歩しろ」と言わんばかりの要求をするならば、日本企業そのものが中国側に足元をみられることになるのではないでしょうか? 暴動が起きようが、企業の設備が破壊されようが我々日本企業は中国から撤退しません。このような姿勢は、経団連会員企業自体にも不利益をもたらすのではないかと思います。

24 コメント

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少し異なる意見 (とおりすがり)
2012-10-26 18:34:56
とはいえ、私の率直な意見というより、アンチテーゼとして。

尖閣やら竹島やら、それらの国益が何か。
領土問題は、大なり小なり、要するにメンツの問題に帰着し、それで飯が食えるか、ということも言えるかと。

いや、東シナ海の埋蔵資源の問題があるのは理解しているが、たまたま見つかったものであるし、最初から無かったと思えば、状況が悪化するわけでもない。

日本企業だから日本の国益に反するべからず、というのも分かるが、その国益を守るために日本企業が稼げなくなるというのは、足元を自分で掘り進む行為なのではないか。
勿論、中国市場に対する評価で結論は全く異なる事態になるのだろうが、当事者である企業は、中国企業を少なくとも評価しているし、日常生活を見回せば、中国経済を抜きにして日本経済は回らない状況になっているのは紛れもない事実。日本企業が中国から利益を上げている実際上のことを考えれば、経団連会長の要望も理解できなくはない。気分は悪いかもしれないが、力の無いのび太はジャイアンには勝てない。

少なくとも、中国依存度を低めない限り、世間で言うところの「国益」(これ自体を私は何が「国益」なのか理解できなのだが。)を守ろう、といったところで、所詮は力なき者の遠吠えにすぎない。国際社会は弱肉強食であることの証左とも言える。
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Unknown (memo26)
2012-10-28 08:31:53
 コメントありがとうございます。

 日中間の対立で日本企業が稼ぎにくくなっている、というのは事実ですが、同時に、中国企業も稼ぎにくくなっています。日中間係が改善されれば、中国企業も不利益を回避できます。

 したがって、日本側が「日本企業の利益」を守ることに注力すればするほど、中国側は「中国企業の利益」を得つつ、「中国の政治的利益」をも得られる結果になると思います。


 また、いま日中間で戦争をすれば、おそらく中国が負けると思います。

 とすれば、日本(政府)としては、企業の利益のために、わざわざ中国に政治的譲歩をする意味がありません。


 日本企業としては、ここは胆力を発揮すべきではないでしょうか? 私としては、目先の利益に固執せず、(日本企業が)我慢すべきところではないかと思います。

 なお、下記の報道によれば、経団連会長の言葉とは裏腹に、日本企業の中国市場に対する見かたは変化しつつあるようです。


「ロイター調査:日中悪化で認識変化、「消費地・中国」の魅力後退」
http://jp.reuters.com/article/jpchina/idJPTYE89N01Q20121024?pageNumber=2&virtualBrandChannel=0
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Unknown (とおりすがり)
2012-10-29 15:27:57
私としては、企業が我慢する理由(インセンティブ)が無いかと思います。
日本での稼ぎが僅かになればなるほど、日本の購買力が失われれば失われるほど、我慢の意味が失われます。

日本の企業が稼ぎにくくなると同時に、中国企業も稼げないとの指摘はその通りですが、他に稼ぐ方法がない日本と他に手段のある中国では、中国が圧倒的に有利なのは当然です。
日中関係が改善すれば双方稼げるかもしれませんが、このまま日本企業がダメになれば、そのあとに中国企業が後釜を狙えばいい、という危険もあります。
政治体制の異なる中国では、企業への直接的な支援も可能ですので、違う土俵で戦う日本企業は圧倒的に不利です。

なお、ロイターの調査はその通りですが、日本企業の弱みは、他に稼ぐことができる市場を開拓できていない、という点にあります。

戦争の話は、日本が(勝つまで行かなくとも)負けないというのは、甘すぎます。
単体では四方を海に囲まれる日本は、補給線を断たれれば終わりですし、アメリカが安保条約で守ってくれるというのは、幻想がすぎます。
(私見ですが、核の抑止力と同じく、存在は重要なれど発動されないもので、外交に用いることができることが、その最大の効用かと思います。)
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Unknown (とおりすがり)
2012-10-29 15:37:00
ちなみに、国民としての感情論では、確かに頑張ってほしいとも思いますが、客観的に勝てる武器がないので、厳しいだろうという点が、私の意見です。

所詮、外交交渉はパワーゲームで、パワーが不足するなら世界の世論(正確には主要国首脳の賛同)を味方につけるなどして、その不足を補う必要があります。
されど、外交における存在感が乏しいままに、(潜在的)国力の劣る日本が、外交で得点できることがあるとは、思えません。

感情のままに負け戦に突入するのは、戦前日本からの悪い癖かと思います。
太平洋戦争しかり、ビジネスにおける規格標準化戦争しかり、前回の東京オリンピック誘致しかり。
(オリンピック誘致では、本当に誘致したければ、前回はとっとと諦めて他都市の支持の代わりにその次の支持を得るなど、戦略的に動くべきだった。)
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Unknown (memo26)
2012-10-31 18:42:57
 中国製品には、日本製の電子部品が組み込まれています。したがって中国側にも、日本との経済関係断絶という選択肢はありません。中国は工業製品を作れなくなるからです。

 次に、日本企業は中国工場等で多数の中国人を雇用しています。中国経済が減速しつつあるなか、雇用が失われることは中国にとって痛手でしょう。中国人は、反日デモを行い、暴動を起こすことで、同胞たる中国人を困らせているわけです。

 中国の地方政府も、日系企業が撤退すれば税収を失いますから、(中国の)地方政府の財政状況を考えると、(地方政府にとってはどうでもいい)尖閣問題で日本との経済関係を破壊したくない、ということになります。中国共産党内部にも、対日関係を改善しなければならない事情はあるわけです。

 したがって、日本側が(一方的に)政治的な譲歩をしてまで対中関係を改善しなければならない必然性はないように思います。


 日本企業は、米国市場や(中国以外の)アジア市場で稼げばよいのではないでしょうか?


 なお、日中間で戦争が起きた場合、おそらく尖閣周辺での局地戦(短期戦)であれば、日本は単独で(米軍が動かなくても)勝てると思います。日本や米国の専門家による、そのような分析が報道されていました。

 もっとも、日中間の戦争が全面戦争になった場合には、日本単独では中国に勝てないと思います。しかしその場合には、米国・米軍が動く(または動かざるを得なくなる)と私は考えています。
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見方の違い (とおりすがり)
2012-11-01 10:03:21
中国側のデメリットは、ご指摘の通りかと思います。その点は同じだと思います。
しかし、そのデメリットを「他の国の誘致で穴埋めできない」というのは、日本の力を過大評価しているかと思います。
また、経済問題よりも、国内の政治的矛盾のほうがリスクの高い現状の中国の政治状況では、尖閣で譲歩するという判断は、リスクが高く(経済的リスクと異なりアンコントローラブルになり易い点でも)採用しがたいでしょう。

また、仮に中国にデメリットがあるからといって、それが日本が譲歩しないほうがいい、ということに論理的必然ではありません。日本でデメリットが上回れば、中国のデメリットが過大であったとしても譲歩するべきという場合もあり得ます。

日本のデメリットが大きい場合には、相手との我慢比べになるわけですが、どちらが体力が大きいかという国力比べで、中国に優るとは到底思えません。

なお、局地戦想定は、あまり意味がないと思います。戦争が局地戦で終わるのは、中立的に(どちらの主観で見ても)互いの戦力差があまりにも大きい場合に限られます。戦力差が少ないと思っているならば共倒れを回避するでしょうが、そうでなければ、ずるずると拡大する可能性が高く、一旦、ある程度まで拡大すれば、それを縮小するのは決定的な勝敗が着くまで、至難の業でしょう。

なお、米国が動くメリットがないので、その想定はあり得ないと思います。人権問題であれば、国内政治問題で動くこともあるでしょうが、漁夫の利を得る目的以外で米国が動くことはなく、領土問題には関知せず、の建前であれば日米安保ですら、防衛ではないとの一言で片付けられる可能性があります。

中国の影響力が大きくなっており、20年前であれば米国と共同戦線の可能性もあったと思いますが、現時点では全くの空想小説で、日米安保とは核兵器と同じ抑止力で、実際には使うことができないもの、と考えたほうが良いかと思います。
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Unknown (memo26)
2012-11-01 18:10:38
 中国側が譲歩しづらいことは承知しております。しかしまた、日本側も譲歩することは難しいわけです。それが現在の尖閣諸島をめぐる日中関係ではないでしょうか?

 日本側が「あえて」中国に譲歩するなら、その代償として何らかの利益を得ることが必要であると思います。

 中国側が日本に、何らかのメリットを与えるとはすなわち、中国側も日本に譲歩するということであり、双方、互いに譲歩するということです。

 私は、日本が「一方的に」中国に譲歩することには反対です。



 次に、局地戦想定は意味がない。いったん戦争が始まれば本格的な全面戦争になる、とのことですが、

 もしも全面戦争になれば米軍は動くと思います。すくなくとも、動かざるを得なくなると思います。

 なぜなら、全面戦争になった場合、米軍基地も被害を受けることが予想されるからです。日本にとって、米軍基地が日本に存在しているメリットは、周辺国が米軍基地に被害が出るような攻撃を仕掛けられない、すなわち本格的な対日戦争を始められない、ということです。

 また、日米の同盟関係は、世界中の国が知っていますから、米国が日本を「見捨てれば」今後、米国は他の同盟国の信頼を失ってしまうでしょう。その意味でも、米軍は動かざるを得ないはずです。

 もちろん、「日本側が先に」中国に対して攻撃を仕掛けた場合は話が別です。

 以上を総合して、要するに、日本側が「先に」攻撃を仕掛けないかぎり、中国は日本と本格的な戦争を始められない、と考えられます。
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Unknown (とおりすがり)
2012-11-02 10:37:56
私は日本が一方的に譲歩してほしいとは思いませんが、いまの日本の国力でそれが適いますか、という現実的な疑問を投げかけているというのが、正確な私のスタンスです。そして、企業も同様のスタンスと理解しています。

このまま対立状況が続いたときに、先に国力を失うのは日本だろうという判断があり、その前提で、確かに感情的に一方的譲歩が受け入れがたくとも、そのまま沈みゆくまでチキンレースを続けるのはナンセンス、ということです。

その時に重要なのは、やはりアメリカのスタンスですが、すでに中国との対立はしない、というメッセージが出されている(領土問題には中立であると明言)以上、期待できないですし、アメリカの国益を考えると日本との対立で中国の国力がそがれるほうがメリットは高いわけで、日本に肩入れする理由がありません。

在日米軍を避けた戦争ができない、とのことですが、これはそんなに難しくはありません。
関西、特に大阪を中心に攻撃すれば、在日米軍はいないですし、中国も在日米軍を攻撃するなどという、アメリカを招き入れる愚行は(少なくとも意図的には)しません。

同盟関係の破綻が信頼を失う、という点については、既に領土問題は立ち入らない、という宣言があるので、そもそも日米安保の枠外という予防が張られてしまっていますので、他国の信頼を失うようなことにならないでしょうし、開戦前に公開の場で日本を諌める行動で、安保条約の想定する場面ではない(防衛ではなく実質的に日本が招いた戦争という形にする)、ということも可能です。

勿論、中国完勝という場面になれば、アメリカ自身の国益のために乗り出すでしょうが、それはあくまでもアメリカの国益のためであって、日本がハッピーになるかといえば、そうはならないでしょう。
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Unknown (とおりすがり)
2012-11-02 11:09:21
ちなみに既にForbesで、日米安保の非有効性について主張されている記事があります。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK29015_Z20C12A8000000/
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Unknown (memo26)
2012-11-02 19:00:55
 その記事は私も読んだような記憶があります。私も、日本が防衛能力を高めることを希望しています。日米同盟に頼りきりでは「まずい」と思います。

 次に、あなたのご意見についてご返事します。

 「国力」を端的に表す指標はGDPですが、この観点でみて、日中の国力は拮抗しています。日本の国力が一方的に中国に劣っているわけではありません。

 次に、米国は中国と対立しないと言っているのではありません。どちらの領土かについて中立の立場をとる、と言っているにすぎません。米国は、中国が軍事力によって尖閣諸島を占領しようとした場合には阻止すると言っています。

 たしかに、日中間の戦争により、中国の国力がそがれることは米国の国益にかなうとは思います。しかし米国は「中国が軍事力を行使した場合の日米協同作戦シミュレーション結果」を中国首脳に示し、中国に軍事力を行使しないように圧力をかけた、という報道もなされています。この報道をもとに考えると、あなたの意見には同意いたしかねます。

 在日米軍基地を避けた攻撃は可能であるとのことですが、そもそもあなた自身が、いったん戦闘が始まれば局地戦ではすまない、全面的な戦争になる、とおっしゃられたのではないでしょうか? 在日米軍基地を避けた戦争が可能であるなら、それはすなわち、局地戦であり、米軍の協力がなくとも日本単独で中国に勝つ可能性はかなりあると思います。

 なお、最終的に中国完勝になりそうになれば、米国は米国自身の国益のために乗り出す、とあなたは書かれています。とすれば、要するに「中国が日本に完勝する可能性はない」ということになります。

 中国首脳部が馬鹿でなければ、尖閣問題で軍事力を行使しないと思います。
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