水野和夫・萱野稔人 『超マクロ展望 世界経済の真実』 ( p.85 )
サブプライムローンは略奪的な仕組みである。資本主義が略奪の対象としてきた「外部」がなくなったために、自国民から略奪せざるを得なくなっている、と書かれています。
サブプライムローンは略奪的である、という指摘についてですが、かならずしもそのように捉える必要はないと思います。
もともとサブプライムローンというのは、(売る側ではなく)借りる人々も「値上がりした後に(住宅を)売る」ことを目的としていたのではないでしょうか。もともと「あとで売る」ことを前提としていたからこそ、「最初は金利が低いんですが、数年後に一気に跳ね上がる」仕組みになっていたと考えられます。つまり、ローンを完済して住宅に「住み続ける」ことが目的ではなく、値上がりしたあとで「住宅を売る」ことが前提になっていた、ということです。
であるならば、「借りた人たちは借金地獄になる」ということはないわけです。借りた人たちは、ローンで買った住宅を値上がりしたときに売って、ローンを返済するつもりだったからです。金利が上がる前に住宅を売って(ローンを)完済する計画を前提に考えれば、借りた人たちにとって「最初は金利が低いんですが、数年後に一気に跳ね上がる」サブプライムローンは好都合だったとしか考えられません。
もちろん、上記の構造を考えれば、どこかの段階で「売家」が急増するはずで、住宅が値上がりし続けるはずはないとも考えられ、その意味では、サブプライムローンは略奪的であるともいえます。
しかし、借りる側の立場に立って考えてみれば、
もちろん、「賭け」に参加する機会が与えられるほうが「いい」はずです。また、そもそもアメリカの場合、日本とは異なり、ローンを返済する代わりに(買った)住宅を銀行に「返す」方法での返済方法もある(らしい)ので、ローンの借り手にはリスクがほとんどないと考えられます。
とすれば、サブプライムローンが略奪的であるとまでは考えられない、ということになります。
「借りた人たちは借金地獄になる」「国民を裏切るサブプライムローン」などといった表現は、アメリカの(一般)国民を馬鹿にしすぎではないかと思います。
とはいえ、「外部」が消滅しつつあるなか、利潤率を維持しようとすれば、このような方法しかなかった、という著者らの指摘は正鵠を射ているのではないかと思います。
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萱野 略奪ということでいえば、今回の金融危機の元凶となったサブプライムローンも略奪的なものですよね。要するに隠れた高利貸しですから。最初は金利が低いんですが、数年後に一気に跳ね上がるので、借りた人たちは借金地獄になる。もともとサブプライムローンは、住宅バブルをつづけるために、低所得などの理由で家をなかなか買えない人たちにも家を買わせようとあみ出された方法です。しかしそれは逆に、彼らを借金地獄にすることで中産階級へのルートから完全に蹴落としてしまった。
水野 サブプライムローンの実態というのは、かつてイギリスの海賊が平滑空間でやったことを、もう略奪できる空間がないから自国民に対してやってしまったということだと思うんですよ。
そういう意味では、国境の外では何をやってもいいんだという、イギリスのやり方がいいとは思わないのですけれども、今回アメリカがやったような、自分たちの国民から略奪まがいのことをするというのは、もっとたちが悪いというふうに思えてならないのです。他国民を犠牲にすることだってよくないですが、自国民を裏切るサブプライムローンはもっと悪質じゃないかなと思いますけれどね。一国を単位とした民主主義も機能不全に陥っているのではないでしょうか。
萱野 先進国の有利な交易条件が消滅していくなかで、なんとか利潤率を維持しようと思ったら、自国民から略取するしかないんですね。
水野 これまでのグローバル化というのは、つねに少数の人が外部に有利な交易条件を求めて、そこから利益を得るというかたちでしたが、いま起こっているグローバル化では、地球全体がグローバル化するぞということになって、そうした外部が消滅してしまったのですね。
サブプライムローンは略奪的な仕組みである。資本主義が略奪の対象としてきた「外部」がなくなったために、自国民から略奪せざるを得なくなっている、と書かれています。
サブプライムローンは略奪的である、という指摘についてですが、かならずしもそのように捉える必要はないと思います。
もともとサブプライムローンというのは、(売る側ではなく)借りる人々も「値上がりした後に(住宅を)売る」ことを目的としていたのではないでしょうか。もともと「あとで売る」ことを前提としていたからこそ、「最初は金利が低いんですが、数年後に一気に跳ね上がる」仕組みになっていたと考えられます。つまり、ローンを完済して住宅に「住み続ける」ことが目的ではなく、値上がりしたあとで「住宅を売る」ことが前提になっていた、ということです。
であるならば、「借りた人たちは借金地獄になる」ということはないわけです。借りた人たちは、ローンで買った住宅を値上がりしたときに売って、ローンを返済するつもりだったからです。金利が上がる前に住宅を売って(ローンを)完済する計画を前提に考えれば、借りた人たちにとって「最初は金利が低いんですが、数年後に一気に跳ね上がる」サブプライムローンは好都合だったとしか考えられません。
もちろん、上記の構造を考えれば、どこかの段階で「売家」が急増するはずで、住宅が値上がりし続けるはずはないとも考えられ、その意味では、サブプライムローンは略奪的であるともいえます。
しかし、借りる側の立場に立って考えてみれば、
- 最初から上記の「賭け」に参加するチャンスすら与えられない状況と、
- 上記の「賭け」に参加するチャンスが与えられる状況、
もちろん、「賭け」に参加する機会が与えられるほうが「いい」はずです。また、そもそもアメリカの場合、日本とは異なり、ローンを返済する代わりに(買った)住宅を銀行に「返す」方法での返済方法もある(らしい)ので、ローンの借り手にはリスクがほとんどないと考えられます。
とすれば、サブプライムローンが略奪的であるとまでは考えられない、ということになります。
「借りた人たちは借金地獄になる」「国民を裏切るサブプライムローン」などといった表現は、アメリカの(一般)国民を馬鹿にしすぎではないかと思います。
とはいえ、「外部」が消滅しつつあるなか、利潤率を維持しようとすれば、このような方法しかなかった、という著者らの指摘は正鵠を射ているのではないかと思います。
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