宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論 etc etc

その1-2・ブラックホールの寿命計算

2023-03-24 17:29:21 | 日記

前のページの最後に

『ちなみにホーキング放射計算機は以下のページにあります。

Hawking radiation calculator : https://archive.md/8MB7i :

ここでも寿命式の導出が行われていますので、上記で不明な点があった場合は、こちらでも確認してみてください。』 と書きました。

それで少し寄り道をしてこの計算機について書いておきます。

 

始めに「ホーキング計算機の前文とあとがきの訳文」を示します。

前書き:『このページには、シュワルツシルトブラックホールのホーキング放射やその他のパラメーターを計算するJavaScriptの計算機が含まれています。

オリジナルのアイデアはJim Wisniewski氏に帰属し、彼の2006年のページ(リンク)はもう利用できなくなっているようですが、ウェイバックマシンによってアーカイブされていないため、私の機能的なクローンがまだ役に立つと思います。

Wisniewski氏のオリジナルのコードには、ウィル・マッカーシーの小説「コラプシウム」で定義された、1兆メトリックトンに相当する架空の質量単位である「スタンダード・インダストリアル・ニューブル」が含まれていました。私はこの単位を保持しましたが、初期質量として1太陽質量を使用することにしました。

Wisniewski氏のバージョンと同様に、任意の量を指定すると、他の量もそれに応じて再計算されます(ソースを参照)。ドロップダウンメニューは、それぞれの入力フィールドの使用する計量単位を選択します。

追加機能として、黒体放射曲線の単位対数に対応するBHの温度に対応する「ピーク光子」の波長、対応する周波数、および光子エネルギーの計算が含まれています。最新バージョンでは、黒い穴の効果的な面積、光の散乱、およびそれによる蒸発寿命の変化も正しく考慮されています。』

 

あとがき:『我々はまた、1.8083の数値因子を紹介しました。これは[Page 2005]での詳細な計算から得られたもので、効果の組み合わせに由来します。まず、ブラックホールの効果的な吸収面積(したがって放射面積)は、事象の地平面積に対応する4πR^2よりもはるかに大きく、実際には27/4倍大きくなります。これは大きな(6.75倍の)増加をもたらす可能性がありますが、フォトンスフィアに入るすべての光線がブラックホールの事象の地平面に捕獲されるわけではないため、緩和されます。したがって、フォトンは「素朴な」計算に比べて1.6232倍の割合で放出されます。さらに、私たちは重力子も考慮する必要があります。これらは「素朴な」率の0.1851倍で放出されます。これら2つの項を組み合わせると、全体の因子は1.8083になります。(Don N Page はまた、ニュートリノについても考慮しましたが、少なくとも1つのニュートリノフレーバーが質量ゼロでなければ、ブラックホールが非常に熱くなった最後の段階を除いて、寄与しないでしょう。)

様々な定数を代入すると、次のようになります。

t = (M/M⊙)^3 × 1.160×10^67 yr,
ここで、M⊙=1.989×10^30 kg、Ė⊙=1.989×10^30 kgです。

したがって、1M⊙のブラックホールの寿命は、現在の宇宙の年齢よりもほぼ57桁も長く計算されます。ただし、それは宇宙背景放射よりも冷たいため、放射するわずかなエネルギーも、宇宙からの熱の形でより多くを受け取ることになります。したがって、縮小する代わりに、それは成長し続けるでしょう。

実際、地球の質量の約0.75%以上の質量を持つ任意のブラックホールは、宇宙の背景よりも冷たいため、しばらくは質量が増加します。しかし、宇宙が膨張し、冷却されると、いずれブラックホールはホーキング放射によって質量エネルギーを失い始める可能性があります。』

ここで著者が述べている「1.8083」と言う数字ですが、それはこのページの最後の計算がブラックホールの寿命の計算になっているのですが、その式は通説の式に1/1.8083が掛けかれた形をしています。

つまりは「通説よりは寿命が1/1.8倍ほど短く計算される」のです。そうしてそれは最新のレポート:Hawking radiation and black hole
thermodynamics*
:by Don N Page 2005 New J. Phys. 7 203:に基づいている、と言うのがビクターViktorさんの主張です。(注1)

そうであれば「ホーキング計算機の寿命計算結果を通説の計算値に戻すには1.81倍すればよい」という事になります。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

さてそれで、以上がビクターViktorさんの「ホーキング計算機の紹介」なのですが、「あとがき」に登場してくる『ブラックホールの効果的な吸収面積(したがって放射面積)は、事象の地平面積に対応する4πR^2よりもはるかに大きく、実際には27/4倍大きくなります。これは大きな(6.75倍の)増加をもたらす可能性がありますが・・・』について以下、説明になります。(ちなみに27/4は6.75です。)

通常の寿命式はホライズンの表面を黒体の表面と見なし、そこから熱放射によってエネルギーが放射される、という前提で計算されています。

そうしてここでビクターViktorさんが指摘している事は「実はホライズン表面だけを考えたのではダメだ」という研究結果がDon N Pageの2005年の論文にあり、それを考慮した修正を行っている、というものです。

 

それから同様にして「ホーキング放射ではホライズン上空の空間まで考慮しないといけない」という論文に

Hawking radiation, the Stefan-Boltzmann law, and unitarization
Steven B. Giddings

ホーキング放射、シュテファン・ボルツマンの法則、および統一
[2015年11月25日(v1)に提出、2016年1月12日最終改訂(このバージョン、v3)]

があります。

それでこの論文を一部訳出したものが

ホーキング放射とブラックホール・50・ホーキング放射、シュテファン・ボルツマンの法則、および統一

にあります。

そうしてこの論文でGiddingsさんが主張している内容と当方が提示しているホーキング放射の空間放射モデルの関連性を説明したものが

ホーキング放射とブラックホール・52-1・ホーキング放射はどこから発生しますか?(2)

になります。

Giddingsさんはホーキング放射がでてくる場所は「シュワルツシルト半径Rsから始まって(但しホライズンそのもの:その場所は含まずに)Ra=3*sqrt(3)/2*シュワルツシルト半径=2.5981*シュワルツシルト半径つまりシュワルツシルト半径の約2.6倍の位置までの空間である」としています。

この2.5981*ホライズン半径がつくる球の表面積はホライズンの表面積の6.7501倍になります。

6.7501=(2.5981)^2

この数字がビクターViktorさんの記事にある

「実際には27/4倍大きくなります。これは大きな(6.75倍の)増加をもたらす可能性がありますが・・・」

の説明となります。

 

さてそれで、Giddingsさんが主張している数値、2.5981は当方が主張するホーキング放射の物理モデルから算出される補正係数に換算した場合には、当方の主張と驚くほどの精度で一致しているのです。(注2)

それはつまり「Giddingsさんが考えているホーキング放射の物理モデル」と「当方が主張するホーキング放射の物理モデル」は結果的に同じ結論に至っている、という事を示しています。

 

注1:ホーキングがホーキング放射を定式化したあとですぐにそれを使ってBHからどのような素粒子がホーキング放射として飛び出してくるのかを考えたのがDon N Pageでした。そうしてまさにその人が2005年でもBHの研究に携わっている、というのは感慨深いものがあります。

ちなみにDon N PageはBHのページ時間を最初に言い出した方の様です。

注2:2つのモデルの補正係数に換算した場合の値の比較

Giddingsさんが主張している数値、2.5981からは

積分範囲1から2.5981で   0.101733 を得ます。

一方で当方は3.0で十分としました。その場合は

積分範囲1から3では   0.10179

ちなみに無限遠までの積分をとりますと

積分範囲1から無限では  0.10183  となります。

なおこの補正係数の意味詳細につきましては

ホーキング放射とブラックホール・52-1・ホーキング放射はどこから発生しますか?(2)

を参照願います。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/tJNZF

 

コメント