宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

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その7・ホーキング放射のメカニズム

2023-03-15 10:48:45 | 日記

さて最初にホーキング放射を定式化したのがホーキングで、それがこの論文です。

ホーキングの原論文は「Particle Creation by Black Holes」Received April 12, 1975:Commun. math. Phys. 43, 199--220 (1975) でありそれは

https://link.springer.com/article/10.1007/BF02345020 のページからダウンロードできます。

そこで展開されているSchwarzschild ブラックホールのホーキング放射のポイントのみ抜き出して解説したものが

Hawking 輻射とブラックホールの蒸発 になります。そうしてこの論文でさえ数式運用を含めて理解するのはなかなか大変な事です。(注1)

まあ専門家の皆さんが仲間内に話す文章、説明というのはこんなものなのでしょう。ホーキングの論文でも説明に出てくる絵はペンローズダイアグラムであり、そんなもの我々が見方を知る訳もありません。

そういう訳で、専門家以外にとってはいまだホーキング放射は「謎の放射」なのであります。あるいは専門家の中においてでさえ「合意された物理的なホーキング放射のモデル:描像は存在していないかの様」であります。(注2)

 

そうして、簡略かつそれなりに詳細な説明は「ホーキング輻射って正しいんですか?」のベストアンサーではない3番目の
pis***さんの説明、「ホーキング輻射は正しいと思いますが、正しくない説明を見かけます。・・・」が良さそうです。(注3)


内容詳細につきましては元記事を参照していただく事として、その中でBHから出てくる(様に見える)粒子についての言及があります。
『ブラックホール近辺から、あたかも、温度がkT=h/4πRであるようなエネルギー分布で粒子が放出されるのが見えます。
これがホーキング輻射です。
(引用注:ここでのhはプランク定数を2πで割ったもの。RはRs、シュワルツシルト半径)
このとき、どういう粒子が出てくるかは、たとえば
Particle emission rates from a black hole; Massless particles from an uncharged non-rotating hole
Don N. Page
Phys. Rev. D 13 P.198 (1976)
によれば、ニュートリノ:81%、光子:17%、重力子:2% となっています。』

そうして、このホーキング放射の説明のポイントはここです。

『この結果、生成消滅演算子も、空間が平らでないと、形を変えます。
空間が曲がっているときの消滅演算子をa'とすると
a'=αa-βa†
というように、ボゴリューボフ変換で結ばれます。』

「ボゴリューボフ変換」、難しい言葉ですねえ。(注4)
しかしどうやらこれがホーキングさんがBHのホライズン近傍の重力場についてやった事のポイントの様です。

その結果、BHから離れた所から見ているとBHのホライズンで仮想粒子のペアが発生し、その半分がBHに落ち込む事で
『あたかも、温度がkT=h/4πRであるようなエネルギー分布で粒子が』BHのホライズンで生成されている様に見えると言う訳です。
これはBHの存在によって空間が曲げられた効果の結果であり、BHの存在が原因でその結果として粒子の放出が観測される、と言う事になります。

以上の説明がホーキング放射の説明としては良さそうですが、この方の説明の最後の部分、エネルギーバランスについての説明には疑問が残り、同意しかねます。

あるいは数式を使わずにホーキング放射を説明した、次のような記事もあります。

ブラックホールが蒸発するとはどういうことですか?

https://archive.md/raDU0

この記事の中で特に注意が引かれたのは以下のぶぶんです。

『・・・ブラックホールがホーキング放射を行うという結果は、曲がった時空上の量子論という折衷理論で積分を行う際に、特異点を避けて時間が虚数となる領域に解析接続することによって得られます。

仮想粒子ペアの一方がホールに落ち込むのは、物質が重力に引き寄せられるという通常の物理過程ではなく、時空構造に特異性があることの帰結であるため、ホーキング放射はブラックホールだけで生じます。

しかし、折衷理論に基づく計算法が本当に正しいのか、現時点ではまだ結論が出ていません。

この計算結果は厳密な理論が持つ性質を近似的にうまく取り入れたもので、世界の根底にある数学的秩序を反映していると考えられます。

今後、CERNによるLHCで予定されている、ミニブラックホールの生成と消滅の実験結果によっては「ブラックホールの蒸発理論」の正しさが明らかにされるかもしれません。』

ちなみに現時点では「CERNによるLHCで行われた、ミニブラックホールの生成と消滅の実験結果はヌル」、BHは検出されませんでした。(注5)

 

さてここであげた記事(複数)によってホーキングがどのようにしてホーキング放射を定式化したのか、まあ感触だけでもつかんでいただければ当初のもくろみは達成できた事になります。

 

注1:http://astro-wakate.sakura.ne.jp/ss2013/web/syuroku/grcosmo_24a.pdf

寿命式の算出も載っていますが、但しこの論文の導出手順にはちょっとしたタイプミスがある様です。

そうして、こちらの導出手順の方が正確の様です。

ホーキング放射計算機  https://archive.fo/oR6u6

ホーキング計算機で実際のBHの寿命計算が出来ますが、一般的に使われている式に対してこの計算機出力の寿命値には補正係数 1/1.8083 がかかっています。

それで、通説の計算結果に戻すには計算機の値に 1.8083 を掛ければ良い、という事になります。

注2:たとえば ブラックホール/ホーキング放射:反粒子のみをキャプチャする理由: https://archive.md/7BXzN : の様な議論があります。

あるいはそこで紹介されている様な ブラックホールの地平線ではホーキング放射は発生しません。: https://archive.md/TAfYT : そういう議論もあります。 

あるいは ホーキング放射はどのくらい正確にブラックホールの質量を減少させますか?: https://archive.md/6lwmb :の様な議論もあります。

あるいは ホーキング放射: https://archive.md/sIfO1 :の様な議論もあります。

注3:アーカイブは: https://archive.md/oU4CT :にあります。

なおホーキング放射メカニズムについては3番目の回答の仕方が主流ですが、4番目の投稿にある指摘「仮想粒子が実粒子になるためには外部からエネルギーを与えなければならないはずです。外部からエネルギーが与えられない限り、仮想粒子が実粒子に変わる過程は起こりえません。」もホーキング放射にとっては本質的であると思われます。

注4:ボゴリューボフ変換: https://archive.md/hLtYF :を参照ねがいます。

注5:ミニブラックホール: https://archive.md/HXTbo :を参照ねがいます。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/Ietmo

 

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