宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論 etc etc

その8・ホーキング放射のメカニズム

2023-03-18 03:10:53 | 日記

前述したように最初にホーキング放射を定式化したのがホーキングで、それがこの論文です。

ホーキングの原論文は「Particle Creation by Black Holes」Received April 12, 1975:Commun. math. Phys. 43, 199--220 (1975) でありそれは

https://link.springer.com/article/10.1007/BF02345020 のページからダウンロードできます。

さてその前の論文は

Black hole explosions?:ブラックホールは爆発する?
S. W. HAWKING 
Nature volume 248, pages30–31 (1974):Published: 01 March 1974(注1)

https://www.nature.com/articles/248030a0

ここでホーキングは『この論文の目的は、これが実際に当てはまる可能性があることを示すことです。

どのブラック ホールも、ニュートリノや光子などの粒子を生成し、ブラック ホールが温度を持つ物体である場合に予想される速度で放出するようです。 (κ/2π) (ħ/2k) ≈ 10^−6 (M/M)K 。ここで、κ はブラック ホールの表面重力です。

ブラック ホールがこの熱放射を放出すると、質量が失われることが予想されます。 これにより、表面重力が増加し、放出率が増加します。 したがって、ブラック ホールの寿命は 10^71 (M/M)^−3 秒程度です。

太陽質量のブラックホールの場合、これは宇宙の年齢よりもはるかに長い. しかし、初期の宇宙のゆらぎによって形成された、はるかに小さなブラック ホールが存在する可能性があります 。 そのような質量が 10^15 gr 未満のブラック ホールは、今では(すでに)蒸発しているはずです。

寿命が近づくと、放出率は非常に高くなり、最後の 0.1 秒で約 10^30 エルグが放出されます。 これは天文学的な基準ではかなり小さな爆発ですが、約 100 万個の 1M トン(=1メガトン)の水素爆弾に相当します。・・・』

どうやら歴史的にはNatureへの投稿が先行した模様です。

 

そうしてこれらの論文を受けてドン・N・ペイジが1975 年 8 月 18 日受領で投稿した論文がこれです。物理。Rev. D 13、198 – 1976 年 1 月 15 日発行(注2)

「ブラック ホールからの粒子放出率: 帯電していない非回転ホールからの質量のない粒子」: https://journals-aps-org.translate.goog/prd/abstract/10.1103/PhysRevD.13.198?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc :

『ホーキング博士は、ブラック ホールが表面重力に比例した温度を持っているかのように粒子を放出すると予測しました。

この論文は、ホーキングの量子形式とテウコルスキーとプレスのブラックホール摂動法を組み合わせて、既知の質量のない粒子の放出率を計算します。

数値結果は、ブラックホールの質量が M≫10^17gr は総電力出力を放出する必要があります 2×10^−4×ℏc^6×G^−2×M^−2、そのうち 81% はニュートリノ、17% は光子、2% は重力子です。

これらの速度と、より小さなブラックホールからの大量の粒子の放出速度の推定値を組み合わせることで、質量Mが M<(5±1)×10^14gr.の原始ブラック ホールは(すでに)現在の宇宙の時代に崩壊したことを推測できます。』

そのペイジの次の論文がこれです。物理。Rev. D 14、3260 – 1976 年 12 月 15 日発行

「ブラック ホールからの粒子放出率。Ⅱ.回転ブラック ホールからの質量のない粒子」: https://journals-aps-org.translate.goog/prd/abstract/10.1103/PhysRevD.14.3260?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc :

『このシリーズの最初の論文 (非回転ブラック ホールの場合) の計算は、回転するブラック ホールからの質量のない、またはほとんど質量のない粒子の放出率と、その結果としてのブラック ホールの進化にまで拡張されています。

放出されるパワーは、ニュートリノの場合は 13.35 倍、光子の場合は 107.5 倍、重力子の場合は 26 380 倍まで、ブラック ホールの角運動量の関数として増加します。

角運動量はエネルギーの数倍の速さで放出されるため、急速に回転するブラック ホールは、その質量のほとんどが失われる前に、ほとんど回転しない状態までスピンダウンします。

ブラック ホール力学の第 3 法則は、荷電していないホールの小さな摂動について証明されており、極端なカー配置までホールをスピンアップすることは不可能であることを示しています。

ブラック ホールが十分に速く回転している場合、その面積とエントロピーは、エルゴスフィアで作成された粒子ペアから熱がブラック ホールに流れ込むため、最初は時間とともに増加します (極端なカー配置では無限の割合で増加します)。

回転が減少するにつれて、熱放射が支配的になり、ブラック ホールから熱が引き出され、その面積が減少します。

特定の質量のブラック ホールの寿命は、最初の回転によって 2.0 ~ 2.7 倍しか変化しません (どの粒子種が放出されるかによって異なります)。

初期質量が 5 ×10^14gr の回転しない原始ブラック ホールの場合は現在の宇宙の時代にちょうど崩壊し、最初の質量が約 7 ×10^14grで 、最大回転で作成された原始ブラック ホールの場合は今、ちょうど死んでいたでしょう。

より大きな質量で作成された原始ブラック ホールは現在でも存在しますが、最大回転速度は現在の質量によって一意に決定されます。今日、それらが十分に小さくて多くのハドロン(注3)を放出している場合、それらはほとんど回転しないと予測されます。』

 

さてホーキングは『どのブラック ホールも、ニュートリノや光子などの粒子を生成し、』といずれも質量がゼロのボゾン、フェルミオンを対象にしたホーキング放射の導出であった事を認めています。(注4)

そうしてまた、それを受けたペイジの論文でも『そのうち 81% はニュートリノ、17% は光子、2% は重力子です。』といずれも質量をもたない素粒子の放出としてホーキング放射をとらえていた。

しかしながらペイジはその次の論文では『今日、それらが十分に小さくて多くのハドロン(注3)を放出している場合、それらはほとんど回転しないと予測されます。』として「ホーキング放射が質量をもつ複合粒子を放出できる」としている。

さて、これはつまり「BH近傍の空間が曲がった場所の真空の揺らぎによって質量をもつ複合粒子の仮想粒子の対生成が可能である」と主張している事になります。

 

注1:ちなみにこのホーキングの論文の引用回数は: https://archive.md/AejyW :にあります。

それを見ますと2018年以降の急激な伸びが確認できます。

つまり「近年になってまたホーキング放射に相当な注目が集まっている」という事が言えそうです。

注2:ちなみにこのペイジの論文の引用回数は: https://archive.md/QhF8e :にあります。

それを見ますと・・・以下同上。

注3:「ハドロン」とは: https://archive.md/rBC6O :

『「ハドロン」とは素粒子・原子核物理の用語で「強い相互作用で結合した複合粒子」という意味です。身近な存在として、原子核を構成する陽子・中性子のようにクォーク3個から構成される粒子(バリオン)や、湯川博士の中間子論で有名なπ中間子のようにクォーク2個から構成される粒子(メソン)等があります。これらの強い相互作用を行う粒子を総称して「ハドロン」と呼びます。』

注4:ホーキングが放射を定式化した時代にはニュートリノは質量がゼロである、とされていた。しかし現時点では「ニュートリノは質量がゼロではない」とされています。

さてそれで、ホーキング放射で放出される素粒子の質量がぜろである場合は、放出元のBHの重力場がどれほど強くとも、BHがつくる重力の井戸をホーキング放射は上り切る事ができる、と想定する事は妥当であるように見えます。

そうして実際、ホーキングはそのような前提でホーキング放射を定式化している様にみえます。

ただし、その様なBH井戸の底からのぼってきたホーキング放射のもつエネルギーは重力井戸を登るのに相当する分だけ減少している事は間違いないと思われます。

重力赤方偏移: https://archive.md/G3mqt :を参照願います。

『重力源に近い(「重力ポテンシャルが深い」)ところから放出された光を重力源から遠く離れた(「重力ポテンシャルが浅い」)場所で観測すると,振動数が小さいほうへ変化して観測される。

振動数  が小さくなれば波長 λ が大きくなる(伸びる)。』

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧
 
https://archive.md/URIlw
 
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