これ!どう思います?

マスコミがあまり報道しない様な問題を、私なりに考えてみます。

自動車業界 (その4)

2023-01-21 12:33:42 | 工業技術
【はじめに】
 今回はドイツの自動車業界について書きます。

 第二次世界大戦後、自動車の生産と言う点ではアメリカが圧倒的な力を持っていましたが→→日本、ドイツ、イギリス、フランスなどで自動車メーカーが成長し→→国際競争が激化して→→日本とドイツの企業が一馬身ほど先行する様になりました。

 ハイブリッド自動車が普及し始めると→→日本が先頭に躍り出る様になり→→欧米諸国は環境問題を理由にして→→数年後には電気自動車(EV)しか販売出来ない規制を設けました。 今後10年以内に、世界の自動車産業は大きく変化すると私は予想しています。

【ドイツの自動車業界】
 ヨーロッパにおける自動車業界は、ドイツの一人勝ちの状態になっています。

 ベンツは安全性に力を入れてきました。1996年に出向した中小企業の社長から、「車を買い替えたいので、車種を選んで欲しい」と依頼されました。私は、(その少し前に)車の安全性について詳しい、英文の雑誌を読んでいたので、エアバック付きのベンツ車を推奨しました。ベンツは高級車のイメージが強いので、「顧客からそんなに儲かっているのなら、負けてくれと言われる」と社長は言われましたが、「私が事故で死んだら、会社が潰れてしまうので無理して買った!と答えて下さい」とアドバイスしました。

 予想通り、「負けてくれ」と言う要求が有りましたが、社長は何時も私がアドバイスした答えを返していました。社長の車に月に何回か同乗させて貰いましたが、車体下の温度が表示され→→露結の可能性が確認できました。高速道路のカーブを曲がる時→→殆どハンドル操作が不要でした。カーナビでテレビが受信出来ましたが、運転中は受信出来なくなっていました。座席ヒーターが有ったので、寒いシーズンには助かりました。

 フォルクスワーゲンは株式公開会社ですが、ポルシェ・オートモービル・ホールディングが株式の『53%』を保有しています。ポルシェ一族と傍系のピエヒ一族がポルシェ・オートモービル・ホールディングの株式を『100%』保有しています。従って、フォルクスワーゲンは実質的にはポルシェ一族とピエヒ一族が共同経営しているのです。

(注記 :アウディ) 〇四つマークのアウディ車は日本でも良く見かけますが、1964年からフォルクスワーゲンの巨大な子会社です。フォルクスワーゲングループで高級車を製造しています。

(注記 :ポルシェ) ポルシェもォルクスワーゲンの子会社で、スポーツカー、SUV(スポーツ用多目的車)、セダンを製造しています。

・・・ ドイツに本社の有る自動車会社 ・・・
★ フォルクスワーゲン
★ メルセデス・ベンツ
★ ダイムラー・トラック :メルセデス・ベンツ・グループ
★ BMW
★ アルピナ :アルピナ社は、BMWが製造した車に、手作業で改造して販売している。年間販売台数は1,700台ほどで、その内・約400台を日本に輸出しています。
★ フンケ&ヴィル  :ブランド名はYES!(小型スパーツカー) ・・・現在は生産していない模様
▲ フォード・ジャーマニー :フォード社の現地法人
▲ オペル :ステランティスの子会社

【ドイツの国際問題】
 2005年~21年の間ドイツの首相だったメルケル氏は、『経済安全保障』と言う考え方が欠如していた様に思います。 中国の購買力に頼り過ぎ、ロシアの地下資源を偏重し過ぎました。 私には、危なかっしい『近欲』の政策を実行している様に思っていました。

 2018年から米中貿易摩擦の問題が発生しました。2021年に大統領がトランプ氏からバイデン氏に交代して→→貿易摩擦問題はあまり話題にならなくなりましたが→→習近平氏が台湾に侵攻する可能性が高まったので→→米中間の軍事衝突への対応が必要になってきました。

 米中間の緊張が高まって来たら→→アメリカは中国包囲網を構築しようと画策して→→ドイツはアメリカ側に付く事が要求され→→ドイツと中国間の貿易は縮小すると予想します。

・・・ ドイツの貿易額 ・・・ 2021年
★ 輸出 :中国≒1,036億ユーロ、 アメリカ≒1,221億ユーロ ・・・輸出総額≒1兆3,754億ユーロ
★ 輸入 :中国≒1,417億ユーロ、 アメリカ≒ 721億ユーロ ・・・輸入総額≒1兆2,025億ユーロ

 2022年2月にロシアがウクライナに侵攻して、ドイツを含むNATO(北大西洋条約機構)はウクライナに武器を支援し、ロシアに経済制裁を加えました。ドイツで使用していた天然ガスの『60%』はロシアからパイプラインで送られていましたが、ロシアは対抗処置としてパイプラインを閉鎖しました。その為、ドイツは大金をはたいて天然ガスを買いあさり、今年の冬は何とか切り抜けそうにな状況の様です。

 『ウクライナ戦争が、早期にウクライナの勝利で終わって欲しい』と、NATO諸国の中でドイツが一番望んでいると私は見ています。

 ウクライナは、ドイツ製戦車『レオパルト2』の支援を強く望んでいます。ポーランドとスペインが供与する意思を表明しましたが、ドイツの承認が必要な様です。今の所、ドイツは承認しそうに有りません。 アメリカが供与を検討しているハイマースの射程150km弾(GLSDB)と、ポーランドなどがレオパルト2を多量に供与したら、今年中にウクライナが勝利して、戦争が終結しそうに思います。

(悲惨な映像を見て考える事!) テレビやインターネットでウクライナ戦争の映像が沢山見られます。住宅がガレキの山になっていて、畑は穴だらけです。ウクライナの復興は大変だと思います。ウクライナの民間人と両国の兵士が毎日沢山亡くなっています。日本を含む欧米諸国は、一日も早くロシア軍をウクライナから撤退させる様に、兵器を供与すべきだと思います。

【ドイツの電動自動車(EV)の問題】
 欧米諸国は、騒音規制と排気ガス規制を強化する方針を打ち出しました。2022年11月に欧州委員会が発表した新排ガス規制では、タイヤの摩耗やブレーキで発生する『粉』も規制しています。 これらの規制をガソリン車やディーゼル車でクリヤーする為には、研究/開発に巨額の投資が必要になると予想され→→欧米諸国は電動自動車(EV)の普及に舵を切りました。

 ハイブリッド自動車は燃費、排気ガス、騒音の総合得点が高いですが、日本の自動車メーカーが先行しているので、日本との競争を避ける為に、欧米諸国はハイブリッド自動車では達成出来ない規制にしたのだと思われます。

 然し、EVは中国が先行しており、近年インドが安いEVの輸出を始めています。欧米諸国は中国とインドとの競争には勝てると考えているのでしょうか? 甘い!甘い! 国家間の貿易戦争に勝つためには、(日本もそうですが!)国を挙げた取り組み/努力が必要です。

 ドイツのEV化には、日本以上に重大な問題を沢山抱えています。・・・電力需要の増大、半導体とリチュウムイオン電池の生産・・・などなど。

《課題 :ドイツの電力需要の増大対策》 電動自動車(EV)が増加すると→→電力需要も増加するので→→発電設備を増やす必要が有ります。ドイツは脱原発政策を進めてきたので、風力発電と太陽光発電で対応しようとしています。 昨年(2022年)に法律を改正/制定して『新発電計画』に取り組み始めました。

 風力発電には、❶発電量が『風』任せ、❷低周波騒音が発生する、❸野鳥の衝突死、➍景観の悪化・・・などの問題が有るので、政府の方針通りに事が進むとは考えられません。

 九州電力の試算では『100万kW』の太陽光発電所を建設する為には『58km2(山手線の内側面積とほぼ同じ)』もの面積が必要です。2030年の目標値『21,500万kW』を達成するためには、ドイツの国土の『3.5%』にパネルを張り巡らせる必要があります。景観破壊など・・・種々の問題が発生しそうに思います。

・・・ 2022年に発表したドイツの新発電計画 ・・・
★ 太陽光   :2021年≒5,890万kW→→2030年≒21,500万kW
★ 陸上風力 :2021年≒5,620万kW→→2030年≒11,500万kW
★ 海上風力 :2021年≒ 770万kW→→2030年≒ 3,000万kW
● 年間発電量:2021年≒240兆Wh→→2030年≒600兆Wh
出典 :自然エネルギー財団・一柳 絵美『ドイツ 自然エネルギー拡大加速に向け法律一式を採決』

(注記 :脱原発政策) 1988年からドイツは脱原発政策を進めて来ました。メルケル氏は一時、脱原発政策を見直しましたが福島原発事故(2011年)によって、脱原発政策に戻らざるを得なくなりました。17基有った原発を2020年までに全て廃止すると決定しました。 2022年末の時点では、3基稼働していた様です。その内2基を2023年4月まで運転出来る様にしておく事になっています。

《課題 :ドイツの半導体メーカー》 ヨーロッパ諸国は半導体に力を入れて来なかったので、現在、種々の産業で半導体不足が問題になっています。近年、半導体の重要性に気付いて、EU全体で製造体制を発展させようとしています。

 ドイツには、半導体メーカーが①インフィニオン・テクノロジーズ、②カールツァイスSMT、③シルトロニックの3社が有ります。 インフィニオン・テクノロジーズは、2021年の半導体売上高が世界第10位でした。(日本の『キオクシア』とほぼ同じ売上高でした。) 他にエルモス(Elmos Semiconductor)と言う企業が有りますが、車用の照明(LED)を製造しています。

(注記 :ASML社) オランダにはエーエスエムエル(ASML)と言う半導体製造装置メーカーが有ります。露光装置の世界シェアが『80%以上』も有る様です。 然し、オランダには半導体メーカーが育っていません。 最新鋭の半導体工場を建設する為には、ASML社、日本とアメリカの企業から装置を購入する必要が有るのです。

《課題 :ヨーロッパのリチュウムイオン電池》 ヨーロッパ諸国はリチュウムイオン電池の製造もなおざりにして来ました。ヤット近年、リチュウムイオン電池工場が多数建設される様になって来ています。

 先行する中国は、リチュウムイオン電池に必要な地下資源の確保に、国家として取り組んでいます。周回遅れの様に思えるヨーロッパで、リチュウムイオン電池産業が発展する為には、各国が相当努力する必要が有ると私は見ています。

【ボッシュ :不思議な企業】
 ドイツには『ボッシュ(Bosch)』と言う、巨大な自動車関連部品などを製造する会社が有ります。日本にも『ボッシュ(株)』と言う子会社が有って、埼玉県や群馬県などに工場を所有しています。

 大昔、私は非常にユニークで素晴らしいボッシュ製品を購入した事が有り、その時・ボッシュ社について勉強しました。考えられない様な、ユニークな会社です。株式の92%を、慈善団体の『ロバート・ボッシュ財団』が所有して、配当金の大半を受け取っています。(従って、非上場会社です。)

 ロバート・ボッシュ財団には『議決権』が有りません。『ロバート・ボッシュ工業信託合資会社』と言う、『1%』しか株式を所有していない組織が有って、議決権の93%を保持する事になっています。従って、ロバート・ボッシュ工業信託合資会社がボッシュ社の経営を行っています。経営理念は『長期的に社会貢献できる経営を行う』です。 (ボッシュ一族が『7%』所有していますが、原則として一族は経営に口出ししない事になっています。)

 毎年、巨額の金を研究開/開発に投資して→→新製品を上市して→→会社を発展させて来ました。ボッシュは、こういう経営体制を80年間も続けています。資本主義社会でもボッシュの様な企業が存続出来るのですね! 『目から鱗が落ちる』様に思いました。

 ロバート・ボッシュ財団は、所有する病院の運営、教育、国際協力などなどに配当金を使用しています。 

・・・ ボッシュとトヨタグループのデンソーの比較 ・・・
★ ボッシュの従業員数≒40万人(2021年)、デンソー≒16.8万人(2022年連結)
★ ボッシュの売上≒10.2兆円(2021年)、デンソー≒5.5兆円(2022年)


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