【はじめに】
最近、アメリカでは木材価格が6倍に高騰しているそうです。日本でも2倍になっていると言う報道が有りました。 普通の製品は価格が2倍、3倍になったら供給量が増えてきますが、木材の場合は簡単には増産出来ません。
日本の国土の『2/3』は森林で、少し郊外に行ったら緑豊かな森林が見えます。 然し、多くの方は森林についての知識を殆ど持っていない様です。 「木材価格が高騰している今だったら、森林に興味を持って頂けるかも?」と考えました。 それで、数回に分けて私の考えを投稿する事にしました。
【森林の役割と政策】
人間にとっての森林の役割は、時代とともに大きく変化して来ました。 縄文遺跡が世界遺産に登録されようとしていますが、縄文人達は森林の中で生活していました。 弥生時代になると、森林の一部を開墾して、田畑にしました。 大きな集落が出来て、更に都市が出来ました。 日本では都市の住宅は木造で、燃料は薪か炭でしたから、森林無しには成り立たない生活を続けて来ました。
森林と人間の関係が大きく変化したのは明治以降です。 特に、第二次世界大戦後には、鉄筋コンクリート造の住宅が増えて、都市ガスが普及したために木材の需要が減って、更に安価な外材の輸入が盛んになって、木材価格が低迷する事になりました。 1980年頃までは、森林の経営は国からの補助金が無くても成り立っていたと思います。
然し、国は相変わらず、杉や檜の植林面積を増やす政策を続けました。植林には適さない様な山にも杉や檜を植える様になり、コストパフォーマンスを無視して林道を整備し続けました。 植林したのに、枝打ちや間伐をしない山が増える問題が発生して来ました。 そして、結局、林業は補助金漬けでやっと維持出来る様になってしまったのです。 国民の多くが森林に興味を示さなくなったので、お粗末な政府のやり方を問題にする報道は今まで無かったのだと思います。
【林業従事者】
色々な原因で木材価格が低迷し続いた為に、林業で生計を立てるのが難しくなって来ました。 現在、林業従事者は激減しており、更に高齢化が進んでいます。
後述の様に国土の『2/3』は森林ですが、そこで働いている人は、たったの45,000人しかいません。 その上に高齢化が進んでいますから、国民全員で知恵を出しあって真剣に考える必要が有ります。 上級国家公務員試験(国家公務員採用総合職試験)に、森林についての問題が含まれるとは思えません。与野党の議員も森林についての知識が有るとも思えません。このまま放置したら、大切な森林が無茶苦茶になってしまいます。
★ 2015年 :林業従事者= 45,000人 ;65歳以上25%
★ 1955年 :林業従事者=519,000人 ;65歳以上 4%
【日本の森林面積】
森林面積は2,500万ha(=25,000,000ha)です。 現在の林業従事者は45,000人でしたから、単純計算すると一人が556ha(=5.56km2)管理している事になります。 一人・平均・1km✕5.56kmの面積を管理するのは無理です。
国有林は林野庁が管理しています。 職員数は4,700人ほどいますが、国有林の管理(植林、伐採、搬送など)だけでなく、木材の需要/供給データの収集、森林行政等々を行う役所ですから、要員不足だと思われます。
★ 国土 :3,780万ha
★ 森林 :2,500万ha (国土の66%)
★ 林野庁が管理する面積 :759万ha(森林の30%)・・・国立公園を含む
★ 民間が所有する面積 :1,741万ha(森林の70%)
(余談 :御料林) 江戸幕府の直轄だった木曾などの優良な山林は、明治になって皇室の財産になり『御料林』と呼ばれていました。 一部は民間に払下げられましたが、1900年(明治33)時点では140万haも有りました。 戦前の皇室は豊かだったのです。 敗戦後に御料林は国有化され、国有林に含まれる事になりました。
(余談 :林野庁) 農林水産省の外局に林野庁と言う機関が有ります。 その使命は、「森林の保続培養、林産物の安定供給の確保、林業の発展、林業者の福祉の増進及び国有林野事業の適切な運営を図ること」となっています。 お題目は立派ですが、非営利団体が難しい森林の問題に取り組んでも、成果は上がらないと思います。
【民間が所有する山林】
1947年にGHQの指導で農地解放が進められました。 地主から小作地を取り上げて、農地(田と畑)を小作人に分け与えました。 然し、山林は農地では有りませんから、山林地主は生き残りました。 木材価格が低下して、高額の相続税が要求されるなどによって、大山林地主は激減しました。
農地を企業が購入することは禁止されて来ましたが、山林は企業が自由に売買出来ます。 王子製紙が日本一の山林所有企業です。 個人では、三重県の諸戸家が最大の山林所有者です。
① 王子製紙 :19万ha
② 日本製紙 :約9万ha
③ 三井物産 :約4.4万ha
④ 住友林業 :約4.2万ha
⑤ 木原造林 :約2万ha
⑥ 東京電力 :約1.8万ha
⑦ 北越紀州製紙 :約1.3ha
⑧ 岩崎産業 :約1.2万ha
⑨ ニッタ :約0.67万ha
⑩ 三井不動産グループ :約0.5万ha
⑭ 諸戸林業 :約0.28万ha・・・日本の森林王(三重県桑名市)
出典 :『今年は「国際森林年」 主要32社の社有林 所有・利用状況』・・・2011年
https://www.dai3.co.jp/_old_hp/rbayakyu/23th/times/news21.htm
【一家が生活出来る森林面積】
朝鮮人参は栽培に6年、休耕に6年必要で、12枚の畑を所有していても1年には一枚でしか収穫出来ない様です。 杉や檜は植林して伐採まで、一般に50年~60年、良質の木を得るためには100年以上掛かります。
単位面積当たり何本・木を植えられるか?を『栽培密度』と呼びます。 杉や檜は2,000~3,000本/ha程度です。 『1ha』は『1町歩=3,000坪』で、『100ha』は1平方キロメートル(1km✕1km)です。
50年~60年間育てた杉の平均価格は『6,000円/本』ほどだと言う記事が有りました。他人の手を借りないで、一家で全ての山仕事をするとして、経費=400万円、生活費=600万円とすると、合計=1,000万円になります。 この収入を得るためには、毎年1,670本(≒1,000/0.6)伐採して、出荷する必要が有ります。 栽培密度を2,500/haと仮定すると、1年の伐採面積は0.67haになります。
50年間隔で伐採すると仮定したら、一家で34ha以上所有して/手入れする必要が有ります。 平坦な山林だったら可能ですが、急峻な山では難しいと思います。 木材価格が2倍ほどにならないと、国の補助金無しでは山林経営は成り立たないのだと思います。
(余談 相続税) 永続的に(何世代にもわたって)農業や林業で生活出来る様にする為には、(浅薄な)民主主義には反しますが、専業農家や専業林業家から相続税を取ってはいけないのです。 2008年から『事業継承税制』が始まり、町工場や個人商店などでは、代替わりに商売が続けられる様に、相続税等が軽減されました。 更に、2019年には『個人版事業承継税制』で個人の事業用資産については相続税は免除される様になっています。 「この考え方を農業や林業にも適用すべきだ!」と言うのが私の主張です。
子供二人の裕福な農家で、100と言う面積を所有していたとします。 相続税が40%だと仮定し、土地で相続税を支払う(現物納付する)とします。 旦那さんが亡くなると、40%は国に、30%は奥さんが、子供は15%ずつ相続する事になります。奥さんが亡くなると、子供は元の100有った面積の24%しか相続出来なかった事になってしまいます。これでは、家業を継ぐことは不可能です。
田畑は分割相続したら『田分け者』と軽蔑されました。山林も分割相続したら経営が成り立たなくなってしまいます。相続税が免除される様になったとしても、家業を継ぐ為には田畑や山林は分割してはならないのです。
明治の終わり頃まで日本には相続税は有りませんでした。日露戦争の戦費を調達する為に1905年に相続税が徴収される様になったのです。 「資産家の子供が親から相続した金で豊かな生活を送るのはけしからん、沢山相続税を取って貧乏人に回すのが民主主義だ」と考えられている方が多いいですが、民主主義思想なんか無い時代に戦費を調達する為に設けられた制度です。
国民にとっても国家にとっても、個人企業、農家および林業家の継続は大切です。 戦後の歴代の政府は、「農協や森林組合を支援すれば、農家と林業家が存続出来るだろう!」と安易に考えて来た様に思います。 結局・政府の優遇処置や補助金漬け政策は、農協や森林組合の役員や従業員の生活を安定させただけです。農家や林業家は豊かにならなかったのです。 『百害あって一利なし』の政策だったと私は見ています。
【森林組合は税金で成り立っています!】
日本・各地に森林組合(組合員数=153万人)と生産森林組合と言う組織が有ります。 森林組合は、山林所有者から委託された山林を、ほぼ国からの補助金を使って経営しています。
本来は山林所有者が自分の金を使って木を植えて/育てるべきですが、木材価格が低迷しているために、植林費用とその後・40年間(?)に必要な費用を(ほぼ全額)国が面倒を見てくれる様になっています。 山林の所有者の多くは、都会に住んでいたりして、自分で山仕事出来ませんので、森林組合に管理を委託しています。
一般国民は、「自分達が納めた税金で生産した木材を、自分の金で買う」と言う、何か割り切れない事になっています。 「新緑は綺麗だ!」、「紅葉はいつ見ても素晴らしい!」と感嘆される方に、「あの山は、貴方が納めた税金で維持しているんです」と国は説明すべきです。 「新緑も紅葉も要らない、税金を安くして!」と言う国民は殆どいないでしょう!
この美しい緑豊かな風景を子孫に残すためには、政治家や官僚達に丸投げしないで、「国民全体の重要な問題だ!」と認識する必要が有ります。
【龍神村森林組合】
私の故郷は和歌山県田辺市龍神です。 合併前は龍神村だったので、森林組合の名前に『村』が残っています。 典型的な過疎地です。
龍神村森林組合は木材の集積場所と製材所を所有しており、植林から木材の販売まで全て行っています。 黒字経営とは言えない様ですが、頑張っている森林組合の一つだと私は見ています。 そして、UターンやIターンした比較的若い人達を雇用しているので、過疎地には無くてはならない存在になっています。
● 龍神の面積 :25,500ha (80%以上が山林だと思われます。)
● 龍神の人口 :4,400人ほど (超高齢化しています。)
★ 森林組合の従業員 :職員36名・常雇作業員約80名
★ 組合員数 :797人(正組合員:620名 准組合員:177名)
★ 組合員保有山林面積 :19,000 ha
出典 :ウイキペディアと龍神村森林組合のホームページの値です。
【林業関係の出版社】
農業関係の出版社は多いいですが、私の知る限りでは林業関係の出版社は次の2社しか有りません。
★ 全国林業改良普及協会(全林協)
★ 日刊木材新聞社
(余談) 日本には、各種業界紙が沢山存在します。 私の経験では、業界紙の出版社は一般に各省庁の下級官僚の天下り先になっていて、国の補助金で運営されています。 従って、政策を批判する様な記事は掲載出来ません。 その業界に詳しい下級官僚が天下っているケースが少なく、酷い場合は、原稿を関連企業に丸投げしていました。『百害あって一利なし』です。
最近、アメリカでは木材価格が6倍に高騰しているそうです。日本でも2倍になっていると言う報道が有りました。 普通の製品は価格が2倍、3倍になったら供給量が増えてきますが、木材の場合は簡単には増産出来ません。
日本の国土の『2/3』は森林で、少し郊外に行ったら緑豊かな森林が見えます。 然し、多くの方は森林についての知識を殆ど持っていない様です。 「木材価格が高騰している今だったら、森林に興味を持って頂けるかも?」と考えました。 それで、数回に分けて私の考えを投稿する事にしました。
【森林の役割と政策】
人間にとっての森林の役割は、時代とともに大きく変化して来ました。 縄文遺跡が世界遺産に登録されようとしていますが、縄文人達は森林の中で生活していました。 弥生時代になると、森林の一部を開墾して、田畑にしました。 大きな集落が出来て、更に都市が出来ました。 日本では都市の住宅は木造で、燃料は薪か炭でしたから、森林無しには成り立たない生活を続けて来ました。
森林と人間の関係が大きく変化したのは明治以降です。 特に、第二次世界大戦後には、鉄筋コンクリート造の住宅が増えて、都市ガスが普及したために木材の需要が減って、更に安価な外材の輸入が盛んになって、木材価格が低迷する事になりました。 1980年頃までは、森林の経営は国からの補助金が無くても成り立っていたと思います。
然し、国は相変わらず、杉や檜の植林面積を増やす政策を続けました。植林には適さない様な山にも杉や檜を植える様になり、コストパフォーマンスを無視して林道を整備し続けました。 植林したのに、枝打ちや間伐をしない山が増える問題が発生して来ました。 そして、結局、林業は補助金漬けでやっと維持出来る様になってしまったのです。 国民の多くが森林に興味を示さなくなったので、お粗末な政府のやり方を問題にする報道は今まで無かったのだと思います。
【林業従事者】
色々な原因で木材価格が低迷し続いた為に、林業で生計を立てるのが難しくなって来ました。 現在、林業従事者は激減しており、更に高齢化が進んでいます。
後述の様に国土の『2/3』は森林ですが、そこで働いている人は、たったの45,000人しかいません。 その上に高齢化が進んでいますから、国民全員で知恵を出しあって真剣に考える必要が有ります。 上級国家公務員試験(国家公務員採用総合職試験)に、森林についての問題が含まれるとは思えません。与野党の議員も森林についての知識が有るとも思えません。このまま放置したら、大切な森林が無茶苦茶になってしまいます。
★ 2015年 :林業従事者= 45,000人 ;65歳以上25%
★ 1955年 :林業従事者=519,000人 ;65歳以上 4%
【日本の森林面積】
森林面積は2,500万ha(=25,000,000ha)です。 現在の林業従事者は45,000人でしたから、単純計算すると一人が556ha(=5.56km2)管理している事になります。 一人・平均・1km✕5.56kmの面積を管理するのは無理です。
国有林は林野庁が管理しています。 職員数は4,700人ほどいますが、国有林の管理(植林、伐採、搬送など)だけでなく、木材の需要/供給データの収集、森林行政等々を行う役所ですから、要員不足だと思われます。
★ 国土 :3,780万ha
★ 森林 :2,500万ha (国土の66%)
★ 林野庁が管理する面積 :759万ha(森林の30%)・・・国立公園を含む
★ 民間が所有する面積 :1,741万ha(森林の70%)
(余談 :御料林) 江戸幕府の直轄だった木曾などの優良な山林は、明治になって皇室の財産になり『御料林』と呼ばれていました。 一部は民間に払下げられましたが、1900年(明治33)時点では140万haも有りました。 戦前の皇室は豊かだったのです。 敗戦後に御料林は国有化され、国有林に含まれる事になりました。
(余談 :林野庁) 農林水産省の外局に林野庁と言う機関が有ります。 その使命は、「森林の保続培養、林産物の安定供給の確保、林業の発展、林業者の福祉の増進及び国有林野事業の適切な運営を図ること」となっています。 お題目は立派ですが、非営利団体が難しい森林の問題に取り組んでも、成果は上がらないと思います。
【民間が所有する山林】
1947年にGHQの指導で農地解放が進められました。 地主から小作地を取り上げて、農地(田と畑)を小作人に分け与えました。 然し、山林は農地では有りませんから、山林地主は生き残りました。 木材価格が低下して、高額の相続税が要求されるなどによって、大山林地主は激減しました。
農地を企業が購入することは禁止されて来ましたが、山林は企業が自由に売買出来ます。 王子製紙が日本一の山林所有企業です。 個人では、三重県の諸戸家が最大の山林所有者です。
① 王子製紙 :19万ha
② 日本製紙 :約9万ha
③ 三井物産 :約4.4万ha
④ 住友林業 :約4.2万ha
⑤ 木原造林 :約2万ha
⑥ 東京電力 :約1.8万ha
⑦ 北越紀州製紙 :約1.3ha
⑧ 岩崎産業 :約1.2万ha
⑨ ニッタ :約0.67万ha
⑩ 三井不動産グループ :約0.5万ha
⑭ 諸戸林業 :約0.28万ha・・・日本の森林王(三重県桑名市)
出典 :『今年は「国際森林年」 主要32社の社有林 所有・利用状況』・・・2011年
https://www.dai3.co.jp/_old_hp/rbayakyu/23th/times/news21.htm
【一家が生活出来る森林面積】
朝鮮人参は栽培に6年、休耕に6年必要で、12枚の畑を所有していても1年には一枚でしか収穫出来ない様です。 杉や檜は植林して伐採まで、一般に50年~60年、良質の木を得るためには100年以上掛かります。
単位面積当たり何本・木を植えられるか?を『栽培密度』と呼びます。 杉や檜は2,000~3,000本/ha程度です。 『1ha』は『1町歩=3,000坪』で、『100ha』は1平方キロメートル(1km✕1km)です。
50年~60年間育てた杉の平均価格は『6,000円/本』ほどだと言う記事が有りました。他人の手を借りないで、一家で全ての山仕事をするとして、経費=400万円、生活費=600万円とすると、合計=1,000万円になります。 この収入を得るためには、毎年1,670本(≒1,000/0.6)伐採して、出荷する必要が有ります。 栽培密度を2,500/haと仮定すると、1年の伐採面積は0.67haになります。
50年間隔で伐採すると仮定したら、一家で34ha以上所有して/手入れする必要が有ります。 平坦な山林だったら可能ですが、急峻な山では難しいと思います。 木材価格が2倍ほどにならないと、国の補助金無しでは山林経営は成り立たないのだと思います。
(余談 相続税) 永続的に(何世代にもわたって)農業や林業で生活出来る様にする為には、(浅薄な)民主主義には反しますが、専業農家や専業林業家から相続税を取ってはいけないのです。 2008年から『事業継承税制』が始まり、町工場や個人商店などでは、代替わりに商売が続けられる様に、相続税等が軽減されました。 更に、2019年には『個人版事業承継税制』で個人の事業用資産については相続税は免除される様になっています。 「この考え方を農業や林業にも適用すべきだ!」と言うのが私の主張です。
子供二人の裕福な農家で、100と言う面積を所有していたとします。 相続税が40%だと仮定し、土地で相続税を支払う(現物納付する)とします。 旦那さんが亡くなると、40%は国に、30%は奥さんが、子供は15%ずつ相続する事になります。奥さんが亡くなると、子供は元の100有った面積の24%しか相続出来なかった事になってしまいます。これでは、家業を継ぐことは不可能です。
田畑は分割相続したら『田分け者』と軽蔑されました。山林も分割相続したら経営が成り立たなくなってしまいます。相続税が免除される様になったとしても、家業を継ぐ為には田畑や山林は分割してはならないのです。
明治の終わり頃まで日本には相続税は有りませんでした。日露戦争の戦費を調達する為に1905年に相続税が徴収される様になったのです。 「資産家の子供が親から相続した金で豊かな生活を送るのはけしからん、沢山相続税を取って貧乏人に回すのが民主主義だ」と考えられている方が多いいですが、民主主義思想なんか無い時代に戦費を調達する為に設けられた制度です。
国民にとっても国家にとっても、個人企業、農家および林業家の継続は大切です。 戦後の歴代の政府は、「農協や森林組合を支援すれば、農家と林業家が存続出来るだろう!」と安易に考えて来た様に思います。 結局・政府の優遇処置や補助金漬け政策は、農協や森林組合の役員や従業員の生活を安定させただけです。農家や林業家は豊かにならなかったのです。 『百害あって一利なし』の政策だったと私は見ています。
【森林組合は税金で成り立っています!】
日本・各地に森林組合(組合員数=153万人)と生産森林組合と言う組織が有ります。 森林組合は、山林所有者から委託された山林を、ほぼ国からの補助金を使って経営しています。
本来は山林所有者が自分の金を使って木を植えて/育てるべきですが、木材価格が低迷しているために、植林費用とその後・40年間(?)に必要な費用を(ほぼ全額)国が面倒を見てくれる様になっています。 山林の所有者の多くは、都会に住んでいたりして、自分で山仕事出来ませんので、森林組合に管理を委託しています。
一般国民は、「自分達が納めた税金で生産した木材を、自分の金で買う」と言う、何か割り切れない事になっています。 「新緑は綺麗だ!」、「紅葉はいつ見ても素晴らしい!」と感嘆される方に、「あの山は、貴方が納めた税金で維持しているんです」と国は説明すべきです。 「新緑も紅葉も要らない、税金を安くして!」と言う国民は殆どいないでしょう!
この美しい緑豊かな風景を子孫に残すためには、政治家や官僚達に丸投げしないで、「国民全体の重要な問題だ!」と認識する必要が有ります。
【龍神村森林組合】
私の故郷は和歌山県田辺市龍神です。 合併前は龍神村だったので、森林組合の名前に『村』が残っています。 典型的な過疎地です。
龍神村森林組合は木材の集積場所と製材所を所有しており、植林から木材の販売まで全て行っています。 黒字経営とは言えない様ですが、頑張っている森林組合の一つだと私は見ています。 そして、UターンやIターンした比較的若い人達を雇用しているので、過疎地には無くてはならない存在になっています。
● 龍神の面積 :25,500ha (80%以上が山林だと思われます。)
● 龍神の人口 :4,400人ほど (超高齢化しています。)
★ 森林組合の従業員 :職員36名・常雇作業員約80名
★ 組合員数 :797人(正組合員:620名 准組合員:177名)
★ 組合員保有山林面積 :19,000 ha
出典 :ウイキペディアと龍神村森林組合のホームページの値です。
【林業関係の出版社】
農業関係の出版社は多いいですが、私の知る限りでは林業関係の出版社は次の2社しか有りません。
★ 全国林業改良普及協会(全林協)
★ 日刊木材新聞社
(余談) 日本には、各種業界紙が沢山存在します。 私の経験では、業界紙の出版社は一般に各省庁の下級官僚の天下り先になっていて、国の補助金で運営されています。 従って、政策を批判する様な記事は掲載出来ません。 その業界に詳しい下級官僚が天下っているケースが少なく、酷い場合は、原稿を関連企業に丸投げしていました。『百害あって一利なし』です。