これ!どう思います?

マスコミがあまり報道しない様な問題を、私なりに考えてみます。

ゴーン氏の事件報道

2018-12-01 11:23:29 | 報道の問題
 日産のゴーン氏に関する報道を見ていると、日本のマスコミの問題をさらけ出している様に思えます。 読者や視聴者が誤解するかも知れない内容で、日産や検察の発表をそのまま報道しています。 私は、松本サリン事件の報道を思い出しました。

【有価証券報告書の偽装】
 日産の有価証券報告書に、ゴーン氏への支払いが毎年10億円少なく記載していたと報じられています。 然し、”脱税“の有無については、どの報道機関も何も言っていません。

 「2010年からの在職年数×10億円を、ゴーン氏が退職した後に、毎年10億円ずつの分割で支払う契約になっている」と報じていました。 会社に功績のあった人に、退職後も(勤務実態が無くなっても)お金を支給するのは違法ではありません。 ただし、毎年の有価証券報告書に、「今年の10億円を退職後支払う」と記載する必要があるようです。

 有価証券報告書は大口の投資家が、株の売買をする時、参考にする資料です。 日産の2018年3月決算の純利益は7,400億円以上ありましたが、10億円はその0.1%ほどにしかなりません。 この程度の記載漏れを投資家が問題にするでしょうか? 検察は起訴はするでしょうが、有罪判決は出ない様に思います。

【私的な投資損失を日産に付け替えていた】
 報道から類推すると、ゴーン氏は”外国為替保証金取引(FX)”をしていた様です。 FXは博打の様な取引です。 円とドルのFXだとします。 二つの通貨の金利がどちらの方が高くなるかを賭けるわけです。 ”円の金利の方が高い”に賭けていて、その通りなら毎日通帳にお金が振り込まれますが、逆だと通帳から振り落とされます。

 2008年時点で、ゴーン氏の通帳残高が”マイナス約17億円”になっていました。 この負債を日産に肩代わりさせたようです。 これは犯罪で”特別背任”に該当しそうです。罰は”懲役10年以下”です。

 然し、刑事事件としての時効は7年ですから、既に時効は成立しています。 日産が民事で損害賠償を請求出来るのは、10年以内ですから、これも時効です。 時効が成立している事件を、実名を挙げて報道するのはフェアでしょうか?

【6か国に豪華な住居を提供させた】
 日産グループが豪華な住居を6か国に用意したのは、我々庶民から見ると犯罪の様に思えます。 元の所有者に儲けさせるために、ゴーン氏が時価よりも大幅に高い金額で、それらの住居を日産に購入させたケースなら犯罪と思います。 そういう報道はありません。

 東京の練馬区に住んでいた姉の家のすぐ近くに、欅の大木が数本植わっている豪邸が有りましたが、○○省の幹部の住む官舎だと言われていました。 この官舎の土地は、現在の価格で10億円以上すると思われます。 公僕のはずの役人が、駅から徒歩で数分の豪邸に住んで、朝夕・車で送り迎えのサービスを受けても違法では有りません。

【家族旅行の費用を日産に払わせた】
 大企業の重役や中小企業の社長が、家族旅行や飲食の費用を会社の金で処理するのは、我が国では日常的に行われています。 多分、マスコミ各社でも行われているのでは? もし問題にするのなら、「自分の会社がどうなっているか?」調べてからにして下さい。

 大企業で会長や社長になられた方は、退職後死ぬまでこの種の特典を与えられるのは珍しくありません。 もうヨボヨボなのに、会社に秘書を付けさせて、外食費はもちろん会社負担で、家や庭のメンテナンスもさせていた人を知っています。

【姉さんに顧問料を支払わせた】
 普通、勤務実態が無い実在の人物に給料を支払っていた場合は、”架空経費”、すなわち脱税と見なされる可能性があります。 然し、日産は ゴーン氏の姉さんを”アドバイザー”として雇っている様に報じられていますから、出勤しなかったから勤務実態が無かったとは言い切れない様に思います。 電話でもアドバイスは出来ます。

 我が国の中小企業では、家族や親族を重役に登記して、実際には全く働いていないのに給与賞与を支給しているケースは、沢山あります。 私はそんな会社を数社知っていますが、税務署が問題にしたと言う話を聞いた事が有りません。

 タイムカードを押さなければならない職種で、勤務実態の無い親族を雇った事にしていて、税務署から脱税と指摘された話は聞いた事があります。 然し、検察が関わる問題ではありません。

【娘の通う海外の大学への寄付】
ケース1 :日産として、ゴーン氏の娘さんが通っている大学に寄付したのであれば合法です。
ケース2 :日産が金を出したのに、ゴーン氏個人が寄付した様にしていたら犯罪と思います。

 各社の報道は、『ケース2』と誤解させる様な内容になっていす。 実際は『ケース1』だったとしたら、”報道の暴力”と言われても致し方無いと思います。

【私からみたゴーン氏の問題】
問題 1: 2018年現在で、ゴーン氏が日産のトップに君臨して19年にもなります。 ゴーン氏はまだ64歳ですから、さらに10年以上居座り続けたかも知れません。 日産の上層部の人達にとっては、耐えられ無い存在になっていたと思われます。

問題 2: ゴーン氏は2万人をリストラし、購入部品の価格を下げさせた様です。 こういう事をしたら、我が国では”鬼のような人”だと陰口を叩かれます。 倒産寸前の時は”鬼”は必要だったと思いますが、順調になった現在では”鬼”は邪魔な存在だったと想像します。

問題 3: ゴーン氏は2005年にルノーの取締役会長兼CEOに就任したために、日産のトップとしてのゴーン氏を解雇出来るのは、ゴーン氏自身しかいない事になってしまいました。 日産は東証一部上場会社ですが、ルノーが日産株の44%を保有していますから、ゴーン氏は日産の株主の事を考える必要が無かったのです。 ゴーン氏が去っても、ルノーの会長がまた日産の会長を兼務したら、また同じ様になりそうです。 日産の自浄能力回復は、日産労組に期待出来るかも知れません。 昔、塩路一郎が率いる日産労組は強烈でした。 日産労組よ頑張って下さい!

私の感想 : 組織のトップに長く居座ると、公私混同を日常的に行う様になるのが普通です。 19年も君臨していたのに、叩かれて出た”ホコリ”は意外に少なかたと思いました。

【反省と教訓】
 日本は工業製品を輸出して生きている国です。 国家として重要な工業分野があり、その分野を担う重要な企業があります。国として、国際ルールすれすれの事をしてでも、それらを守る必要があります。

 ゴーン氏が日産に派遣されたのは1999月年6月でしたが、不幸なことに、1998年から2000年まで政権基盤の弱い小渕内閣でした。 「日産が倒産しそうだ」と言う情報を聞いても、小渕氏は日産問題に関わる余裕は無かったのではと思います。 ある日本の企業が、世界に誇れる重要な技術を持っているとします。 その企業を、中国の国営企業が買いに来た時、政府は傍観すべきだと思いますか?

 グローバル企業の受け入れを各国に要求して来たのはアメリカですが、トランプ大統領はグローバル化を否定しています。グローバル化が行き過ぎて、弊害が許容出来なくなって来ているのも事実だと思います。 フランス政府はルノーの株を15%所有していますから、日産はフランスの企業と言えるかも知れません。 「日産の電気自動車の技術を、フランス政府は中国に売る恐れがある」とコメントしている方がおられました。 これが事実なら、我が国の国益に反すると思いますが、現状では、日本政府はどうする事も出来ないでしょう。

 大企業が倒産しそうになったら、日産のように外国の企業に株を持ってもらったあと、辣腕の(鬼の様な)人を派遣してもらうのでなく、辣腕の人をスカウトしてレコンストラクション(再建)を委ねるべきだと思いました。