MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

15=8×2-1

2012-08-10 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

08/10 私の音楽仲間 (412) ~ 私の室内楽仲間たち (385)



              15=8×2-1




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




 ドビュッシーの室内楽というと、貴方はまず何を思い浮かべ
ますか?



 名作の弦楽四重奏曲に今回挑戦したのは、Violin 私、
M.さん、Viola Sa.さん、チェロ Si.さんでした。

 相変わらず “上を下への大騒ぎ” でした。 そして、
その最たる楽章が、第楽章。



 拍子は大半が 6/8拍子で、参考サイトには “十分生き生きと、
きわめてリズミカルに (Assez vif et bien rythmé)” と記されて
います。




 「こんな速いテンポでやったのは初めてだよ…!」と口に
したのが、Si.さん。 四人の中でただ一人、この曲に何度
も触れているメンバーです。

 私は以前 Viola で本番に臨んだことが一度ありますが、
それもかれこれ30年ほど前のこと。 M. さん、Sa.さんは
今回が初めてのようです。

 (そんなに速かったかな、もっと速い演奏は珍しくない…。)
と思います。 でも、テンポを煽ったのは自分ではないか?
そう思った私は、一瞬 “反省”。



 いつものとおり、二回ほど通すのが精一杯。 今回も、“発表
が前提” ではありません。 個々の音程のチェックや、細かい
アンサンブルを徹底させるのではなく、“最低限、曲の作りが
大雑把に解ること”、“それなりに曲の美しさに触れること” を
目標にしているからで、“喋り” は極力控えています。

 言わば、個々にとっては、“壁の塗り直しの一回分”。 この
例会はそんな趣旨で開かれており、私もその一員として勉強
させてもらっています。

 各々は、その経験を大切に胸にしまい、またいつか、おそらく
他のメンバーとの組み合わせの折に活かすことになるでしょう。




 演奏例の音源は、第Ⅱ楽章の最後の部分から。



 [譜例①]は Vn.Ⅰのパート譜で、最初のと書かれている
ところから始まります。 拍子は 6/8 です。





 この後、9小節ほど進んだところで、数小節のカットがあり、
音楽は次の[譜例②]に入ります。

 今度はスコアですが、全員が pizzicato、つまり指ではじく
部分。 拍子は 15/8 です。







 これだけ音符が連続して書かれていると、それこそ速い
テンポでは、私には困難です。 本来は pp と p をもっと
区別し、スコアをよく読んでバランスの調整をしなければ
ならない箇所です。

 お聞きのとおり、私の音がうるさいですね? その原因
の一つは、松脂を着け過ぎたためです。 指に。



 「何だって!?」 驚かれるかたもいるでしょう。 松脂は弓
に塗るものですから。

 ところが速い pizzicato のときには、これ、かなり有効です。
指に粘着力があるので、それほど “しっかり弦を捉まえる”
必要がありません。 ほとんど “触るだけ” で、このぐらいは
鳴ってしまうのです。

 奏法にも若干問題があり、左手にも松脂が着いてしまった
ような音程です…。



 ところで、pizzicato にも、様々な奏法があり、使い分けねば
なりません。 テンポ、一度に鳴らす音の数、左手のポジション
の高低…などに応じて。

 “たかが pizzicato” と思うと、とんでもない間違い。 こちら
も大変奥が深いようです。

 中には、人差し指だけでなく、中指を併用しないと間に合わ
ないような曲もあります。




 「そんなことより、“15=8×2-1” は、どういう意味だ?」

 はい。 「15拍子は、ヤニヒト差し指に塗って」の意味です。

 “蜂の一刺し” じゃないですよ?



 なお、この[譜例②]の後にも、8小節間(15/8拍子) のカット
があります。 ドビュッシーさん、ごめんなさい。




 ところで今回の譜例も、相変わらず “塗り絵のオンパレード”
でした。

 色は様々ですが、実はこれらの音楽はすべて、一つのテーマ、
あるいはモティーフから “派生した” ものです。 次の[譜例③]
は、この楽章の冒頭です。



 Viola の最初の音は Sol (中央ハの下の) です。







 Viola が始める、この2小節間のテーマ。 実は第Ⅰ楽章の
冒頭では、4/4拍子で登場していました。

 この後、Viola は執拗に同じ音形を繰り返します。 12回、
24小節も連続して。



 音楽はこの後、さらに別世界の旅へと、聴く者を誘います。




 「この音楽はすべて、一つのテーマ、あるいはモティーフ
から “派生した”。」

 私は先ほどそう書きましたが、これは正しい表現ではない
かもしれませんね。

 むしろ、“様々な顔と可能性を持つ一つのテーマ”、“感性
の世界が豊富なドビュッシー”…と言うべきかもしれません。



 この第Ⅱ楽章だけでも、音楽の表情は様々。 それが、
“みな一つのテーマから出来ている” なんて…。

 音楽の流れは、それほど自然です。



            [音源ページ



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