MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

色トリドリ

2013-12-16 00:00:00 | その他の音楽記事

12/16           色トリドリ



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                 表記にも願いが
                   河に託して
                   証し人たち




 ヤン・ホラークさんが生まれたのはモラヴィア地方。

 千年以上前には、モラヴィア王国として栄えていました。
最盛期の領土は、現在のチェコ、ハンガリー、ブルガリア
の全土を含む、広大な地域に及びました。



 王国はマジャール人の侵略によって滅亡し、以後、他国
の支配を長く受け続ける。 ハンガリー、オーストリア…。

 今日ではチェコの一部になっていますが、文化的、特に
音楽面では、ハンガリーの影響がとても強い地域です。



 そしてモラヴィアといえば、忘れることの出来ないのが、
ヤナーチェクでしょう。




 手元にあるホラークさんのCDの中には、ヤナーチェクの作品、
草かげの小径にてが入っています。



 この曲集は、性格の異なる小曲から成っていますが、最後の
3曲に共通するテーマは、自身の家族の死です。 長女オルガ
は病に倒れ、21歳の若さで亡くなりました。



          

             (wikipedia より)



 それは、この曲集の、第8~10曲に当ります。




 第8曲 『こんなにひどくおびえて』。

 2/4拍子、Andante、ホ短調。

 たどたどしい旋律からは、死の床での激しい感情の起伏が
聞き取れます。 高揚と沈鬱。 病と戦うオルガ。 悲しみに
沈むオルガ。 そして、心臓の鼓動。




 第9曲 『涙ながらに』。

 2/4拍子、Larghetto、変ト長調。

 オルガは、やがて絶望し、諦めを口にします。
傍らで言葉少なに見守る、父レオシュ。




 第10曲 『みみずくは飛び去らなかった』。

 2/4拍子、嬰ハ短調、Andante。



 「モラヴィア地方にあるシレジア地域では、“病人のいる家
にみみずくが飛んでくると、それは死を招く不吉な知らせを
意味する” という言い伝えがあります。」

 これはホラークさんのご家族が教えてくれた内容で、以下
の 「 」 内も同じです。



 「みみずくを払いのけようとする手の動きを、最初の6連符
で表わしているが、それを無視するかのように、“みみずく”
のテーマが3度音程で鳴きながら登場します。」

 “Do# ~ La#”、“Do# Do# Do# Do# ~ La#”。 “カッコウ” に
似ている短3度ですが、音楽全体の響きは、不吉で恐ろしい。



 「やがてコラール調の “祈り” のテーマが現われ、みみずくと
祈りが交錯しながら曲は進んでいきます。 最後のページでは、
この曲の中で一番のフォルテが “祈り” のテーマに与えられ、
叫びのようになります。 しかし結局は “みみずく” のテーマが
居座り、曲集全体を締めくくります。」



 “飛び去らなかった” は、そういう意味なんですね…。

 この題名からしても、作曲者の願いが絶望に終る
のが感じられます。




 詳細は、ヤナーチェクの作品とモラヴィア民謡の関連性を探る
をお読みください。




 「ピアノの技法としては大きな目立ったテクニックがある
わけでもないのですが、逆にその少ない音の中で色々な
表現をするので、誤魔化しが利きに くい曲だと思います。」

 「ヤナーチェクは、人の喋ってるイントネーションや、鳥の
鳴き声、風の音などを、聞こえたままに五線譜に書き取り、
それをメロディにしてよく作曲を行う人だったようです。」



 その態度は、この重大な局面を迎えても同じでした。

 病床のオルガの言葉。 そして、ため息までも、彼は
文字や音符として残しています。




 鳥の声を題材にした作曲家…。 たくさんいますよね。

 古くは Rameau、Vivaldi。 また Beethoven や Mahler
は、交響曲の中でも用いました。



 Ravel の バレェ音楽 『ダフニスとクロエ』では、朝の
爽やかな小鳥たちの声。 Respighi の 組曲 『鳥』。



 そして、あの Olivier Messiaen の作品では、鳥の
声が極めて頻繁に登場します。 時には神秘主義的
な宗教性まで帯び、恍惚感へと高まる。

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 しかし、このヤナーチェクの作品では、いかに恐ろしい
意味を “鳥” が持っていることか…。

 同じ “鳥の声” でも、色彩や明暗は様々です。




         『草かげの小径にて』

           音源ページ




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