MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

Vivace を越えて

2009-07-16 00:11:57 | 私の室内楽仲間たち

07/16 私の音楽仲間 (79) ~ Allegro vivace ④

                    Vivace を越えて




          私の室内楽仲間たち (59)




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』




           関連記事 『Allegro vivace

              ① ニ短調の "Allegro"
              ② Vivace に込めて
              ③ Viva バイリンガル
              ④ Vivace を越えて
              ⑤ 『Vivace は速いのか』





 "Vivace" が速度を表わすために使われている場合、また
速度標語が見られない場合など、引き続き見てみましょう。

 まずドイツ、および、その周辺の作曲家です。




ショパン



 練習曲第3番 『別れの曲』 Op.10-3

  最初は "Vivace" と書かれましたが、作曲が進むにつれ、テンポ
 表記はゆっくりになり、最終的に "Lento ma non troppo" (遅く、でも
 のろすぎず) になったと言われます。




 ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 Op.11 第Ⅲ楽章
  Rondo : Vivace

 ピアノソナタ第3番 ロ短調 Op.58 第Ⅱ楽章
  Scherzo : Molto vivace




ブルッフ

 交響曲第3番 ホ長調 Op.51 第Ⅲ楽章
  Scherzo: Vivace

 ロシアの主題による組曲 Op.79b ~
  Andante sostenuto - Adagio, ma non troppo lento - Vivace
  Dance: Vivace ma non troppo




サン・サーンス

 交響曲 イ長調 第Ⅲ楽章
  Scherzo : Vivace

 交響曲 へ長調 『首都ローマ』 第Ⅱ楽章
  Molto vivace




ドヴォジャーク

 交響曲第7番 ニ短調 Op.70 第Ⅲ楽章
  Scherzo : Vivace

 交響曲第9番 ホ短調 Op.95 『新世界より』 第Ⅲ楽章
  Scherzo : Molto vivace




ブルックナー

 この作曲家が記した厳密さは、不器用とも言ってもいいほど。
律義な人柄が窺えるようです。



 交響曲第3番 ニ短調 『ワグナー』 第Ⅰ楽章
  Gemaessigt, Mehr Bewegt, Misterioso
  (中庸に、言わば停滞せず、神秘的に)



 交響曲第4番 変ホ長調 『ロマンティック』 第Ⅲ楽章
  Scherzo : Bewegt, Vivace non troppo

  "Bewegt" は "con moto (動きをもって、停滞せず)" に当ります。



 交響曲第6番 イ長調 第Ⅰ楽章
  Maestoso (おごそかに)



 交響曲第9番 ニ短調 第Ⅰ楽章
  Feierlich, Misterioso (おごそかに、神秘的に)

 交響曲第9番 ニ短調 第Ⅱ楽章
  Scherzo : Bewegt, Lebhaft (動いて、生き生きと)




 次はロシアです。




ボロジ (ディ)

 弦楽四重奏曲第2番 ニ長調 第Ⅳ楽章
  Finale : Andante - Vivace




(ャ)ィコーフスキィ



 交響曲第4番 ヘ短調 Op.36 第Ⅲ楽章
  Scherzo : Pizzicato ostinato
  (弦楽器は全楽章を通して「指ではじいて演奏するように」指定されています。)



 マンフレッド交響曲 Op.58 第Ⅱ楽章
  Vivace con spirito

  "Spirito" は「精」、「霊」、「髄」で、肉体的な活気の "Vivace
   (生き生きと)" との対比が感じられます。




ラフマニノフ

 ピアノ協奏曲第1番 嬰ヘ短調 Op.1
  Vivace




プロコフィエフ

 交響曲第1番 ニ長調 Op.25 『古典交響曲』 第Ⅳ楽章
  Molto vivace

 交響曲第6番 変ホ短調 Op.111 第Ⅲ楽章
  Vivace

 交響曲第7番 嬰ハ短調 Op.131 『青春』 第Ⅳ楽章
  Vivace




 最後は、フィンランド、アメリカ、ノルウェーです。




シベリウス



 交響曲第2番 ニ長調 Op.43 第Ⅲ楽章
  Vivacissimo-Lento e suave-Largamente

 "suave" (ここちよい) はイタリア語には見当たりません。




 交響曲第6番 ニ短調 Op.104 第Ⅲ楽章
  Poco vivace



 交響曲第7番 ハ長調 Op.105
  Ⅰ Adagio
  Ⅱ Vivacissimo-Adagio-
  Ⅲ Allegro molto moderato-Allegro moderato-
  Ⅳ Vivace-Presto-Adagio-Largamente molto-
  Ⅴ Affettuoso

 全体は単一楽章構成ですが、上記のように分けて考えることも出来ます。

 "affettuoso" は「愛情を込めて」、「慈しんで」です。

 シューマンのピアノ協奏曲イ短調では "Allegro affettuoso"、
またブラームスのチェロ・ソナタ第2番では "Adagio affettuoso"
という指示が見られます。





アイヴズ

 交響曲第1番 第Ⅲ楽章
  Scherzo : Vivace




シンディング

 交響曲第1番 ニ短調 Op.21 第Ⅲ楽章
  Vivace

 ヴァイオリンソナタ ヘ長調 Op.73 第Ⅲ楽章
  Deciso ma non troppo allegro
  (決然と、しかし快活すぎず)

 古い様式のソナタ Op.99 第Ⅰ楽章
  Marcato (明瞭に)

 古い様式のソナタ Op.99 第Ⅴ楽章
  Un poco maestoso (おごそかに)

  交響曲第3番 ヘ長調 Op.121 第Ⅰ楽章
  Con fuoco (燃えて)




 元はと言えば、Mozart の "Allegro moderato" から出発した、
この脱線旅行。 いつしか遠くまで来てしまいました。

 伝統的な速度標語を用いない例や、直接速度を示す語を、
敢えて避けている例を見てきました。




 次回は最終回で、再び "Vivace" についてです。 私が行き
当たった、大変興味深いウェブサイトを、ご一緒にご覧ください。




  (続く)