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まい、ガーデン

しなしなと日々の暮らしを楽しんで・・・

ヨシタケ シンスケ作 絵本 『つまんない つまんない』 

2018-12-17 08:45:33 | 

娘からの電話。

「ただいまチュッパがまた拗ねているんです」って。拗ねガールチュッパ。直るまでが長いのよ。
なんでもお母さんとクイズをしていたそうな。
「お母さんはシュークリームとプリンとどっちが好きでしょう?」
「プリン!」とチュッパは答えたんですって。ぶぶーっ、シュークリームでした。
とたん、チュッパは泣きだし、ひと言も言わずベッドで泣きながらの拗ねガール発揮だそうな。

そんなチュッパにと横浜年上友がクリスマスプレゼントしてくれた。ありがとう。

絵本 『つまんない つまんない』 ヨシタケシンスケさん作


ちょっとまだ難しいかもよって。大丈夫、チュッパは天才だから、と言って私が読み始めた。

なんだなんだこの5歳くらいの坊や、私じゃないの。私の心そのものだわ。おやまあ。
長くなるけれど、太字で書いてある文だけ書き写しますね。(2行3行に渡って書いてある文も1行にします)

うーん・・・なんか つまんない。
ウチの おもちゃは もう みんな つまんないし、きょうは テレビも つまんない。

 

ていうか・・・つまんないのって だれのせい?
どうして つまんないんだろう。 つまんないって、 なんだろう。

たとえば「ぐるぐるまきにされる」 のって すごく おもしろそうだけれど、
ずーっと ぐるぐるまきなのは つまんなそうだ。

「ずーっと なにかが おなじ」 っていうのが つまんないのかな。

いつもと どこかが ちょっと ちがうと おもしろいのかな。
ちがえば ちがうほど おもしろいのかしら。

 

じぶんに かんけいないと、つまんないのかな。

じぶんの おもいどおりに ならないと、つまんないのかな。

ダンゴムシって、「つまんないな」って おもうんだろうか。

(太字部分 略)

・・っていうか 、 よのなかには 「おもしろいこと」 と 「つまんないこと」 しかないのかな。

よくかんがえたら、 「なーんにも かんがえていないとき」 ってのもあるな。

べつに おもしろくはないけど、つまんないわけでもない。
ああいうときの きもちって、なんて いえば いいんだろう。 うーん。

(太字部分 略)

いちばん つまんないのって、なんさいだろう。
おじいちゃんは 「むかしあった つまんないこと」 を はなすとき、ちょっと たのしそうだった。
つまんないことって、じかんが たつと おもしろく なるのかな。

たのしそうにしているけど、ほんとは つまんないひと、 って いるのかな。
つまんなそうだけど、じつは ちょっとたのしい、って ひとも いるのかな。

おとなは つまんないとき どうしてるんだろう。
こどもは しらない なにかが あるんだろうか。

(おとうさん) どんなに つまんないことだって、じぶんしだいで おもしろくできるんだよ?

それに、つまんないことがあるから、おもしろいことが たのしくなるんじゃないの?

(ぼうや) そのはなしは こないだも きいたから つまんない!!

最高のオチ、好き!面白い。

あははは、坊やの疑問にひとつひとつ相槌打ってあげたい、そうだよそうよねって、そんな気持ちってあるよねって。
だってその坊やは私そのものですから。
いくら天才チュッパでも、こりゃあ難しいかな。ま、そのうち分かるようになる。

 

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じわじわと癒やされる 『院内カフェ』 『漢方小説』 中島たい子著

2018-12-10 09:04:19 | 

『院内カフェ』 タイトルに惹かれて読んだ1冊。
これといって具体的なことはないけれど、なんとなく面倒なことはうっちゃりたいなと。
優しい小説にしみじみさせられたいなと、そんな気分の時に読んだらこれがぴったり。

そういえば、娘がちゅっぱを出産した時の病院にも、それなりのカフェやレストランがあって、
退院の時にそこで食事をした。娘は「病院食じゃなくてここでランチをしたかったんだ」と言ってたわ。

ふだん、あえて病院カフェやレストランで食事をしようとは思わないだろうけれど、そこででしか取れない飲食が
大きな意味を持つ場合もある、とも思わせてくれた本。

内容紹介がそのままなのでそちらからお借りして。

『漢方小説』から10年。
新たな舞台は病院のカフェ。  総合病院のロビーにあるカフェ。
「ここのコーヒーはカラダにいい」と繰り返す男や白衣のコートを着る医師は常連客だ。

土日だけこの店でアルバイトをする主婦の亮子は、 鳴かず飛ばずだけれど小説も書いている。
自然酵母のパン職人の夫との間には子どもができない。
子どもは望むけれど、がむしゃらに治療する気にはなれない。 不妊は病気なんだろうか。

実家の親の面倒で他人の世話をし続ける朝子は、介護人生に疲れ切っている。
ついに夫の孝昭も難病に見舞われた。不満も満足も口にしないでわだかまりをかかえた中年夫婦。

「院内カフェ」に集う、 人生の困難が否応なくおしよせる、ふた組の中年夫婦のこころと身体と病をえがく長編小説。

じゅうぶんしみじみして、そうよねそうそうと亮子さんや朝子さんに共感して、中島さん初読だったから
「もう少し中島さんの本を」と思って見つけた1冊。

 『漢方小説』

表紙絵がこれまた好きで、どなたが描いたのだろうと見ると「南伸坊」さん。
みのりさんはこのように元気じゃないから、これは回復した時の顔ね。

川波みのり、31歳、脚本家、独身。胃がひっくり返ったようになるのに、眠れないのに、
病院に行って検査をすると『特に異状なし』。
あのつらさは何?昔の男が結婚したショックのせい?それとも仕事のストレス?
最終的にたどりついた東洋医学で、生薬の香りに包まれながら、みのりが得たものは。
心と体、そして人間関係のバランスを、軽妙なテンポで書き綴る、第28回すばる文学賞受賞作品。

 

大きな出来事は起こらないけれど、さざ波のように心乱すことは日常ありふれているわけで、
そんな機微を書いてくれているこの2冊、私は好きです。

 

 

 

 

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1枚の絵画が主役 『暗幕のゲルニカ』『楽園のカンヴァス』 原田マハ著

2018-11-28 08:52:53 | 

作者の原田マハさん、キュレーターだった経歴がある。
ニューヨーク近代美術館に勤務していたことがあったのね。

美術に造詣が深い方だからこそ書けた小説、わくわくしながら読んだ。
ちなみに「マハ」のペンネームはゴヤの「裸のマハ」「着衣のマハ」に由来するそうだ。ある意味凄い。

『楽園のカンヴァス』が2012年、『暗幕のゲルニカ』が2016年発行になっているが、私が読んだ順番は逆。
暗幕のゲルニカを読んですごく面白かったから、続けて楽園のカンヴァスに、という具合。
2作ともいわば絵画ミステリー。
主たる登場人物は2作ともニューヨーク近代美術館のキュレーター。
そして二人とも10歳の時にその絵に出会い、忘れられない強烈な印象を受けてその後の人生に大きな影響を受ける。
という具合に、2作続けて読むと類似点がたくさんあって、それも興味を引く。構成や章立てもよく似ている。

一枚の絵が、戦争を止める。私は信じる、絵画の力を。
手に汗握るアートサスペンス! 反戦のシンボルにして2 0世紀を代表する絵画、ピカソの〈ゲルニカ〉。
国連本部のロビーに飾られていたこの名画のタペストリーが、2003年のある日、突然姿を消した――
誰が〈ゲルニカ〉を隠したのか? ベストセラー『楽園のカンヴァス』から4年。
現代のニューヨーク、スペインと大戦前のパリが交錯する、知的スリルにあふれた長編小説。

2001年9月11日同時多発テロで夫を亡くしたキュレーターの八神瑤子(10歳の彼女が見たのは<ゲルニカ>)は、
ニューヨーク近代美術館 MoMAで 「ピカソの戦争展」企画する。
この企画展の成功の鍵はマドリッドにあるソフィア王妃芸術センターから、作品保護の上からもテロの標的から守るためからも、
決してマドリッドから動かしてはいけないと言われている<ゲルニカ>をなんとしても借り出してくること。
その重い任務が八神瑤子にかかっている。はたして、彼女は借りだすことができるのだろうか。

物語は主に、パリとニューヨーク、ピカソがゲルニカを製作当時の1937年から1945年までの出来事と、
八神瑤子が活動する2003年2月~6月 までの出来事が交互に綴られ、
いやあ、はらはらしながら最後まで引っ張られて読みました。はい。

タイトルとなった「ゲルニカ」にかけられた暗幕は。

1枚はピカソのアトリエで。
パリ万博のスペイン館で展示するために描いた「ゲルニカ」。
完成した時、ピカソがキャンバスを覆っていた暗幕を引き剥がすと現われたのは白い画面に浮かび上がる、黒い線描。
縦約350センチ 横・役780センチの巨大なキャンバス。

もう1枚は、パワー長官がイラク空爆に踏み切ると発表したとき。
国連安保理議場ロビーに掲げられている<ゲルニカ>のタペストリーに暗幕が。
ピカソのメッセージは暗幕の下に隠されてしまったのよ。

ゲルニカを覆っていた暗幕も物語の重要な要素となって。謎解きに惹きこまれていく。

最後のページのやけに具体的な断り書き。 

本作は史実の基づいたフィクションです。
二十世紀パートの登場人物は、
架空の人物であるバルド・イグナシオとルース・ロックフェラーを除き、実在の人物です。
二十一世紀登場人物は、全員が架空の人物です。
架空の人物には特定のモデルは存在しません。

そうか、物語の重要な人物ピカソの愛人ドラ・マールは実在の人物だったのか、
エピソードには事実も含まれているのかと、無知な私はそこでも感心するわけでして。


 ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。
そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵。
持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませる。
リミットは7日間。ライバルは日本人研究者・早川織絵。
ルソーとピカソ、二人の天才がカンヴァスに籠めた想いとは――。山本周五郎賞受賞作。

 

この「夢」とそっくりの絵「夢を見た」ははたして本物なのか贋作なのか。
ティム・ブラウンと早川織絵の対決、二人が下した結論はどうなったか。
そしてルソーが「夢を見た」を描いたカンヴァスは、ピカソが描いた下絵を使用したのか。
それとも真っ白いカンヴァスを使って描いたのか。
他にもいくつかある複数の謎をハラハラドキドキしながら追いかけていき、最後まで楽しませてくれるわけで。
もちろん謎解きだけでなく、ルソーその人や「夢」の絵についても多くのことを語ってくれていて、
それもこの作品の醍醐味になっていると思う。

この作品にも本作は史実の基づいたフィクションです。の断り書き。
二作とも断り書きがずいぶん重要な役目をしているような気がしてくるのよ、なんだか。

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手でつながる 『じっと手を見る』 『掏摸』 『九年前の祈り』

2018-11-07 08:30:12 | 

 偶然にも3冊とも「手」が重要な役割をしていることで繋がっているな、と。

『じっと手を見る』窪 美澄著  「ふがいない僕は空を見た」に続く2作目
タイトル通り文字通り「手」が生を死を表している。

『掏摸』中村文則著  「教団X」途中挫折で、今度はどうかしらと読み始めた。
タイトルが示すように掏摸を生業としている主人公は、自分の手そのものが生きる糧を稼ぎ出す。

『九年目の祈り』 小野正嗣著 
日曜美術館司会ですっかりファンになって。好きってだけじゃなくて小説も読まねばと。
手のひらを合わせたり手を組み合わせることは祈りの姿勢。


富士山を望む町で介護士として働く、かつて恋人同士だった日奈と海斗。
老人の世話をし、ショッピングモールに出掛けることだけが息抜きの日奈の家に、東京に住む宮澤が庭の草刈りに通ってくるようになる。生まれ育った町以外に思いを馳せるようになる日奈。
一方、海斗は、日奈への思いを断ち切れないまま、同僚の畑中との仲を深め、家族を支えるために町に縛りつけられていくが…。読むほどに打ちのめされる!忘れられない恋愛小説。

いやいや単なる恋愛小説ではない。
生きていると、もっとやるせないどうにもならないことに直面する。

「介護士になれば一生食べられる」
「…触られたって減るもんじゃないし。こんなふうに、おかたい会議開いて、対策は、なんて言うけど、エロじじいの手癖が直ったことなんてないんですよ。」と言い放つシングルマザーの畑中さん。
男が近づきすぎるとすぐに逃げたくなって、ほんとうに姿をくらます。
小説には4人の男女が登場するが彼女にいちばん共感するし好きだわ。

手のひらを広げている死んでいた海斗の父親。
夜勤では、入居の老人たちの手の暖かさを確認して生きていることを実感する。

主人公の日奈は、恋人と別れて富士山の見える祖父と暮らした家に帰って来る。そして思う。

私だけじゃなくて、誰でも、自分のことをよるべないと思う夜があるんじゃない。(中略)
誰かといっしょにいたって、よるべない夜がまた来るんじゃないか。それでも。

日奈さん、その通りです。私もよるべないと思う夜がいつも来ます。「よるべない」ねえ。
自分が布団の中で抱く感情はその言葉で表現できるのかとしみじみしたわ。

彼の手のひらの重さと温かさを感じた。その手がいつか冷たくかたくなることも知っている。
「永遠じゃないから愛おしい」と素直に思えてよかった。

こんな結末で読後感は爽やか。

 

掏摸

東京を仕事場にする天才スリ師。
ある日、彼は「最悪」の男と再会する。男の名は木崎——かつて一度だけ、仕事をともにした闇社会に生きる男。
「これから三つの仕事をこなせ。失敗すれば、お前が死ぬ。逃げれば、あの子供が死ぬ……」
運命とはなにか。他人の人生を支配するとはどういうことなのか。
そして、社会から外れた人々の想い、その切なる祈りとは——。

全編暗くて救いようがない物語だけれど、その底にわずかな温かみを感じて惹きこまれてしまった。
結末ははっきり描写していないので謎だけれど、主人公に光が射すとようにと願ったわ。

 


三十五になるさなえは、幼い息子の希敏をつれてこの海辺の小さな集落に戻ってきた。
希敏の父、カナダ人のフレデリックは希敏が一歳になる頃、美しい顔立ちだけを息子に残し、
母子の前から姿を消してしまったのだ。何かのスイッチが入ると引きちぎられたミミズのようにのたうちまわり
大騒ぎする息子を持て余しながら、さなえが懐かしく思い出したのは、九年前の「みっちゃん姉」の言葉だった──。

九年の時を経て重なり合う二人の女性の思い。痛みと優しさに満ちた〈母と子〉の物語。

九年前、さなえと地方の町のおばちゃんたちが団体でカナダ旅行に行く。
混雑した地下鉄の中ではぐれないようにと彼女たちはしっかりと手をつなぐ。
が駅を降りた時には二人とはぐれてしまって。責任者の青年たちが探しに行っている間に
みっちゃん姉が見知らぬ教会に入って地元の人を真似て祈りをささげている。とても印象的な場面。
その九年前の出来事と今が交錯し合って物語は進んでいく。

複雑な文章だけれど私でも理解できるので難解ではない。
でもでも小野さん、ごめん、この1冊で勘弁して。

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手練れなおふたり 浅田次郎『椿山課長の七日間』宮部みゆき『あやかし草紙』

2018-09-09 09:19:15 | 

  浅田次郎さん『椿山課長の七日間』 2002年著

大手デパート勤務働き盛りの46歳で突然死した椿山和昭は、家族に別れを告げるために、美女の肉体を借りて七日間だけ“現世”に舞い戻った!親子の絆、捧げ尽くす無償の愛、人と人との縁など、「死後の世界」を涙と笑いで描いて、朝日新聞夕刊連載中から大反響を呼んだ感動巨編。

んんんーん、胸にジーンとくるものもありほろ苦くもあり 、なんということなくニヤニヤもして。
ユーモアとペーソスに溢れた作品で手練れな作家さんだなと。
つるつるつるつる喉越しよく、あまりに喉越しがよくて引っかかるものがないので、ちょっとつまらなかったりして。
何とも贅沢な話。

そして『一路』でも感じたけれど、主人公よりも周りの人達の方が時に生き生きと描かれているいて。
混乱するやら面白いやら。
主人公の椿山課長よりそれ以外の人物、
例えば一緒に姿を変えて現世へ「逆送」を願い出たヤクザの武田や実の両親を探し出すことを希望していた少年の雄一クン。
椿山の同僚の知子、父親の昭三、息子の陽介クンなどがとても魅力的なのよ。
中でも同僚の知子さんが気に入ったわ、「けっこうつらかったでしょ」なんて声をかけてあげたりしたくなる。

私、椿山課長の容姿が作者の浅田さんをイメージしてしまったことは内緒。

 

 『あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続』宮部みゆき

固く封じ込めたはずのわだかまりが、どこまでも追いかけてくる。一歩を踏みだすために、
人は胸につかえる秘事を吐き出し心の重荷をそっと下ろす。「語ってしまえば、消えますよ」

江戸は神田の筋違御門先にある袋物屋の三島屋で、風変わりな百物語を続けるおちか。
塩断ちが元凶で行き逢い神を呼び込んでしまい、家族が次々と不幸に見舞われる「開けずの間」。
亡者を起こすという“もんも声”を持った女中が、
大名家のもの言わぬ姫の付き人になってその理由を突き止める「だんまり姫」。
屋敷の奥に封じられた面の監視役として雇われた女中の告白「面の家」。
百両という破格で写本を請け負った男の数奇な運命が語られる表題作に、
三島屋の長男・伊一郎が幼い頃に遭遇した椿事「金目の猫」を加えた選りぬき珠玉の全五篇。
人の弱さ苦しさに寄り添い、心の澱を浄め流す極上の物語、シリーズ第一期完結篇!

今回は5つのお話。
中でもどきどきしたのは第4話「あやかし草紙」
これを最後に、聞き手がおちかから三島屋の次男坊富次郎へと変わっていくのよ。
おちかは百両という価格で写本を請け負った貸本屋の若旦那勘一に嫁ぐことに。
自分の寿命を知った勘一のなんとも穏やかな顔に心惹かれておちかの方から「嫁にしてほしい」と。
請け負った者は百両という大金と引き換えに自分の命の終わりを知ることになるというの。
はたして、おちかは勘一から寿命を知らされているのか。
それは3年後なのか10年後なのか。
何とも気になる結末でして。

それにしても宮部さん、よくもこう次から次へと奇怪な話が浮かんでくるものね。
ほんと、百の話を紡ぎ出していくかもしれないわ。
私、百の話が終わるときまで生きているかしら。

インタビューに答える宮部さんの言葉(抜粋)

百物語の聞き手が交替して、次巻からは富次郎とみじろうタームに入ります。
富次郎は三島屋の次男坊で、将来を決めかねているモラトリアム青年。
そんな青年が聞き手になることで、進むべき道を見つけていくという展開になる予定です。
先日シリーズ五冊をあらためてふり返って、あら、意外とバラエティ豊かじゃないと、再発見したんですよ(笑)。
まさか九九話書くことになるとは夢にも思っていませんでしたけど、
なんとか古希を迎えるまでに到達できたらいいなと思っています。
今後もゆるゆると書き継いでいくので、気長にお付き合いください。

そして『三島屋変調百物語』シリーズは表紙絵も挿絵も全部違う画家。
その中で私はこの「伍之続」担当の原田維夫さんの挿絵がいちばん気に入った。
版画なのだけれど、もうぴったり。挿絵を見ているだけで話の怖さが迫ってくるの。
宮部さんも、原田さんの版画を使用させていただくのが長年の夢だったとおっしゃっているしね。 

 本の挿絵は白黒です。

よろしかったらどうぞ。語りは宮部さんご本人です。

『あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続』PV こちら

宮部みゆきが朗読する『あやかし草紙 序』 こちら

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オシロイバナは夕方開く

2018-09-05 08:49:10 | 

それにしても昨日の台風、雨風凄し、でして。
ミモザが強風にあおられて鏡獅子の毛振りのようだったわ。
網戸はひとりでに移動する始末。いやはや。
それにしてもテレビニュースの映像で見る被害の大きいこと、ほんとにいらないことする。
今は青空も見え、文字通りの台風一過。

一昨日の夕方。
そうだ*オシロイバナは花開いているかなと近所へ。
夕方開くはずよね、ちと期待外れ。4時半過ぎていたのになあと首かしげるも盛りを過ぎていたのかしらね。

まだ時間が早いです、とも 私たちこれから種作りに励みます、とも

こんなだからなあ

黒々とした立派な種も見えるわ

かろうじて残っている花をアップ

赤い花だって、夕日を浴びているのに

せめても美しい花を。

*オシロイバナ 庭に植えようとは思わないけれど、道ばたに咲いているとやっぱり懐かしいわね。

コメント (2)
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うつけか はたまた名君か 『一路』

2018-08-24 08:52:32 | 

浅田次郎さんの小説。初めて読んだ。
きっかけは、BSNHKドラマ「一路」にはまったことから。
出演者が知らない役者さんばかりだから、調べたら2016年5月に放映されていたのね。

原作者が浅田次郎さんと知る。
いやあこれが胸ワクワクもの、ごめん浅田さん、食わず嫌いでした。
というのもずっとずっと以前、エッセイ『ま、いっか。』を読んで、「いやだわ、これは、ま、いっかじゃない」と
浅田さん嫌いになったのよ。いやいや浅はかでした、申し訳ありません、これからも読ませていただきますと。
原作はドラマ以上、はるかに面白い。どんどんと読み進めることができました。はい。 

  

父の不慮の死により家督を相続、交代寄合蒔坂家の御供頭として江戸への参勤を差配することになった小野寺一路、十九歳。
二百年以上前に記された家伝の「行軍録」を唯一の手がかりに、古式に則った行列を仕立て、いざ江戸見参の道中へ。

お役目を果たせなければ家禄召し上げという身で、一所懸命におのれの本分を全うしようとする一路。
その前途に、真冬の中山道の難所が立ち塞がる。さらに行列の内部では、ひそかに御家乗っ取りの企みが・・・
 

石高はそれ以下の旗本なのに、そんじょそこらの大名よりエライ。
大名と同じように、領地を持って陣屋を構え、参勤交代も義務付けられていて、これがたいへんなのよ。

物語は、若干19歳の御供頭 小野寺一路が、
「参勤交代は行軍だ」とツアコンよろしく真冬の中山道を江戸へ江戸へと行列を指揮していく。
と主人公は一路なのだろうけれど、私は西美濃田名部郡を領分とする7500石の旗本、御殿様の
蒔坂左京大夫(まいさか さきょうのだいぶ)様がたいそう好きになって。魅力的だわ。

芝居小屋の裏木戸で贔屓の出待ちをし、町方に捕まったという御殿様。
松の廊下で飛び六法を踏み、「当分乃間登城差控」となった馬鹿殿様。
三百諸侯中、瓦版の種になる御殿様はほかにおらぬし、そのうえ版元に文句もつけぬというのだから、
正真正銘のうつけにちがいなかった。

てな具合で、世間も家来衆もうつけか?それとも?と戸惑う始末。

他にも参勤交代の行列で歩んでいる中、そうもよおしてきて我慢しきれず、
なにしろご気性真っ直ぐなお方なれば、出すものもまっすぐ一直線。
道中の御殿様のトイレ事情は大変で、家来に穴を掘らせ周囲に幕を張り巡らせ、おまけに袴その他の着物の
脱ぎ着も家来の手を煩わせる。だから本陣できちんと済ませるのに、その時は急なもよおしだったのね。
それではあまりに気の毒とばかりに、御殿様は得意の早足を武器に駆け出すのよ。
行列をはるか後方に置き去りにして、ようやくどこかの役人小屋にたどり着いてやれ嬉しやと厠へ。
あちゃあ、そこは悲惨な状況、説明するもあまりの状況。ぼっとん便所で育った私には想像できる。
おまけに、寒さで何は凍りついて盛り上がっているんですって。

読みながらもうおかしくておかしくて。
こんな具合に全編、滑稽味おかし味にあふれていて。
そして、ときにほろっときたり泣けて来たり、そうよねそうそうと共感したり。
その心の機微が、映像となって目の前に浮かんでくるんだから浅田さんの筆力って凄いんだなと。

登場人物皆が「○○だから、かくあらねばならぬ」という縛りにとらわれしゃちこばった中に、
ん?待てよと己を振り返ったり、あいつはああ装っているけれどひょっとして?
なんて、実にひとりの人間の多面的な面を飄々と描いていて、浅田さん、参りましたと頭垂れるわけ。

たとえば、御殿様以外にも、
正義と忠義の狭間に揺れ続いてきた[伊東喜惣次]
おつむの足らない武辺者とされている[佐久間 勘十郎]
人間には隙がなくてはならぬ。謹厳居士の綽名など、決して褒められたものではないと考え直した[松平豊前守]
人はみな、貧富貴賤にかかわらず、つらい道中を行く旅人にござりますれば。
さだめという重き荷を負うた、おのおのが等しき旅人にござりますればー[乙姫様と鶴橋]
などなどが物語を彩る。

 

そして、ようよう御殿様の行列は、一路の死に物狂いの活躍もあって無事に江戸にたどり着く。
で、なぜか上様(将軍家茂ね)が一介の旗本の御殿様を呼びつけるの、そんなことってあるかしらなんてことはおいて。
御庭番から
「上様のご推察通り、馬鹿でもうつけでもござりませぬ。
蒔坂左京大夫は紛うかたなく、世に言う賢者名にたがいなしと拝察つかまつりました」と聞いていたからね。
そこで御殿様はありがたくも、
『一万石に加増のうえ、大名に列す。』
のお言葉をいただくわけよ。ははあーと、嬉しありがたしと頭畳にこすり付けて受け取ると思いきや。
今の7,500石のままでいいとお断りになる。なにゆえと迫る上様にそのわけを、
理屈で解き情で訴え領地領民を守る殿さまとしての覚悟で迫って。
上様に「僭越であった」と言わしめる。いやあ、お見事。

食わず嫌いはもったいない。「椿課長の七日間」を借りてきた、はたして。

こちらを参考までにどうぞ。 より興味が増します。

https://www.chuko.co.jp/special/ichiro/arasuji.html

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いっとき暑さを忘れる2冊 『盤上の向日葵』 『目線』

2018-08-08 13:37:52 | 


「慈雨」「孤狼の血」に続いて柚月裕子さん著3冊目『盤上の向日葵』読了。



ちょうど暑さ真っ只中に引っくり返って読み、しばし暑さ忘れて先が気になって気になっての面白さ。
事件の真相を知りたいというドキドキ感とともに、展開される人間模様が何とも複雑な様相を帯びていて
がっちり心をつかんで引き離さないからね。

平成六年、山形県天童市。注目の若手棋士同士による対局の会場に二人の刑事がやってくる。理由は何か。

約四か月前、埼玉県の山中で身元不明の白骨死体が発見された。
一緒に埋められていたのは名匠作の伝説の将棋駒。かつて棋士を目指していた佐野巡査は、
県警捜査一課のベテラン刑事、石破と組んで駒の持ち主をつきとめるべく、地べたを這うような捜査を進める。

同時に進行するのは昭和四十六年から始まる一人の少年、桂介の物語だ。長野県諏訪市に暮らす彼は幼いうちに母を亡くし、父親からは虐待を受けて育った。彼を気にかけていた元教師がその人並みならぬ将棋の才能に気づき、東京へ出てプロを目指すよう助言するが、桂介は父親の支配から逃れられない――。

実業界の寵児で天才棋士――。 男は果たして殺人犯なのか! ?

ちなみに
『盤上の向日葵』 は2018年の本屋大賞2位。『キラキラ共和国』は10位。

「孤狼の血」でも終盤で感じた、ちょっと強引じゃないの、と思う展開が気になる。
この『盤上の向日葵』でも主人公の生い立ちに感じられること、だってね、唐突に主人公の父が告白しているのよ。
物語全体に流れる、なんとなくどこかで読んだことがあるな、と思わせる雰囲気が漂うこともちょっと。
これについては作者自身がインタビューで、

「私の中にあったテーマは「将棋界を舞台にした『砂の器』」なんです。松本清張先生には及びもつかないですが、親子の葛藤と人間の業を描いた『砂の器』の世界観を投影したかったんです」と語っている

でも人間をえがくその筆力は、いつかきっと本屋大賞も直木賞も受賞されるんじゃないかと期待しているわけ。

もう1冊。 天野節子さん『目線』

閑静な高級住宅街に佇む堂島邸には、主人である新之助の誕生祝いのため、
家族や友人ら11人が集っていた。だが、「めでたい発表がある」と言っていた新之助は、
自室のベランダから飛び降り、亡くなってしまう。その死は、自殺として処理されたが、飛び降りる直前に掛かってきた電話の内容は誰にも分からなかった。そして、初七日。哀しみに沈む堂島邸で、新たな犠牲者が出る。
謎に包まれた事件の真相を究明するべく、3人の刑事が独自の捜査を開始した。

「氷の華」と「午後二時の証言者たち」では早くから犯人が分かり、刑事との心理戦対決に引きつけられたけれど。
天野さん2作目の『目線』は犯人探し。もちろん内部の人の犯行。

読み終わって犯人が判明してから気付くたくさんの伏線、私の推理は見事大外れ。
タイトル「目線」の意味がなんとも悲しい。

この1冊も暑さ忘れて読み進めることができて、夏はやっぱり推理小説だなと。

こんなことを書いている今、台風の影響か涼しくて長そでTシャツ着用。あらま、の気分。

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「ツバキ文具店」 その後 『キラキラ共和国』

2018-07-18 08:55:44 | 

冒頭からいきなり。
ツバキ文具店の主、鳩子さんはミツローさんと結婚して守景鳩子さんになり、QPちゃんのお母さんになりました。
ということで。

「ツバキ文具店」は、今日も大繁盛です。
バーバラ夫人も、QPちゃんも、守景さんも、みんな元気です。
みなさんのご来店をお待ちいたしております。――店主・鳩子

亡くなった夫からの詫び状、川端康成からの葉書き、
大切な人への最後の手紙……。
伝えたい思い、聞きたかった言葉、
「ツバキ文具店」が承ります。

あっそうそう、男爵もパンティーさんと結婚しておまけに男の子も誕生したのです。
さらに異様な風体の鳩子さんのお母さんまで登場してちょっとびっくりです。

鳩子さん一家の話が中心ですから、代書のエピソードは少なくしかも代書した人のその後が書かれていませんから
これは続編があるな、と勝手に期待しています。
鳩子さんは代書はしてきましたが、自身で手紙を書くことは初めて。
ミツローさんと先代と文通していた静子さんへの2通の手紙、打たれます。
そしてミツローさんの前妻美雪さんへの手紙。その気持ち分からなくもないけれどちょっと・・・

前作と同じように、鎌倉の自然や風景、おいしい料理のお店屋さん、ご近所さんとの日常が何気なく紡ぎだされていて。
小川さんの文体がまたきめ細やかで優しくて。読後、温かいものがひたひたと胸の内を満たしてくれる感じがします。

私も行ったことがある本作に出てきたお寺など。

 妙本寺

 報国寺

 本覚寺

 覚園寺

 獅子舞

寿福寺も行ったことがあるのになあ、とか、獅子舞はもっといい画像があったはずなのにとか、ぶつぶつ。

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夏はサスペンス小説で

2018-07-13 08:46:36 | 

 昨夕 18:08

連日の暑さ。
まだ7月の半ばというのにもう30度越えの毎日なんて狂気の沙汰だわ。
今日からの3連休は暑さが半端じゃないと気象予報士は警告している。
そんなぼーっとした日にはサスペンス小説がいちばん。

どの作品もミステリー、本格的な謎解きとかではないけれど。

 『氷の華』 天野節子

専業主婦の恭子は、夫の子供を身篭ったという不倫相手を毒殺する。
だが、何日過ぎても被害者が妊娠していたという事実は報道されない。
殺したのは本当に夫の愛人だったのか。
嵌められたのではないかと疑心暗鬼になる恭子は、自らが殺めた女の正体を探り始める。
そして、彼女を執拗に追うベテラン刑事・戸田との壮絶な闘いが始まる。長編ミステリ。

物語としてはどこかなんとなく破たんがあるような気がするのだけれど、
それを上回って犯人と追い詰めていく刑事の心理戦の様がドキドキで。
殺害に至る陰謀、複線、女性心理、執拗な刑事の推理と追及が息もつかせぬ展開で、
はらはらしながらこの先どうなっていくのかととても面白かった。一気読み。
犯人と刑事の攻防がちょっとTVドラマ刑事コロンボを思いだしたわ。

それにしても、作者の天野節子さんは60歳から小説を書きはじめ本作がデビュー作品、
しかも自費出版だったとは、すごいエネルギー、パワーの持ち主だ。

『氷の華』が面白かったので続いての天野さん2作目は、
 『午後2時の証言者たち』 天野節子

誰が少女を殺したのか。
数行の三面記事に隠された、証言者たちの身勝手な事情。
被疑者の高慢、医師の正義、看護師の自負、目撃者の憤怒、弁護士の狡猾、遺族の懺悔、刑事の執念。

三月五日、午後二時ごろ、みどり市旭ヶ丘一丁目の横断歩道で、
近くに住む八歳の女児が走ってきた乗用車にはねられ、病院へ搬送されたがまもなく死亡した。
乗用車を運転していた二十六歳の男性に詳しい事情を聞いている。
たった数行の三面記事から始まる、慟哭のミステリー。

こちらも犯人は早い段階で想像されるが、やはり追う者追われる者の心理戦の攻防が面白くて。

 『消えた人達』 北原亜以子

懐かしい北原さんの作品。
ちょっと落ち込んでいたりふさぎ込んだりしていたとき、北原さんが生きていてくれて『慶次郎縁側日記』
の続きを書いていてくれたらな、読んでしみじみしたいなと何度思ったことか。
2013年死去されているからそれもかなわない。
そんな中見つけた未読の1冊。

1995年の『昨日の恋 爽太捕物帖』シリーズの2作目が1999年に発刊の本書。 

芝露月町の鰻屋「十三川」の入聟・爽太は、同心・朝田主馬に十手を預けられ六年。
ある日、幼馴染み弥惣吉の女房おせんが、「探さないで」と置手紙を残し忽然と消える。
健気で評判の女房に、何があったのか。中山道へ行方を追う爽太達が出合ったものは…。
探索行は、来し方をふりかえる旅でもあった。
江戸下町の人々の哀歓を描き定評のある著者が、あふれる情感でつづる、久々の長編。  

「消えた」のは人だけではない。
「あいつはそういうやつじゃない」いや「あいつはそういうやつだ」
そう思っていたそういうやつも年月とともに消えていくのか。
それとも、もともと持っていたものがあぶり出てきただけなのか。

北原作品としてはちょっと物足りないけれど、でもでもやっぱり北原さん、しみじみした。

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