
曇り、26度、88%
香港の古い建物は,中国様式に西洋様式がアクセントになった様な物があります。建物自体は中華風なのに窓の切り方、ベランダの様子が西洋らしいもの。随分そんな建物を愉しんで見てきました。そうした低層の古い建物の保存が取沙汰されるようになったのは,意外にもごく最近の事です。法制化されていなかったのか,ある古いマンションなどは屋根が半分以上取り壊された段階で、保存建造物に指定されたケースもあります。そうかと思えば,煉瓦作りの古い教会,保存のための工事が始まりました。さあ,出来上がったのは,煉瓦作りではない何やら新しい教会です。私など保存といえば修復を考えますが、香港では「重建」といったこうした保存もあるようです。
一昨日の「SOUTH CHINA MORNING POST」に香港島ワンチャイにある質屋の建物が取り壊しになると書かれています。しかも,この建物、保存建造物に指定されているというのです。香港の質屋は,裏通りにひっそりではなく表通りにドンと店を構えています。新聞に書かれているその質屋は、2階建てトラムもバスも通るメインストリート沿いに建っています。このひとブロック先の角地にも質屋があるのですが,そちらの建物はあまり見るべき物がありません。
質屋は「押」と香港では表します。取り壊しが決まった質屋さんの屋号は,「徳同」。4階建てのこの建物今ではビルの合間に埋もれています。質屋はどこも,赤いコウモリとダブルハッピネスの看板を掲げています。
一昨日の午后,トンローワンに買い物に出るついでに,バスを2つ手前で降りて建物を見に行きました。あら,もう既に取り壊しが始まっています。1階部分は質屋で,その上は家族の住宅だったそうです。一階部分の道路際には柱が立てられ,その下は人が通れるようにアーケード状になっています。そして何よりこの建物,角の部分が特徴的です。角が「つの」を立てずにカーブになっています。香港に来た当初は,この角がカーブになっている建物があちらこちらに見られました。カーブの部分には円曲されたガラス窓です。天井の高いこうした唐楼は,壁一面窓を取る事で陽の光を一日に受ける事が出来るはずです。窓枠も昔のままの鉄枠です。
香港市政局は,保存建造物を買い上げるのではなく指定するだけで,実際の土地の権限は持ち主にあるそうです。つまりここでは質屋の「徳同」さん。新聞に因れば,取り壊しの跡地に23階の商業ビルを建てるのだそうです。香港島北のオフィススペースは世界でも4番目に単位面積当たりの家賃がが高いのだとか,まして,ビクトリア湾が見えるとその値段はまだ上がるのだそうです。「徳同」さん一家は,建物を残すより,家賃収入を選んだわけです。
ワンチャイには、保存建造物に指定され、今ではレストランとして機能している別の質屋の建物があります。建物自体は残りましたが,レストランや路面のインテリアショップは,どうもしっくりときません。建物を残す事,ただ残せばいいものでもないように考えます。
昨日,この写真を見ながら,急に思い出したことがありました。右横のバニアンの木の下に,昔はリヤカーにバナナを乗せたバナナ売りがいつもいたのです。叩き売りしないでも,いつも人が一杯のバナナ売りでした。バナナ売りの姿が見えなくなって,10年は過ぎたかもしれません。
この「徳同」さんの前はよく通ります。ある日来てみると,すっかり建物が無くなっていたというのではなく、壊されて行く姿を横目で見なくてはなりません。路面のアーケード状のところを、夏歩く時は,ひんやりと人心地付いた事を思い出します。日に日に変化する香港の町です。
戻る事はできませんものね。彼の姿を観ながら、そう感じました。本帰国以来の香港に、彼の複雑な気持ちを感じました
。
トンロー湾のウィンザーにレンクロがあって、ジェダガーデンがあった頃が懐かしい!
トンローはお金をかけて上手く改装すれば、よい住まいになると思います。
エレベーターがないのがちよっと。
見にいかなくては。